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音楽劇 浅草キッドの感想(一幕)

浅草キッドの限界オタクが興奮垂れ流してる状態なのでとてもうるさく、読みにくいと思います。
(あまりにも文章が散らかってて書き直しました!それでも散らかってそうだけど😂)
俳優のオタクが書いてるので内容にかなり偏りがあります。


M1 途中下車のテーマ

歌から入るのが、タケが働いてたジャズバーでショーを観てるようで気分が高まって良い〜!音楽と共に幕が開いて、客席が拍手で迎えるこの感じ好き。
新宿歌子(あめくみちこさん)の拳がきいたハスキーな歌声がめちゃくちゃかっこいい。作中の歌や曲はどれも本当に好きで何十回も聴きたい……。

なのに舞台の配信も劇中音源の販売も無いのが心底勿体ない。
歌詞すらパンフレットに載ってる4曲しか確認できないんだよ……。
初日であっという間に浅草キッドの限界オタクになった私は、パンフに載ってない曲の歌詞も必死で覚え、大好きなシーンの台詞や動作も含めてメモアプリに書き出してたんだけど、耳コピの限界で曲は2曲ほど書ききれなくて無念すぎた。誰かメモしてる人いませんか……。
いつか歌詞だけでも公開されないかな、いや本当は映像が欲しいんですけど!!!

『M2 デモのテーマ』の歌詞も耳慣れない単語のオンパレードで興味深いし、学生運動のくだりで出た安保、オルグってなんだろう……って観劇後に調べてその時の時代背景を知れておお、となったりしてた。
普段だったら割とスルーしがちな事も浅草キッドに関しては調べたりして、観てない間もこの世界観に浸りたくて本当に公演期間中は浅草キッドに囚われてた。
公演期間中は何してても劇中の音楽がずーーっと頭の中で鳴ってた。

タケたちがいるジャズ喫茶にはヒッピー風の女性がいたり、哲学で論議してる集団がいたり。
その時代を生きてない私でも、この光景だけでこういう時代だったのかーって、時代背景がちょっと想像できる感じ。

初登場の時からタケが、頻繁に鼻を雑な感じで触ってて。 タケの癖なのかなって思いながら見ると本当にこの世界に生きてる人のように感じて良かった。
林遣都さんが以前別作品の時のインタビューで、役に入るためにキャラクターの癖をひとつ考えて演技に取り入れるって話をしてて、タケの場合は鼻を触ることなのかなと思ったり。(ビートたけしさんご本人の仕草なのかもしれないけど)
こういう役を生きたものにしようとする姿が本当にすごい……尊敬します。

この頃のタケが大学に通いながら色んなところでバイトしたり、ジャズ喫茶にいた哲学について議論する集団とも関わりがある風だったり、学生運動に興味を持ってそこの支部長の延原と繋いでもらったり、何者かになりたいけど、どうすればいいのかわからず彷徨ってるのがわかる。

M3 知らない電車

イントロが流れる時、タケが真ん中で立ってて背後、タケの真上に「浅草キッド」ってタイトルが映し出されるのを観た瞬間鳥肌がたった……!!
見るたびに浅草キッド始まったーーっ!ってなる。 観劇の後半はこのシーンだけでうるっときてたくらい、大好きな演出。

そしてタケの声が透き通ってて繊細で、ちょっとぶっきらぼうな雰囲気も感じて、これはステージで聴くのが至高だなと。

新宿歌子の途中下車のテーマには力強さもあるけど、知らない電車はひとりぼっちで迷子になってるみたいな心細さを感じたり。
林遣都さんの語尾の音の揺らぎ方が切なくて胸に響いて、聴いててすごく幸せだった。

あとアンサンブルの女性の振り付けと衣装のレトロな感じのコートが可愛い〜。
ここに限らず女性陣の衣装どれも可愛くて好き。

「人生途中下車〜」って歌った後の「もっと途中下車に相応しい町はないもんかね」っていうタケの台詞がめちゃくちゃ印象的なんだよなあ。


M4 浅草のテーマ

タケ「もっと途中下車に相応しい町はないもんかね」
高山「あるよぅ!!!」
タケ「へっ?」

しっとりした空気を吹っ飛ばす勢いの高山(松下優也さん)の「あるよぅ!!!」の言い方がどんどん進化していくのも面白くて楽しみだった。
M4は浅草出身の有名人やエンタメ、お店を紹介する歌で。
高山と亜矢さん(紺野まひるさん)のステージでの動きと声量と歌唱力にはただただ圧倒される。
衣装も当時っぽい?スカーフとかフリルとかジャケットが可愛い、観ても聴いても楽しい。アルプス一万尺のフリも可愛い。
この時、兼子、井上、マーキー役の役者さんが役衣装にジャケット羽織ってシルクハット被って3人並んでダンサーとして出てくる所が可愛くて大好きすぎてこの3人の姿をついつい追いまくってた。

屈指の耳コピ難儀ソングだったんだけど頑張って聴いてると原作に出てきた「ブロンディ」ってお店の名前が出てきたりして面白い。(多分言ってた。自信無)

最後の歌詞「何でもあるよ浅草」「何でもあったよ浅草」って過去形になった時、楽しそうなダンサー達が一変して無気力だったり気だるげに(特にマーキー役の人は苦しそうというか、目を見開いて茫然自失、みたいな様子で?)退場していく。
最初はただ切ないなーくらいしか思ってなかったけど、何度目かの観劇で、ニ幕で高山が芸人志望の新人に言った「浅草に酔うなよ。醒めた時つらいから」っていう言葉と繋がるのかもって思って。
「何でもあったよ」の時に無気力になった姿は浅草の夢とか酔いから醒めた状態なのかと思うと、めちゃくちゃ楽しい歌なのに聞き終わった後切なくて、でもそれが良い〜〜〜😭👏

タケが浅草の町に降り立った時に、通りを歩いてる2人の乞食。きよし(竹口龍茶さん)じゃなくて100円せびる方、この乞食にラストで泣かされる事になるなんてこの時は思ってなかった……!!
とにかく食い扶持を稼がないといけないタケが、

「弁当屋のバイトになるのが子供の頃からの夢で」
「ストリップ小屋のエレベーター係になるのが子供の頃からの夢で」

って適当言うのがめっちゃ面白かったし、ここでもタケの目的のないフラフラした生き方がめっちゃ出てるなあと。



M5 エレベーターボーイ

高山と亜矢さんの歌唱力おばけコンビ再び。
高山(松下優也さん)の顔とフリがすごすぎて、タケの仏頂面との対比がさらに面白い。
ノリノリの高山に戸惑うタケが肩をトン、と押されてターンした勢いで肩にかけられた法被を落とすあの動きが好き。
ここではダンスも歌も参加しないタケだけど、音楽に合わせてリズムよく箒と塵取りを持たされたり、パッと前を向くタイミングがリズミカルだったりしてて楽しい。
動きがコミカルで、ブスッとしてるのにチャーミング。

曲のラスト、高山と亜矢さん2人の歌唱力の擬人化みたいなシャウトにタケが挟まれた時。東京公演までは多分戸惑ってるだけだったのが、大阪公演の途中から(自分もシャウトで応戦しようとしたけど、出来ない)みたいなフリに変わってる時があって面白かった〜。

タケがまだエレベーター係の仕事するのに全然納得いってないのに、エレベーターに乗せられて支配人に「4階だからな!」って念押されて不貞腐れたように

「上へ参りまーす」

ってボタン押して客を運ぶのが可愛い😂



エレベーター係になってから一ヶ月後の一六酒場。
タケと高山と井上のシーン。
この一カ月の間にもう作家志望の井上(森永悠希さん)もフランス座に入ってて。

高山が浅草、フランス座の芸人について話す時は鬱々してるけど、師匠の話をする時は楽しそうで、師匠を尊敬してるのが伝わってくるのがいい〜。

あと作中に大学の話が頻繁に出てきたりして、当時は大卒かどうかってかなり強いステータスだったのかなあと。
フランス座の人間からしたら中退だろうがそこまで行くような人間は一緒っていう気持ちも、タケが必ず「中退です」って訂正する気持ちも両方わかって面白い。

タケが底の底を味わいたい、だから芸人になりたいってここで言い出したのは何でだったんだろう……。私は原作は「浅草キッド」しか読んでないので、他の方の意見が聞きたい。

M6 深見千三郎のテーマ

高山に説明されながら満を持して登場する師匠。

深見千三郎の初登場時のき、来たー!!!感すごい。
説得力のありすぎるカリスマ感。
全員の目線が奪われるやつ。
劇中師匠第一声になる、

高山・アンサンブル「よっ師匠!」
師匠「うるせえバカヤロー」

この台詞を聞いた時、これがビートたけしの師匠……!って、ほとんど知らない人物なのに一気に納得させられた印象がすごく強い。
大阪公演の途中から、舞台装置でせり上がって出てくる師匠を拍手を迎えるようになってて、確かにこれは拍手で迎えたい!って感動した記憶。
名古屋は1階客席の扉から出てきて、歌いながら客席の通路を歩いてるんだけどステージに上がるまでずっと拍手が鳴り止まなかった。すごい、楽しい〜〜〜!

歌詞にあるように仕立ては上野、ハットは蔵前町、東墨田の靴(多分)……って身につけるもの全て浅草近辺で仕立てられてて本当に浅草の深見千三郎なんだなーってなる歌詞がいい。
曲のラストの「いつでも浅草にいるぜ?」で女の子を侍らせてる師匠に、亜矢さんがちょっと機嫌損ねてぷいってなってるって複数回舞台をご一緒した人に教えてもらって、その後の公演で見て、亜矢さん可愛い!!って胸撃ち抜かれました。

歌声も毎回音源を聴いてるくらいの安心感があって、なんならミスしたとしても揺らがないんだなあと。

あるシーンで違う曲が流れる事があって、そこを歌うはずの山本耕史さんが瞬時に、

師匠「バンドが曲を間違えております。少々お待ちください」

で笑いをとってて。
少し間をあって、正しい曲が流れだすと

師匠「そうそうこれこれ〜!」

って言ってから歌に戻るまでが楽しくてカッコ良すぎた。

大阪のアフタートークで山本耕史さんが「失敗はご馳走ですよ」って言ってたのが印象的で。 確かに観る時はちょっとしたトラブルも含めて楽しむよなあと思いながら聞いてたんだけど、山本耕史さんのトラブルに対する切り返しが素敵すぎて、『失敗はご馳走』のさらに上の極上の体験にしてくれてるなあと思いました。

M6 深見千三郎のテーマの前に高山から師匠の特徴について聞いてる時。
一ヶ月もエレベーター係やってるくせに深見師匠を知らないタケの周囲への無関心っぷりがわかるなあ。
高山曰く「エレベーターの中で下向いて本ばっか読んでるから」、タケが深見に気付くのが深見の靴の説明をされた時で、そこでようやく「あ〜!」ってなるのが細かくて面白い。


高山との会話からやけっぱちに芸人になる事を決めたタケが、フランス座のもぎり係の塚原さん(あめくさん)に、弟子入りの口利きをしてもらうシーン。

世話を焼いてくれる塚原さんや亜矢さんから身内みたいなあったかさを感じて、当時の義理人情に厚い町ってこういうのなのかなあと思ったり。

ここ、原作だと最初から芸人になろうと思って、深見師匠を訪ねて浅草に来たらしいんだけど。
舞台版のこの何の目的もなくふらっとやって来たような、無気力で投げやりでちょっとあぶなっかしい雰囲気に『まだ何者でもない北野武』を感じてこっちもいいなーと思った。

師匠に気に入られるために、塚原さんに

「愛嬌ある顔してるし!ほら!(笑って)」

って言われた時の口角を無理やり上げる、タケのぎこちない作り笑いも面白かった。
愛想は無い方かもしれないけど、私はタケが結構色んな人の言葉や行動を見てて、影響受けて真似したりするところにすごく愛嬌を感じる。

師匠が弟子入りを拒否した代わりに、暇つぶしにやってろとタップの手本を見せた後、客席から拍手が起きたら客席に向かって「ありがとうございました」って言ってエレベーターの扉が閉まって退場するのめちゃくちゃ面白かった。
この「ありがとうございました」の言い方のバリエーションが多くて、(今日はどんなありがとうが?)って思ってたら、無言でニヤッと笑うだけでエレベーターが閉まる公演があったりして、油断できない面白さだった。

師匠のお手本を見た後のタケの初タップも、どんどんドタバタ感がエスカレートして面白かった。
足大忙しなのに決めポーズは無表情なのがさらにウケる。
そして多分どこかの公演から? タップ後の師匠の「ありがとうございました」まで真似するようになってて。 だから師匠がニヤッてした日はタケもニヤッとするだけ、みたいな。
こんな所にも日替わり要素あってめちゃくちゃ楽しめた〜〜〜。

一度弟子入りを断られただけで「いいよもう」ってさっさと諦めようとしたタケに、塚原さんが師匠のコント見ろ!って強引に舞台袖に連れてってくれるのいい。

そしてタケが見る事になる、師匠と高山と兼子(今野浩喜さん)のコントが本当に面白い!
時代もあってかなり古いお笑いなのに無理なく笑えるのは演者さんが完璧にやってくれるからなのかなーと。
特に兼子の間がバツグンすぎて完全にツボ。 喋るだけで面白い。 観劇した中ではウケない日がないくらい鉄板だった。
高山の動きもどんどんエスカレートしていって、このありえない動きを誰も突っ込まない事がさらに面白かった。

このコントを見て、タケがのめり込み、どんどん舞台袖に近づいていくのがいい。
なのに終わってから塚原さんにどう!?って聞かれて、明らかにソワソワしてるのに、それを隠して

「まあ、面白かったです。……だからこそ、俺には、ねえ?」

ってあと一歩踏み出せない様子がもどかしい〜〜!

M7 なれないよ

師匠みたいにはなれないよっていうタケのソロ曲。
曲の雰囲気が好きだしタップも見応えがあって本当にすごい。知識が無さすぎてすごい、しか言えないのがもどかしい。
タン!って踵で大きい音を鳴らすのが、バンドが音を出すきっかけになってるのがかっこいい〜〜!ステージ全体を使って歌って踊ってタップしてくれるのがすごい見応えがあった。
ジャンプした時に踵同士を当てて音鳴らすのもかっこよすぎた。
(技の名前が一つもわからない)

あのコントを見てから、「あんな風にはなれない」って言いながらもひっそりタップの練習を始めたであろうタケ、めちゃくちゃ愛おしい。

(浅草キッドについて調べてた時、森永悠希さん演じる作家志望の井上さんの手記が出て来て、当時のたけしさんがフランス座の仕事の後、夜中にタップ練習してた事が書いてあってそれもめちゃくちゃ印象に残ってるんだよなーって言うのを思い出した)
以下井上さんの手記。


夜練を頑張ってるタケに、亜矢さんをはじめとする踊り子さんがいっぱいアドバイスしてくるのが可愛いしあったかい。
どんどんスピードアップしていくタップに、躓いて転ぶまでの足の動きがすごすぎて何が起きてるの!?って毎回感動した。
転んだ後の「俺にはダメだ、ダメな俺だ」って歌って、「クソッ!!」ってタップシューズで床を蹴っ飛ばして去っていくところもめちゃくちゃ好き!!



M8 深見千三郎の半生

カリスマ全開の師匠も、恋人で一緒に住んでる亜矢さんから貰った金で酒を飲む。
一幕からもうチラチラしてる浅草の陰の部分がつらい。

一六酒場の主人のニシンという言葉をきっかけに故郷の樺太を思い出す。 怒涛の師匠の半生。
全然違う曲調の短い曲がポンポン入ってくるのが見応えがあって楽しい。
特に師匠のお姉さんの美ち奴さんのセリフや歌声が聴き心地が良くて大好き。
ていうか師匠……、

15歳で樺太を飛び出す

浅草へ行き出稼ぎ中の姉を頼るが
自立を促され役者・片岡千恵蔵の付き人へ

千恵蔵に芸を仕込まれ売れっ子役者へ
深見千三郎の名前をもらう
(ここで本名、久保七十ニを捨てる)

戦時下のため、軍需工場への配属命令を出される
工場で機械に指を巻き込まれ左手指を4本失う

そのため浅草に戻るが
指の無い役者はどこも使ってもらえず

姉のアドバイスで自分で劇団を立ち上げ

東京空襲の影響で北上しながら芝居をする旅一座へ

終戦後、海を越えて海外でも公演

みんな売れっ子になり映画の世界へ
指の無い師匠だけがどこからも呼ばれず残される

浅草へ戻って来たところで
フランス座の支配人に拾われ
亜矢さんとも出会う

現在はフランス座の興行主になり
ストリップの合間にオリジナルコントをやる

っていうあまりにも濃い半生!!!これをおそらく十数分で表現する演出と役者陣、スタッフさんがすごい!!!
シーンが変わるごとに出てきていた樺太、浅草、軍需工場、一座の旗、北上する地図、南国の木が描かれたボードが、ラストでずらっと並ぶところ、師匠の生きてきた歴史が師匠を取り囲んでるのが圧巻だった。

初見では師匠の半生を、こんなにがっつりやるんだ!って思ったんだけど、この半生を知ってるからこそ、後々師匠の

師匠「ストリップの合間にやるセットもないコントなんて、俺のやってきた芝居じゃねえ」

がめちゃくちゃ重く響いてあーーいいなあと…。


タケの弟子入り志願(拒否)から数ヶ月後。
マーキー初登場のシーン。
芸人志望だけど方々で断られて来たマーキーがフランス座に流れ付き、

マーキー「誰でもいいので弟子にしてください!」

って頼み込む。

それに塚原さんが面倒見良いようで適当で(笑)
進行係として使いパシられて大荷物抱えて帰って来たタケに「タケ!この子が弟子入りしたいってさ」って言うのが面白いし、タケも「ちょうど良いや!」って速攻で進行係の仕事叩き込もうとするのも面白いし、弟子入りできた!って喜んでるマーキーが無邪気で可愛い。

タケがマーキーに説明する「踊り子さんのご機嫌とりと八つ当たりの当たり役」を体現してるのがおもろい。
途中から気づいたんだけど、踊り子さんの楽屋で、亜矢さんが若い踊り子さんと演目のテーマ曲を取り合ってバトルする時に、巾着袋をよそへ投げられて泣き崩れたりして、泣きながらタケに「タケー!取ってこいー!」って犬みたいに言ってるのめちゃくちゃ面白かったし、タケも走って取りに行くから毎回笑った。

原作では踊り子さんたちの事を「自分達の方がよほど暗い身の上で踊り子になった現状があるのに、感情豊かで明るさや義理人情を忘れてない」という風に書かれてて、このシーンで踊り子さん達の感情豊かな部分が垣間見えたようで楽しかった。

収拾つかない踊り子さんの楽屋のセットをタケ自ら押して舞台袖にはけさせるの面白いし、代わりに一六酒場のセットが出てきて、すでにそこにいる井上が「タケちゃんもそうだったでしょ!」で、酒場のシーンに移動する場面転換の仕方が好き。



フランス座に入ったマーキーが即タケに懐いてて可愛い。
ちょっと無神経な無遠慮さも隣テーブルへの空気読めない発言も井上は焦って止めてるけど、タケとマーキーはちょっと悪い顔で笑い合ってるのが好き。井上も好き。3人のバランスがすごくいい。

3人で飲んでたらうっかり延原と一六酒場で再開。
学生運動時代と比べて「内部からの改革!って大口叩いてたのに今や上司にペコペコしてる情け無い男」って馬鹿にしてたつもりが、反対にストリップ小屋で働いてる事を見下されてしまいに同情までされちゃうのがつらい。
さっきまで楽しそうだっただけに尚更。

浅草に来た時は投げやりな感じだったのに、フランス座の進行係の仕事はイキイキこなしてたり、井上やマーキーと飲んで騒いだりして、この生活にやりがいとか楽しさを感じ始めてたのかなあって。
それを全否定されるような延原のセリフが重い。
林遣都くんの台詞のない演技が大好きなんだけど、延原の言葉を黙って聞いてる時、ライトの具合で長い前髪が目元まで濃い影を作ってて、遣都くんの表情と相まってめちゃくちゃ良かった。
佇まいと表情から、苛立ちとか悲壮感を感じて、起伏の少ない表情なのに、伝わってくるの感情は雄弁なの何?
本当にすごい……。



ここにいると息が詰まると言って、フランス座を去った高山。
高山不在でピリピリする師匠に温い茶を出して、

タケ「熱いと危ないでしょ。ただでさえ師匠は指がないんだから」

って言える所からすでに、二幕でタケが客を毒付いて笑いを取るポテンシャルが出てて好き。
ここで師匠が、タケに高山の代役で舞台に上げようって思ったのも、こういうタケの度胸とかセンスを買ったのかな……とか。

踊り子さんが「タケちゃん、初舞台!」って言った時のタケ、井上、マーキーの関係性が大好き。
めちゃくちゃな化粧をして師匠に叱られるタケを井上とマーキーがニヤニヤしながら見てたり。
特に、

マーキー「お時間ですー」
井上「今日の客、重いです」
タケ「殺すぞメガネ!」


このタケを茶化す井上の台詞毎回笑う。
3人で軽口叩き合うの本当に可愛い〜〜。



コントで女装したタケが来てからのドタバタがもうずっと面白い。
兼子はやっぱり間が面白すぎるし。
舞台上の深見は山本耕史って苦手な事ないのでは?って思うくらいプロフェッショナルで、舞台でまたこの人のお芝居を観たい!って思った。
女装タケのポンコツコントめちゃくちゃも面白かった!見た事ない遣都くんを見られたような感じがした。

師匠に、こいつダメだって見切られて除け者にされてからの舞台で立ち尽くしてるのが面白いけど可哀想で。 でも師匠になりたいっていう感情が完全に開花する曲までの流れがめちゃくちゃいい!!!

M9 あんたになりたい

聞いてるとどんどん胸が熱くなってくる曲。
特にコントのワンピースを脱いでぶん投げた後「このままの俺じゃいられない」って歌詞があるのが好き。タケが殻を破って出てこようとしてる感じがしてたまらない。

あとアンサンブルが「かけられた魔法〜」って歌ってる時。
真正面を向いたタケの表情がどんどん綻んで、目がキラキラしていく移り変わりが本当に「目指すべきものがない!」って序盤に延原に言われてた時と比べて「目指すべき人を見つけた!」っていう道がぱーっと開かれていくような心の変化がめちゃくちゃ泣ける。
歌詞もとにかくいい。
パンフレットに載ってる限られた曲のひとつで、読んで脳内再生する度にじーんとくる、大好きなシーン。 

タケ「師匠 あんたになりたい!」

で、歌を締めくくるのがすごい熱くていいんだよーーー!!



散々だった初舞台の後、改めて師匠に弟子入り志願するタケ。
弟子入り志願は2度目だろって突っ込まれて1回目は嘘です!っていうところ正直すぎて面白い。
あの時は投げやりに芸人になりたいって言ってた?のが、今は本気で師匠に憧れて、師匠になりたい!っていうのがわかってすごい良いなって。
良いと好きしか言葉が出てこないけど、本っ当にずっと良いし好き……。
曲に行くまでの流れもやばくて、

師匠「何をしろって言ったから覚えてるか」
タケ「…………人間を演じろ!」
師匠「忘れてたな。弟子になりたいならそれくらいやってみせろ」
タケ「はい!」
師匠「そうすれば笑いはついてくる。なぜなら人間のする事は」

から歌い出しの

「すべて喜劇」

が鳥肌立つ〜〜。

M10 浅草エンターテイメント

師匠が歌う様子を、もう完全に尊敬の眼差しで師匠を見てるタケへの愛おしさが爆発しそう。

途中から「生きるのが〜」の歌詞をタケが師匠と一緒に歌い出した時、師匠がちょっとびっくりした顔で振り返った公演があって。
タケが歌い出すのを「それだよ!」っていう風に扇子で指して、そこから正面を向いてサビ。
師匠と弟子で歌うサビ。
2人が向いた方向が同じになった感じ。
こんなん泣く。

タップの応酬もみんなに囲まれて歓声を浴びながらまず師匠が踏んで、タケがなぞって、を交互に繰り返して最後はエレベーターの前で教わったつま先でタン!ってやる決めポーズを2人同時にするのが、エモいってこういう感情?っていう。

あと全公演が終わってから、YouTubeに上がってる映像を観て気付いたんだけど、ラスサビの「笑い飛ばせ」の歌詞を、マーキーがソロで「笑い飛ばせ〜」って復唱してて時間差で泣いた。
二幕で「笑い飛ばせる腕もない」って歌ってるマーキーがここを歌うの好きすぎて。

演者さんのほぼ全員(た、高山ー!)とタケと師匠で歌って踊って、歓声と拍手の中で幕が降りる一幕、最高です!!!!!!!!



一幕が降りてからの周りの人が「めっちゃ面白いねー!」って話してたり、どこかの回でご夫婦が「面白いからプログラム買おうか」ってグッズ売り場に並びに行ってたのにめちゃくちゃ心の中で頷いたし、楽しい時間と空間を共有できてるのが嬉しかったです。

私も初日はグッズ売り場ががすごい混んでたから、一緒に行った人と「明日も来るからパンフレットは明日買おうか」って話してたのに、一幕終わってあまりにも素晴らしくて、2回目の観劇は絶対パンフレット読み込んでから臨みたくて、幕間で並んで買いに行ったのがいい思い出です。

ちなみに初日の夜に浅草キッドの原作もKindleで買った。活字苦手でほとんど小説読めないのに。

でっかい声で「面白い〜!」って言えるエンタメ作品はやっぱりいいなあ……。


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