12月28日出勤 #2
今日は夕方からの出勤だった。
昨日は年末らしく店内がにぎわっていたようなので、期待して出勤したのだが、大きく肩透かしを食らった。
全く忙しくない。
仕事を探せど探せど見つからず、店内をひたすらウロウロしながらテーブルや椅子をきれいに並べていた。
「あ~あ、暇だな~」
なんて少し大きめの声で独り言を言っても誰にも気付かれないような寂しい店内だった。
やることがあまりにもなさすぎるから、店内を綺麗にしながらお客様の様子をうかがっていた。
あんまり見ない顔のお客さんが多いな~と思っていたが、一人久々に見かける常連様が。
その方は決まってマシュマロが乗った甘い飲み物を注文されるのだが、今日も同じものを飲まれていた。
いつも飲み終わった後に笑顔で
「ありがとう~」
と言ってくださるのが本当に嬉しくて、それだけで荒んだ心が癒される。
自分が客として飲食店を利用する時に真似しようと思うのだが、いざ実践しようとするとどうも顔がこわばってしまい、結局不気味な笑顔で会釈することしかできない。
あれは簡単なようで意外と難しい技術だ。
そのお客様を見つけたことをきっかけに、最近見かけない常連様にも思いをはせていた。
「2カップサイズのアイスティを頼まれる男性もいらっしゃらないな~」
「閉店ギリギリに来られるアメリカンのおばあちゃんも最近来ないな~」
「たまにコーヒー豆を買われるメガネの女性も見ないな~」
「いつもコーヒーをおかわりしてくれる優しげな男性も見てないな~」
僕はお客様の顔や特徴を覚えるのが得意で、顔を見ればどんな財布を使っているのか、いつも何を注文されるのか、どの席に座られるのか、などなど大抵のことは分かる。
我ながらなかなか気持ち悪いなと思う。
ただ、特別覚えようとしたことは一切なく、自然と体が記憶している。
そんな最近見ない常連様は何が原因で来なくなったんだろうと、あれやこれや考察してみた。
一つ考えられるのはメニューの値上げだ。
物価高騰の煽りを受けて、弊店のメニューは全体的に50円から200円ほど値上げした。
高級品の100円200円なら大したことはないが、コーヒーの100円値上げは大きなインパクトがある。
元々はコーヒー1杯300円だったのが、今では400円にまで上がった。
そう考えると、通う頻度が少なくなってもおかしくない。
他に考えられること、、、。
前にも話したが、弊店にいらっしゃるお客様は高齢者の方が多い。
高齢者のお客様を急に見かけなくなると、どうしても体調を心配してしまう。
「大きな病気に罹ってないかな、、、」
「どこかで怪我してないよな、、、」
答えの出ない心配だが、来なくなった原因がどうか他の理由であってほしいと切に願う。
他には、お気に入りの店員がいなくなった、なんて理由も考えられる。
従業員のうち半分近くが大学生という事もあるが、卒業などを機に大体1~2年ほどでみんな辞めていく。
辞めていった店員の中に実はお気に入りの人がいて、その人を見られなくなったから来る必要がなくなった、という可能性も考えられる。
女性従業員から「お客様に連絡先を渡された」という話もたまに聞く。
まあ、気持ちは分からなくもない。
むさくるしい男がいるカフェよりも、綺麗な女性がいるカフェの方が入りたくなるよな。
チェッ
まあ、お客様にもきっと色々な事情があるのだろう。
明日は今年最後の出勤だ。
出勤する前に口角を上げる練習をしっかりして、最高のビジネススマイルでお客様をもてなしたい。
明日も頑張ろう。
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