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オーストラリアで突然無職になった話

10年前。大学の単位も取り終え、とある企業から無事内定をもらうことができました。
入社まで3ヶ月を残した2010年1月。貯めたお金と自由な時間を使って海外に出ようと思い立ち、オーストラリアのシドニーにある「英会話のGEOS」で英語の勉強をすることにしました。

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シドニーでの生活はあっという間に過ぎ、卒業まであと5日。
「さあ、今日も張り切っていくぞ!」
と朝学校に到着してみるといつもなら開いているはずのシャッターが閉まっていました。先生と同級生が校舎の前を右往左往してなんだか慌しい様子。シャッターの前にできた人だかりをかき分けて進んでみると一枚の張り紙が貼られていました。

【リーマンショックの影響を受けてGEOS(オーストラリア法人)が倒産しました。オーストラリア全土のGEOSが閉校し、今後は破産管財人(Ernst & Young)が対応します】

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無味乾燥な文字が、淡々と倒産の事実だけを告げました。
オーストラリアで突然の無職。行き場を無くして路頭に迷うことになりました。
先生や同級生は突然の出来事に途方にくれて泣き崩れたり、家族や知人に声を荒げて電話をしている人もいました。

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1時間ほど経過した後、責任者らしき人が何処からともなく現れました。
「後日メールをするので今日は解散してください」
とだけ言い残し、颯爽と姿を消しました。
何もすることができずに、私を含めた全員がその日は帰宅することになりました。

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(GEOSのスタッフから届いたメール)

自宅に戻ってホストファミリーに事情を説明。もしGEOSから滞在費を前払いで貰っていなかったら自分を泊めるのは損でしかない。

「直ちに家を出ていけ」

そう言われても仕方ないと覚悟を決めて交渉に臨みました。食費を削るなど不要な出費をおさえる提案に合意してもらい、なんとか帰国日まで泊めてもらえることになりました。

ホストマザーは法律事務所で60歳を過ぎても現役で働くオーストラリア人のブレンダさん。
アジア系のスーパーで見つけた貴重な納豆を共有の冷蔵庫に大切にしまっていたら「臭い!!あなたは腐ったものを食べるの?」とめちゃくちゃ怒られたりもしたけれど、自分のたどたどしい英語でも親身になって話を聞いてくれました。

毎週末お子さん家族がやってきて、お庭でBBQ。食べ切れない程のお肉を焼きながら談笑している姿を見て、「こういう生き方もあるんだな」と強く印象に残りました。

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GEOSが閉校した後は、債権整理説明会に行ったりしました(結局授業料など支払ったお金は返金されませんでした。長期滞在組は転校できた人もいたようですが、希望先に行けなかったと聞いているので大変だったろうな……)

オーストラリアから旅立つ前にメルボルンで開催される全豪テニスオープンをどうしても観に行きたくて、チケット屋を探し回って観戦チケットをゲット。シドニーとメルボルンの往復航空券を買ったまでは良かったけれど、お金が底をついて自宅から空港までのバス代が払えないことに気づきました。
グーグルマップと地図を見比べて空港が自宅から徒歩圏内であることを確認。出発当日朝5時に起きて、地図を片手に猛暑の中を3時間30分歩き続けて、なんとかシドニー空港へ到着しました。

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迫り来る搭乗時間と目的地に辿り着けるか分からない不安の中、飛行機の音が遠くから聴こえてきた瞬間は疲れがぶっ飛ぶほど嬉しかったです。

学校が閉鎖されてしまったので仲良くなったオーストラリア人や韓国人、ブラジル人の同級生たちとは集まることは叶わず、別れを惜しむ暇もなく次の地へ行くこととなりました。

「有名な企業でも突然倒産することもある」
「学校を選んだのは自分。助けてくれる人もいるけれど、自分で決めたことは自分で責任を取らないといけない」


という教訓を学べた、とっても貴重な経験でした。

リーマンショックで一生に一度しかできないような体験をしました。新型コロナウイルスの影響で海外の行き来も思い通りにできなくなって、気軽に外出もしづらい毎日ですが、後で振り返ったらなんやかんやで良い経験だったなと感じられる年になれば良いなと思う今日この頃です。

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