見出し画像

Withコロナ時代のアジアビジネス入門㉑「<ベトナム人の定住>人口減の抜本策になるか」@梅田邦夫・前ベトナム大使ONLINE講座(2)

 菅義偉首相は10月18日から就任後初の外遊先となるベトナムを訪れ、グエン・スアン・フック首相と首脳会談を行います。首脳会談ではベトナムからの労働者や技能実習生、留学生など外国人材がテーマの一つになります。日本の外国人労働者のうち、親日国のベトナム人は中国人に次いで多く、将来的には人口減問題の抜本策として外国人の定住政策論議が加速する可能性があります。
 毎日アジアビジネス研究所は梅田邦夫・前駐ベトナム日本国大使を講師に迎え、第2回講座「人材からの視点:日本の少子高齢化、人口減少と労働力不足問題への最大貢献国・ベトナム」を10月16日に開催しました。
コロナ禍での帰国・訪日希望者
 私は梅田氏の講演の中でコロナの状況下で日本のベトナム人労働者の置かれている現状に心を痛めました。梅田氏によると、日本に住むベトナム人のうち、倒産による解雇、雇止めなどに起因する困窮、妊娠・病気などで10月中旬現在、約2.6万人のベトナム人が帰国を希望しているものの、実現できない状況にあります。一方、在留資格を得ている技能実習生、留学生など訪日を希望するベトナム人は約3万人いますが、出国できずベトナムにとどまっているのが現状です。19日に予定される菅首相とフック首相の首脳会談では、こうしたベトナム人からも要請のある定期航空便の早期再開を是非とも実現してもらいたいと思いました。
ベトナム人労働者の光と影
 首脳会談のテーマになるほど日本におけるベトナム人労働者は増加しており、これに伴って検挙件数なども増えています。梅田氏はベトナム人労働者の光と影について数字を上げて説明しました。
【現状】
(1)外国人労働者は2019年10月現在約166万人で、このうちベトナム人は約41万人で中国人に次ぎ2位、8年間に約15倍増。
(2)このうち技能実習生は約20万人で2015年に中国人を抜いて1位、現在中国人の3倍、10年間で28倍増。
(3)留学生数は約8万人で中国に次ぎ2位、10年間で15倍増。2019年にベトナム人留学生初の微減。そのうち日本語学校への留学生2018年約3万人、2019年は約2.8万人と初めて減少。
(4)特定技能(2019年4月開始)は2020年6月末現在約6千人、このうち約3.5千人ベトナム人。
【問題点】
(1) 国別刑法犯検挙件数が2015年に1位
(2) 失踪者は技能実習が2016年に1位
(3) 不法残留者が2019年に1位
(4) 受刑者が中国、ブラジルに次ぎ3位
 梅田氏は背景にベトナムにおける多額の借金、偽造書類、送出し機関(技能実習生、約360機関)、留学斡旋機関(約2100機関)、募集にあたりブローカーが暗躍、日本の監理団体や日本語学校との癒着(過剰接待、キックバック)、非公式手数料支払いの噂などがあることをあげています。
技能実習と特定技能の一貫性確保
 日本政府は2018年12月、菅官房長官(当時)が主導して外国人材の受け入れ・共生のための総合的対策を閣議決定しました。今年10月8日には監理団体などによる外国人材共生支援全国協会が設立され、2021年4月の特定技能の法律見直しを念頭に、訪日する若者の立場も考慮した政策の確立、技能実習と特定技能の一貫性確保などを目指して活動します。梅田氏自身、同協会の副会長を務め、外国人材の適切な育成・保護・支援などにあたります。
人口減問題への抜本策
 最後に梅田氏は「歴史を見ると人口が減って栄えた国や地域は一つもない」と語り、人口減問題への抜本的対応として外国人の定住政策論議の必要性に言及しました。そのためにもベトナムのような親日国で文化的類似性のある国を優先し、日本語・日本の慣習など事前教育の充実を図るべきとの考えを示しました。

■毎日アジアビジネス入門 梅田邦夫・前ベトナム大使ONLINE講座「ベトナムが日本にとって重要になった3つの要因」
第3回「経済からの視点」 10月23日(金)19:00~20:30=日本時間
https://peatix.com/event/1636942/view

梅田邦夫(うめだ・くにお) 前駐ベトナム日本国大使
日本経済研究所上席研究主幹 、毎日アジアビジネス研究所シニアフェロー
 広島県出身。1978年外務省入省。外務省アジア大洋州局南部アジア部長、外務省国際協力局長、駐ブラジル日本国大使などを経て、2016年10月から2020年3月まで駐ベトナム日本国大使。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?