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Withコロナ時代のアジアビジネス入門㊲「日本の<政経分離>を望む中国」@中国経済ONLINE講座

対米従属の“印象写真”
 米アラスカ州アンカレジで3月18日に始まった米中高官による直接会談は冒頭から報道陣の前で激しい非難の応酬が繰り広げられる展開となり、この様子は中国でも延々と放映されました。もう一つ中国で大きく報道されたのは、この2日前の16日に菅義偉首相が官邸で来日した米国のブリンケン国務長官とオースティン国防長官の表敬を受けた際の映像です。体躯の違いから米国の両高官が菅首相を見下すような構図の映像は世論誘導の意図があれば、対米従属の印象を与えることができます。
デジタル、医療、環境が日中ウィンウィン分野
 毎日アジアビジネス研究所では3月19日、北京在住の経済ジャーナリスト、陳言氏を講師に招き、「全人代から読み解くビジネスチャンス」のテーマで深掘り中国経済ONLINE講座を開催しました。
 陳言氏はコロナの中で多くの日系企業が中国市場で利益をあげていることを強調しました。さらに、日本の企業が中国のデジタル、医療、カーボン・ニュートラル(環境)の分野で協力すれば、双方がウィンウィンのビジネスチャンスが広がると述べ、その根拠として全人代で李克強首相が2021~25年の5カ年計画でデジタル分野などに研究開発費を年7%以上増やすと表明していることをあげました。
日本の<政経分離>を望む中国
 しかし、陳言氏は「どこまで進む中日関係の政経分離」として、菅首相が重視する自由で開かれたインド太平洋構想(米国、日本、インド、オーストラリア)は中国から見て対中包囲網でしかなく、こうした政治と日中経済協力を分離していくことが日本の利益につながるのではないかと言及しました。中国で報道された菅首相と米高官の映像は<政経分離>を望む中国側の意図があるように思えます。一方、聴講者からは「中国との付き合いはどんどん難しくなる。<政経分離>は冷静な付き合いが前提になるだろう」との意見が寄せられました。
「中国は単一製品が爆発的に売れるがインドは違う」
 今回の講座では聴講者から「アジアのもう一つの巨大市場であるインドをどう見るのか。中国市場との違いは何か」との質問がありました。これに対する陳言氏の答えは中印の違いを的確に言い当てて印象的でした。
 「中国市場はインドと違い、巨大な単一市場です。例えば、中国で日本酒といえば、山口県の獺祭をみんなが買う。八海山も久保田も美味しいが、中国では一つか二つの製品しか受け入れない。中国では単一製品が爆発的に売れる。しかし、インドは中国のように単一製品が爆発的に売れることはないと思う。その理由は、中国人はモノへのこだわりが強いが、インド人は精神的な豊かさを求めるからではないか。インドでは人口に比例して同じ製品が売れるということにならない。中国市場の方が単一製品のモノづくりがやりやすい」。
 中国は中長期計画で2035年までに中ぐらいの先進国水準の個人所得を目標に、みんなが経済的に豊かになる社会を目指しています。この点でも、陳言氏は「インドでは『みんなが均一に』とはいかず、中国のよう(な目標設定)にならないのではないか」と指摘しています。

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