新シリーズ「中国商務熱点」① 人民日報の視点「金山銀山とともに山河も求める

人民日報の視点
「金山銀山とともに山河も求める」

毎日アジアビジネス研究所は中国を代表する人民日報と提携し、新たなシリーズ「中国商務熱点」をスタートします。人民日報のホットなビジネス情報を選び、日本の事情にも精通した劉軍国・東京支局長がミニ解説を加える連載です。
中国の核心的メディアが何をどういう視点で伝えているのか。それを知ることは中国のビジネスにも役立つと考えています。シリーズ1回目は経済成長と豊かな自然の共存がテーマです。
【毎日アジアビジネス研究所】

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PM2・5の濃度変化

【人民日報記者・劉毅、孫秀艶】
アシがまっすぐに生い茂り、鳥が翼を広げて羽ばたく。河北省張家口市懐来県と北京市延慶区の境にある官庁ダム国家湿地公園は緑にあふれている。22年前、官庁ダムは水質汚染により北京の飲用水水源地から外された。北京の都市全体計画によると、2035年には官庁ダムの飲用水源機能が回復する見通しだ。懐来県は17年から国家湿地公園プロジェクトを実施しており、全県の「最優先プロジェクト」として力を注いできた。村民・戴富強さんが経営しているレストランは大いに繁盛しており、「今のセールスポイントは湿地公園の景色だよ!」とうれしそうに語った。

中国の大地で、生態文明建設が「高速走行車線」に入るにつれて、空がより青く、山がより緑で、水がより透き通った光景が見られるようになってきている。

中国生態環境部(省)が発表した「中国空気質改善報告(2013―18年)」によると、18年の国内総生産(GDP)は13年から大幅に成長したが、大気汚染物質の濃度は大幅に下がり、大気汚染対策重点区域である京津冀(北京市・天津市・河北省)や長江デルタ、珠江デルタの微小粒子状物質(PM2・5)の年平均濃度はそれぞれ48%、39%、32%下がった。

米航空宇宙局(NASA)などの機関が衛星データに基づいて行った研究結果によると、世界で2000年から17年に新たに増えた緑化面積のうち、約4分の1が中国にあり、中国の寄与率はトップだった。現在、中国全土で各種自然保護区が2750カ所設立されている。

一方では生態環境保護に取り組み、もう一方ではグリーン産業に取り組んでおり、グリーン発展はその将来性が期待できる。

雄安新区と「水性ペンキ」

広々としてきちんと整頓された作業場で、「水性ペンキ」が途切れることなく生産されていく。雄安新区=写真は雄安新区の開発予定地、人民日報社のニュースサイト人民網日本語版から=に隣接する河北省保定市徐水区に、晨陽水漆は生産能力が125万トンに達する世界最大の水性ペンキ製造拠点を作った。水を希釈剤とする水性ペンキを従来の溶剤型ペンキの代わりに使用することで、揮発性有機物質の排出を大幅に減らすことができる。「同等規模のペンキ工場と比べ、このグリーン工場は揮発性有機物質の排出を1年で100万トン減らせる。15年以降、水性ペンキの生産販売量は何年も連続して倍増している」と晨陽水漆チーフエンジニアの胡中源氏は説明する。

炎暑の夏、山西省の太原鋼鉄公司(以下「太鋼」)の工場敷地内では、超低排出改造プロジェクトが鳴り物入りで進められていた。太鋼は「汚染がなく、騒音が聞こえず、異臭もせず、排出濃度・総量ともに規制基準に合格する」グリーン鉄鋼企業へと全力で転換しようとしている。今年4月、生態環境部と国家発展改革委員会が共同で「鉄鋼業界の超低排出実施推進に関する意見」を発表し、各地の鉄鋼企業が続々と基準を引き上げて改造に取り組み、「青空を守る戦い」における次なる勝利を目指そうとしている。

安徽省旌徳県は、空気がすがすがしく、山々は緑で覆われている。森林カバー率は69・2%に達し、PM2・5の年平均濃度は1立方メートルあたり27マイクログラムだ。ここが良好な生態環境に恵まれているのは、継続的な生態環境対策のおかげであり、近年の保健産業を主導産業とするという発展方針のおかげでもある。安徽省宣城市党委員会常務委員で旌徳県党委員会書記の周密氏は、「旌徳は美しい自然環境で新たな経済成長源を育成し、良好な発展傾向を示している。今年1~5月、県全体の戦略的新興産業の生産額は12・3%増加した」と説明する。

先ごろ行われた中国環境・発展国際協力委員会の年次総会で、中国政策科学研究会の執行会長である鄭新立氏は、「試算によると、2018年の中国グリーン経済生産額は約6兆元。25年には12兆元に達してGDPの約8%を占め、35年にはGDPの10%以上に達する見通しだ」と述べた。

断固として汚染対策の難関攻略戦を戦い抜き、積極的に気候変動に対応し、国外からのゴミを国内に持ち込ませず、ゴミ分別制度の推進を加速し、国家公園を主体とした自然保護地体系の確立を加速する。中国は経済発展と生態文明建設が歩調を同じくして新たな段階へと進むよう努力を続けている。

劉軍国のミニ解説

近年、中国はエコ文明建設を非常に重視している。2013年9月、習近平中国国家主席はカザフスタンを訪問した際、「我々には豊かな自然も、金銀も必要だ。豊かな自然のためならば、金銀はいらない。しかも豊かな自然は金銀同様の価値がある」と指摘した。17年10月、習近平主席は中国共産党第19回全国代表大会報告のなかで、「人と自然との調和のとれた共生を堅持する。『豊かな自然は金銀同様の価値がある』という理念を確立して実行し、資源の節約と環境保護の基本国策を堅持しなければならない」と指摘。イメージしやすく活き活きとした形で、エコ文明建設を大いに推進するという中国の党と政府の鮮明な態度と断固たる決意を伝えた。各級地方政府と企業は積極的に「豊かな自然は金銀同様の価値がある」という理念を実践し、経済発展と生態保護の両立を実現しなければならない。日本も経済発展と生態保護の協調的発展を非常に重視しており、中国が学ぶべき多くの先進的ノウハウを持っている。この分野は中日両国が協力しウィンウィンの関係を築ける新たな重要分野になるに違いない。

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劉軍国 人民日報東京支局長
1986年山東省青州市生まれ。北京外国語大の北京日本学研究センター日本社会経済コースで修士課程を修了、在学中に横浜国立大で客員研究員として研究した。

2011年12月から16年1月、17年11月から現在まで人民日報記者として日本駐在。著書の「温故創新」(日本僑報)では安倍晋三首相、福田康夫元首相、二階俊博自民党幹事長ら日本の政界・財界・学術界など各界の人々を取材し、新中国70年の発展成果などについての生の声をまとめた。


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