東大英語の設問難易度について

現行の形式(2023年に執筆しています)の東大英語の各設問の難易度を比較する記事です。

・[概念の導入] 設問難易度と対策難易度について


「難易度」というものを、まず二つにわけて分析を始めます。
設問難易度とは、試験場で問題を解いた時の難易度とします。
さて世間一般では、この設問難易度のみが難易度として扱われていますが、もう一つ、対策難易度という概念を導入します。
対策難易度とは、その問題を解くために立てる対策の難しさを表現するものとします。つまり、設問難易度は、試験日の試験時間で関わるが、対策難易度とはその試験日までの生活面で関わるということ。

「難易度」を考える時、本当に大切なのは、設問難易度と対策難易度のバランスです。それを通じて、東大英語の各設問の難易度を比較・検討したいと思います。

難易度は、A(易しい)からC(困難)の3段階で評価します。


1A 設問難易度:A~C 対策難易度:B


まず、設問難易度について。
これは、AからCとしたのは、振れ幅がヤバすぎるからです。
東大の要約はナメられがちですが、そう言う人は、たぶん問題を昔のまで解いていないか(2015や2016をやっても簡単と思うなら相当実力がある)、それか、自分が出来たと勘違いしていて本当は誤答を書いているかだと思います。

要約の本当にヤバイとこは、「簡単だと思ってたらクソ難しい文章で自分の答案は0点だった」みたいな問題が、ある程度存在することです。誤読しやすい問題や、抜いてはいけない要素を抜きがちな問題が多い。近い中だと2005などがその例です。
また、数学とかと違って読んでみなければ難しいかどうかはわからないので、カンタンを引くか激ムズを引くかは最後まで読んで答案を書かなきゃわかんない怖さもあります。
ただ、本当にクソ簡単なこともあるのは事実ではあります。でも結局、難易度の振れ幅が大きいという事実は変わりません(だから最初に解くなと言っている)

対策難易度ですが、昔は対策が困難でした。要約を出す東大以外の大学は少ないので、演習不足になりがちなんですよね。
ただ今は、竹岡師の過去問集が出たりと対策は昔よりは立てやすくなっていると思います。でも、他の大学がめったに東大と同じような要約(注 医科歯科の要約は字数ユルすぎるから東大型とはみなさない)を出さないという事実は変わっていないので、まだ難易度Bくらいかな


1B 設問難易度:B 対策難易度:C


1Bは、1Aと違って記号だし解き方も実は確定できるし、その解き方が一生通るから最終的には難易度としてはAです。だけど、そこまで解法の確定と厳しく無機質な反復練習に耐える受験生はあんまいなさそうだし、それしなきゃ安定はしないからBくらい。あと難易度の振れ幅は全然ないです。2013が最高難易度だけど、別に記号だしこれも同じ解き方で全然できます。文章の内容は難しいけど…

ただ、対策かなり立てづらい。

まずこの形式の問題出してる大学が滅多にないんですよね。だから東大模試しか頼れないってことになるんですけど、この形式になったのが2013年くらいから徐々にって感じなので、対策の材料も50問くらいしかない。そこが1960年からある古き良き要約より対策が立てづらいところ。あと需要が見合わないので専門の解説書もないし。(過去問集の解説は後出しじゃんけんで普遍的ではないことがほとんど。)


2A(自由英作文)設問難易度:A~B 対策難易度:(今の形式が続けば)A

自由英作文は、問題の難易度はあまり関係ないけど、対策の難易度は問題によって変わると思う。

ちょっと前みたいな写真(2013,2014,2016)やイラスト(2005,2015)みたいな問題は、めったに他の大学や問題集で見ないからこの時代は対策が立てづらかった。

ただ最近は、親の顔よりみたようなお題の、テーマ論述が増えたのでこの傾向なら対策はクソほど立てやすいと思う。和訳並みで一位?


2B(和文英訳) 設問難易度:B~C 対策難易度:A


東大の英訳は、というより辞書をみずに和文英訳をするという行い自体が、難しい。自由と違って書きやすい方に逃げるとかもできず、基本は書かれてある言葉の訳に徹しないといけない。でも、言語の性質が日本語と英語とで全然違う以上、完全な直訳も現実的ではない。その間を縫っていくような、苦しみと決断…それが和文英訳。

和文英訳は、難しい。それも東大の問題は、紋切り型ではないからもっと難しい。ポイントがすぐわかるような文章はあまり出されないし…

ただ、対策はブッチギリで立てやすいです。英訳自体は京大を筆頭に他の大学で出続けてるし、参考書も腐るほどあるので。

3(リスニング) 設問難易度:B~C 対策難易度:(20点までは)A、それ以降はC


東大のリスニングは、難しいです。

簡単とか言ってる指導側の人間をよく見るけど、それは、「1回目と2回目の放送の間の30秒で選択肢を全て読んで設問に答える緊張感と難しさ」「放送を聞きながら問題を解くと聞き逃したり理解が追い付かない困難さ」「5つの選択肢を読む大変さ」を知らずに家でお茶を飲みながら呑気に問題だけ見るからそういうことが言えるのだと思います。一度今の東大模試を受けてきたらいい。

また、これはリスニング試験全般そうですが、読み直しができないという制約はかなり難易度に直結してきます。2回しか聞けないし、2回くらいでは本当にすべての選択肢を消せるかという意味では怪しかったりする。今は選択肢も複雑になっているし。

ただ対策は、20点くらいまでは、東大特有の難しさというより単純に英語が聞こえてないことが多いので、たくさん聞け!が対策だし、英語聞くだけならタダでもたくさんできるからカンタン。

だけどそこから先の領域は結構地獄です。

「聞こえながら解くか解かないか」とか「メモを取るかそれか聞くのに集中して取らないか」など、考えるところが非常に多い。ここが厄介なのは、宗教だということです。「1Aから解くな!」は客観的に言える根拠が13個くらいあるので、絶対の正解ですが(ひろゆきみたいな論破王相手でも論破できる話)、リスニング中何するかは絶対の正解がないんですよね。本当に各人の性格による。

それに練習も、他の検定試験や問題集では全然できない。検定試験は話してる内容がチープだったり選択肢が少ないとかカンタンなんですよね。
東大リスニングの真の難しさは、設問と選択肢の内容の高度さにあります。多分あまり難しくない大学だと普通に読解問題でも通用すると思う。これをリスニングで実現している問題が、基本的にない。その意味で、20から30に伸ばす努力の大変さは、リスニングがブッチギリです。

東大と東大模試で対策を立てるしかないけど、選択肢5個はやっと2018年。どんなに過去問を集めたところで、練習と練習の成果から戦術を考えるのは全然できません。一番歴史が浅い、という意味で一番ヤバい問題です。


4A 設問難易度:B~C 対策難易度:C

4Aの設問としての難しさは言を俟たないでしょう。
ただ注目すべきは、対策難易度も随一だということです。

確かに、誤文を指摘するタイプの問題は、私立大学などに多いです。ですが、それらの大学は、語法などの知識側面に終始してしまっている。(でも東大で多いのは、文の構造です。知識問題もあるけど、むしろ高1でも知ってるようなもののことの方が多い。)また、普通の大学では独立した5コから10コの英文を読んで誤りを探す形式が多い。

東大は、一つの文章を読んでそこから誤りを見つけなければいけません。一つの文章なので、文脈も誤りに含まれることがあります。その可能性まで考える練習は、他の大学の問題では積めない。

だから東大や東大模試を遡ろうってことになるけど、今の形式に初めてなったと言えるのは、やっと2016年。模試をいくら集めても、全然50年にも満たない。その意味でも今の4Aはヤバすぎる


4B 設問難易度:A~B 対策難易度:A 

英語自体(世界で使われている言語としての英語)が易しくなっていることもあって、和訳も易化してるかなあと思う。あと対策はブッチギリで立てやすい。英語といえば和訳だし、東大特有の何かもない。

また記事を改めて書きますが、和訳に意訳は基本的にはいりません。(和訳は読解力を聞くために設置されていないし、「自然な訳」という採点基準は恣意的だから)構文も簡単で単語も簡単、誰でもわかるぞこんなの、と思ったときに初めて工夫しようかな、レベルの話です。その姿勢でいけば4Bはカンタンってわかると思います。下手に難しいと言われてるのは、意訳しようとか思うからでしょう

5 設問難易度:B 対策難易度:A(評論・エッセイの場合)~B(小説の場合)

5は、出た文章が小説か小説じゃないかで対策のしやすさが変わるかな。英語で小説を出す大学、とか問題集が少ないので、共通テスト国語2番の読解法を英語に応用するとか、自分なりの対策が必要です。

でも小説であったとしても、設問の7割は和訳力とか語法の知識だし、そのくらい取れてたら理3でも合格自体はできてしまうので、難易度Bかなあ。(阪大文学部の現代文みたいなガチの記述問題が出るわけではないので)


結論、3か4Aがブッチギリで難しくて、2Aか4Bがブッチギリで(現代では)簡単かな 昔は4Bも結構難しかったんですけどねえ