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つくるさんが編むプライド・カラー

今回、明日少女隊が一緒にイベントの企画&運営をする、つくるフォルスさんに「プライド・カラー」にまつわる経験やストーリーをシェアしてくださりました!以下、つくるさんからのメッセージです。


こんにちは、アメリカ、ロサンゼルス在住、トランス当事者(ノンバイナリー)のつくるです。今日は、トランスやノンバイナリーに関連する「トランス・カラー」周辺のあれこれについて、ごく個人的な視点から書いてみたいと思います。

僕はトランスの権利運動のほかにも、アメリカで日本のような国民保険制度の実現を目指す「皆保険運動」に関わっていて、その関係で「レッド・ベレー(赤いベレー帽)」と呼ばれるグループのカリフォルニア支部のお世話係を務めています。

さて、「レッド・ベレー」の活動として、その名の通り、赤いベレー帽をひたすら編むということをやっています。ここで、どうして?と不思議に思われる方も少なくないのではないでしょうか。「赤いベレー帽」と「国民皆保険運動」との間に何のつながりがあるのか?

「赤いベレー帽」の赤はもともと赤十字やら看護師の組合のシンボル・カラーが「赤」であるところから、医療関係者への連帯を示す意味で選ばれたのですが、編んだベレー帽は寄付金集めなどに使っています。もちろん、販売して収入を得るということだけではなく、「赤いベレー帽」をかぶっていることで、「国民皆保険運動」の支援者だとわかる、そんな団結の象徴という意味もあるのです。

前置きは長くなりましたが、僕たちの仲間は自らを「クラフティビスト(クラフト+アクティビスト」と呼びます。「クラフト(手工芸)」やアートを社会を変えるための道具として用いる人たちということです。これは、「運動」の敷居を下げる役割も果たしています。誰もがデモ行進をしたいわけではないし、「家族が許さない」「人の目が怖い」「子供や高齢者の世話をしているのでスケジュールの調整が難しい」「障害がある、あるいは病気で外出が難しい」などなど、人それぞれの理由があり、それでも「運動」に参加したい人はたくさんいます。僕たちのメンバーの中にも、そんな事情を抱えつつ、ベレー帽をこつこつと編むことで運動に参加している人がたくさんいます。

ここで、トランス/ノンバイナリーの権利運動にまつわる僕の「作品」のいくつかをご紹介させてください。


トランス・カラーのスキー・マスク

まずは、トランス・カラーのスキー・マスクです。うさ耳は取り外しできます。実は、このスキー・マスクを編んだ時の状況はかなりシビアなものでした。先のブログで書いたカリフォルニア州アナハイムでのカウンター・プロテストの際に、ハードコアなアンチ・トランス活動家と直接接触するということで、安全管理のために顔を隠して、個人の特定ができないようにしたほうがいいのではないか・・・という話し合いが事前に僕たちの仲間内でありました。最近では、名前と顔の知れたトランス活動家がオンラインで個人情報を拡散されて脅迫やハラスメントを受けたり、深刻なケースになるとストーカー行為にあったり、職場に嫌がらせの電話をかけられて解雇には至らないまでも難しい立場に立たされたり・・・などといった現実があるからです。

全員、顔を隠して個人の特定ができないようにしたほうがいい」・・・そんな話し合いがあってから、僕は二日間くらいでこのスキーマスクを編みました。「悪いことをしているわけじゃないのに、なぜ僕が顔を隠さなければいけないのか」。僕の中ではそんなもやもやと苛立ちがあったのです。どうしても顔を隠さねばならないとしても、せめて、トランス・カラーを身につけて、「僕はトランスだぞ、逃げも隠れもしないぞ」というプライドを表現したいと思いました。

また、戦々恐々とした状況の中でも遊び心を表現したいという気持ちもありました。だから「うさ耳」です。かわいいし、ほっこりとして心がなごむでしょ。そんな思惑もありました。

トランス・カラーはベビーブルー、ベビーピンク、そして白の三色です。アメリカでは(日本でもそうかもしれませんが)伝統的に青が男の子の色、ピンクが女の子の色とされていて、ベビー服売り場もこの二色で溢れています。トランスプライド・フラッグのデザイナーであるモニカ・ヘルムズ(アメリカ人トランス女性)によれば、白は青(男性)からピンク(女性)、あるいは女性から男性への移行や「中立」を表しているということです。僕個人的には、青とピンクの間に位置する「白」は「越境=僕たちは性別を越える存在である」を表すと思っています。

これが僕が編んだトランス・カラーのベレー帽です。

トランス・カラーのベレー帽

トランス周りで、他のカラーのベレー帽も編んでいます。たとえばこれはノンバイナリー・カラーのベレー帽。黄色は「二元論の外に位置するジェンダー・アイデンティティ」白は「複数のジェンダー、あるいはすべてのジェンダーを包括するアイデンティティ」紫は「男性と女性という二つのジェンダーの枠組みの中で両方の性を併せ持つ、あるいはフルイド(流動的)である人たち」、そして黒は「Aジェンダー(色=ジェンダーの不在、無性)」を表しているそうです。


ノンバイナリー・カラーのベレー帽

そして最後に、僕がトレードマークとしていつもかぶっているAジェンダー・カラーのベレー帽です。僕は自分のことは、厳密には「二元論の枠組みの中に位置しないジェンダー」と認識しています。黒と白は「ジェンダーの不在」グレーは「無性寄りのグレーゾーン」、そして翠は「ノンバイナリー(二元論に属さないジェンダー)」を表しているそうです。


Aジェンダー・カラーのベレー帽

一つひとつのベレー帽は、皆が「ありのままの自分」として自由に生きられる世の中になってほしい、仲間の一人ひとりにプライドをもって、胸をはって生きてほしいという願いをこめて編んでいます。少しでもそういう力になれたらと思います。ベレー帽は寄付金集めに販売する他、トランス/ノンバイナリー・コミュニティでは貧困問題が深刻なので、希望があれば無料で僕からプレゼントしています。

人権運動、って時にいやなこともつらいこともたくさんあるので、こんなふうに少しでもカラフルに、ファッショナブルに楽しむことができればいいなあと僕は常々思っています。


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