盲導犬とあしらせの最強コンビを組み合わせて歩いていくーあしらせが切り拓く未来への期待
みなさん、こんにちは。
この記事ではあしらせを実際に使用いただいているユーザーの方へのインタビュー内容をお届けします。
今回のインタビュー対象者は、盲導犬ユーザーの松井進さん。
30年ほど盲導犬と共に暮らしながら、様々な視覚障がい者向けのサービスを試してきた松井さん。
現在あしらせと盲導犬を組み合わせて使っている中で、とても良い手ごたえを感じていただいています。
盲導犬ユーザーで、あしらせを検討されている方や、盲導犬の利用に興味がある方にとって、とても参考になる内容になっています。後半では、図書館員として働いている松井さんの今のやりがいや、今後のあしらせに期待頂いていることもうかがっていますので、是非ご覧ください。
盲導犬との暮らし
ー本日はよろしくお願いいたします。松井さんはどのくらい前から盲導犬と生活されていらっしゃいますか?
もう30年くらいになります。今の子は5頭目のパートナーですね。
子どものころから弱視でだんだん視力が悪くなり、26歳の時に完全に失明しました。盲導犬を使い始めたのは失明する少し前、20台前半の頃からですね。
ー白杖もお使いになるときはありますか?
はい、使うときもあります。
例えば、ホテルや電車、飲食店の中などは白杖で歩きますね。盲導犬は狭いところが通りづらいので、白杖だけで歩くときも全然あります。
ー盲導犬を利用するようになったのは、どのようなきっかけですか?
学生時代にアメリカに行っていたことがあるんですが、アメリカは日本と違って盲導犬に求めるハードルが低くて、騒いだり、性格的にあまり落ち着かない子でも結構盲導犬になれています。
なので、盲導犬と歩いている視覚障がい者の方が結構いて、それを見て「便利そうだな」と思ったのがきっかけですね。
ー日本に戻られてから盲導犬を使ってみて、実際にどうでしたか?
当時はまだ盲導犬があまり普及してなかったこともあって、少し大変なこともありました。一番困ったのは、飲食店や宿泊施設で利用を拒否されてしまったことですね。
最近は減りましたが今でも気をつけて普段から行動していることはあります。例えば今度出張する予定があるのですが、ホテルを予約するときに電話で確認を入れておこうとか、そういったことをしておかなきゃなというのはありますね。
目的地を指示するのは自分自身
ー盲導犬と一緒に外出するときに、気をつけていたり準備されていることはありますか?
そうですね。まさにあしらせが関係してくるんですが、自分が使うナビゲーションに行く予定の場所をすべてセットしておくことをしていますね。
よく盲導犬の利用で勘違いされることなんですが、盲導犬は行先を言えば犬がそこに連れて行ってくれるわけではないんですよね。目的地はあくまで使用者本人が指示を出す必要があって、盲導犬に探してもらう必要があるんです。なので、どっちに行かなきゃいけないのかというのは、自分が分かっている必要があるんですね。
その点、あしらせは目的地をセットしておけば振動で進むべき方向を教えてくれるので、それに基づいて盲導犬に指示を出すことができます。あしらせがないと、犬にどうやって指示を出せばいいか分からない、ということになってしまいますので、そこがあしらせの利点かなと思いますね。
ーありがとうございます。あしらせを使い始める前は、別の地図アプリを使っていたのですか?
はい、GPSを用いたものを使っていました。一番良く使っていたのは、ブラインドスクエアですね。
なぜGPSを使うようになったかというと、出張で地方とかに行くと、ホテルから出たら人がいなくて、誰にも聞けなくて困ったということがあったんですね。自分で目的地を探す必要があって、これはGPSが必要だなと感じました。
また、盲導犬はスピードがあって素早く安全に歩けるというのが利点なんですが、逆に早い分、道を間違えてしまって、方向を見失ってしまい自分がどこに向かうかを探さないといけなくなるケースがあるんですね。
GPSがあればそんな時でも自力で探すことが出来ますので、GPSを使うことは大事だなと思っています。
盲導犬ユーザーから見たあしらせの良さ
ー今あしらせをご利用いただいていますが、これまで使っていたサービスと違う点や今使っていただいてる理由など教えてもらえますか?
あしらせの良いところは、足への振動で情報を伝えてくれるので、集中力が奪われないところにあると思っています。
例えば音声案内のサービスとかだと、ずっと音を聞いておく必要があるのですが、そうすると周囲の音を聞くなどの安全確保の面が疎かになってしまうんですよね。
その点あしらせは、耳を塞がずに振動で教えてくれる。例えば、振動の速さで曲がり角までの距離感を教えてくれるので、そこがとてもいいですね。
ーあしらせ以外で今併用しているサービスは何かありますか?
信号の色読み取りアプリのOKOを使っています。信号の的中率が高いので、並行して使っていますね。
他のサービスも実験的に使ってみることはありますが、普段メインで使っているのはあしらせとOKOの2つです。
他のサービスで、点字ブロックや障害物とかの情報を読み上げてくれたりするものもありますが、情報が多すぎるのと、音だけに頼らざるを得ないことが多いんですね。私は盲導犬がいて、そういった障害物情報などは不要なので、特に利用していません。
ー盲導犬ユーザーの中でも、使い始めたばかりの方など色々な方がいると思うのですが、あしらせを使う上で何かステップはありますか?
いくつかステップはあると思います。あしらせの良さは自分のペースに合わせて使うことができる点にもあると思っています。
例えば、音声ガイドが不要な方は音声ガイドを切ってしまって足の振動だけで使うことも当然できますし、周囲の飲食店の情報とかも取得できますが、それも必要な人だけが使えばいい。どれが必要でどれが必要じゃないか、選んで使える部分が利点だと思います。
ルート検索に関しても、曲がり角が少ない道優先など選ぶことができるのがとてもよいですね。私は多少距離が長くても曲がり角が少ない単純な道を選択することが多いので、そういうルートも検索できることはとても意義があるなと思っています。
実際、多少距離が長くなっても安全に歩ける方が早く目的地に着けたりするんですよね。そういった意味でも、あしらせは痒い所に手が届くというか、バージョンアップを繰り返して頂いているので、とても安心できるサービスだなと思っています。
ー松井さん含め、ユーザーの皆様からたくさんご意見を頂いてだんだんと改善していっているので、そういうお声を頂けるのはありがたいです。
だんだん実用的になってきたなっていうことを感じています。改善でいうと、マイルート機能というのを開発頂いたと思うのですが、これはとても助かっていますね。
通勤など、同じところに同じように行くということは結構あるんですね。そういう決まったルートで、今自分がどこら辺にいるのかってことが安全に分かるというのは、とても安心感がありますね。
決まったルートを歩くという繰り返しのことではありますが、そういった場合でも自分が行きたいところに安心して行ける、というのはとても大事だなと思っています。
ーなるほど。やはり慣れた道であっても、耳を塞がずに歩くことができるのは安心ということでしょうか?
そうですね。音声による案内だと、結局耳からずっとそれを聞くのに集中しないといけないのですが、私としては、できれば歩行中は耳を別のことに使いたいんですよね。
あしらせは、足元の振動でルートを教えてくれるので、聞くことにずっと集中してなくてもいい、というのがとても優れている点だと思います。
また、注意喚起してくれることも、とても助かっています。人間ですから、なかなか歩くときにずっと集中するというのは難しいんですよね。特に私は盲導犬と歩いていて安全確保を任せていますから、なおさらずっと集中して歩いているわけではないんです。
あしらせは、例えば今はどれくらいの距離だから気を抜いてていいなとか、振動が速くなってきたから少し集中しないとなとか、こういう意識の転換するタイミングが分かるという点が、とてもいいと思っていますね。
ーなるほど。盲導犬を使われているからこそ、あしらせの振動が助かる、ということなんですね。
そうですね。盲導犬が白杖歩行と違うところは、盲導犬が障害物をよけて歩いてくれますので、何かにぶつかる心配はありません。
そういう部分は盲導犬に任せてしまって、ある程度の方向や曲がり角のタイミングなどはあしらせに任せて歩く。そうすると、歩きながら他のことに気持ちを向けられるようにもなります。そういう意味ではあしらせと盲導犬の組み合わせは最強だなと、私は思っています。
サポートされるだけでなく、自分ができることで返していく
ー松井さんはめちゃくちゃ明るくてポジティブですよね。いつも私たちも元気をもらっているんですが、昔からそういった性格だったのですか?
ありがとうございます。特にそういうわけではないですが、言っていかないと変わらないなと思っていますので、色々発信していこうと心がけてはいますね。
ー学生時代にアメリカに行かれていた経験も影響されているのですか?
それはあると思います。向こうの方はとてもアクティブで、視覚障害の方でも色んな仕事に挑戦しているんですね。
「アメリカンドリーム」という言葉がありますが、努力する人は報われるけど、努力しない人は報われない。そういう社会なので、やっぱり自分から動く、主張することは大事だと感じましたね。
一方で、主張するには努力も必要という面もあって、ある程度の実績や根拠を残していかないと聞いてくれないんですよね。とてもシビアではありましたが、主張するにはそういったことを示す責任があるんだと学びました。
ーアメリカにはどのような目的で行かれていたんですか?
コンピューターの勉強をすることが目的でした。80年代後半から90年代前半くらいの時にアメリカにいたんですが、そこでプログラミングの勉強をしていました。ただ、当時Windowsの開発段階のものを見せてもらったときに、これで食べていくのは難しいな、と感じてしまったんですよね。それでプログラマーとして食べていくのは諦めて、使う側に回ろうと決意しました。
私は中学校から盲学校に転校したのですが、当時学校の図書室に勤務しておられた先生から、眼が見えなくても図書館に勤めて視覚障がい者の読書をサポートしている人たちがいるというお話を聞き「パソコンを活用すれば私もできるかもしれない」と思ったことがきっかけで、今は図書館員として働いています。
ーそういう変遷だったのですね。図書館員のお仕事はどんなお仕事なんですか?
色んな人に情報を届けて、色んなことの応援ができる職業だなと感じています。
例えば、資格試験の勉強をしたい方に教材を作ってあげるとか、スマホの使い方を教えて情報を得られるようにしてあげるとか、そういう様々な挑戦を支える仕事なんですね。人の応援団というような仕事なので、とてもいい仕事だと思っていますね。
また、私は今まで沢山、音訳や点訳ボランティアの方のお世話になってきました。そういったことへの恩返しができる仕事でもあるなと思っています。今、自分は音訳の方々を要請する仕事もしているんですが、自分が当事者として、こういう風にしてくれると助かるとかこうやったら分かりやすいとか、そういったことを伝えることができるので、今の仕事は良いなと思っていますね。
ーとても素晴らしいお仕事ですね。周りから支えられてきたから、その恩返しができる仕事だ、ということですね。
私が普段の生活でも大事にしていることがあります。できることは精一杯自分でやる、できないことはどうやったらできるか考える努力をする、それでもできないことはちゃんと周囲に頼る、ということを心がけているんですね。
例えば私は、月1回必ず献血のボランティアに行っているんです。前の診察とかも含めると合計2時間くらい拘束されて、注射も痛いですから決して楽しいものではないんですね。
だけど、これが私にとってのボランティア活動なんですよ。私は今まで、色んなボランティアの人たちに支えてもらったり、街で困った時に人に声かけて手助けしてもらったりしてきました。でも、手助けしてもらうことを当たり前って思ってはいけなくて 自分ができることで返していけばいいと思っているんですね。なので、献血のボランティアは決して楽しいものではないですが、自分ができることをやれる範囲でやっていければとは思っています。
ーありがとうございます。お話を聞いていて、人間としてとても学びになるお話でした。最後にあしらせの今後に何かご期待頂いていることがあれば、お伺いさせてください。
私は、あしらせというのは色々な人を支えられるとてもいい仕事だなと思っているんですね。今は視覚障がい者向けのサービスを展開されてますが、例えば認知症の方が道に迷わないために使ったりとか、色んな使い道があるサービスだと思っています。
海外にも進出できるものだと思っていて、今なかなか日本から世界に通用するソフトウェアが出てこない中で、あしらせは世界に通用する日本発のサービスになれるんじゃないかと思ってるんですよね。確か、海外で賞(※)か何か取られてましたよね?
世界で評価される可能性は高いと思いますし、そこは期待されているんじゃないでしょうか。
(※2023年1月、ラスベガスで開催された世界最大級のテクノロジーの祭典『CES2023』において、特に評価されたプロダクトに贈られる「Innovation Award」をあしらせが受賞)
ーありがとうございます。私たちとしても今後様々な方にサービスを届けられるように頑張っていきたいと思いますので、ご期待を胸にこれからも精進していきたいと思います。本日はどうもありがとうございました。
終わりに
いかがでしたでしょうか。
盲導犬とあしらせの組み合わせが最強だ、と言っていただけた時には、こちらもとても嬉しくなりました。
また、ボランティアなど様々なことに支えられてきたからこそ、その恩返しができることを仕事や献血ボランティアでされているという生き様が本当に素敵で、我々も改めて誰かの為になる仕事をしていきたいと、思わせてくれるインタビューでした。
あしらせは2024年8月から新モデルの先行予約を開始します。これからもユーザーさんのインタビューを続々と公開したり、さまざまなイベントも予定しています。最新情報はメールマガジンやXで配信していますので、興味のある方はぜひご登録やフォローをお願いします。
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ここまで読んでいただき、ありがとうございました。