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アンティーク着物と古裂と私 vol.5 アンティーク着物ブーム到来

続きになります。

アンティーク着物」という言葉が生まれ、それまで着物にあまり興味を持たなかった20~30代に衝撃が走った雑誌があります。

『KIMONO姫』 祥伝社 2002年~

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大正から昭和初期にかけての着物→「アンティーク着物」
柄に柄、色のパレード。
着こなす楽しさ。
〝きちんとした”着物の概念を覆すような、おしゃれ感とあそび心。

この本のモデルさん着用の衣装に、店の商品をお貸出しし、着物ショップ紹介に店のことを載せていただきました。

◇◇◇◇◇◇

本が発売されてから、路面店のお客様層に変化が出始めました。

今までは50代以上の女性が多く、ちらほらと男性も。
年齢は高めです。

そこに加わったのが、20代から30代、40代の女性。

「KIMONO姫を見てきました。」
「アンティーク着物が欲しいです。」
「帯を探しに来ました。」

週末の路面店は若い女性のお客様であふれました。

嬉しい悲鳴でしたが、Kさん、私のひとり勤務体制で対応できなくなりました。
急遽、デパート催事スタッフのOさんにも路面店のヘルプに来てもらいました。

Oさんはセンスが良く、年は私より若いですが先輩スタッフ。
着物の着付けも出来るし、コーディネートが得意です。
着物のことがまだ不勉強だった私は、Oさんが手際よくお客様の試着を手伝い、お客様が気に入るコーディネイトをその場で完成させ、流れるように商品を売っていく姿に感動しました。

着物や帯を販売するにあたり、また覚えることが増えます。

着物のルールです。
着物は着る時期にルールがあります。
10月から5月にかけていちばん長く着るのは袷(あわせ)、裏地のついた着物です。
裏地のない単衣(ひとえ)と呼ばれる着物は6月と9月に、
7月と8月には夏着物を着ます。
夏着物は麻や絽(ろ)、紗(しゃ)、縮(ちぢみ)など軽やかな薄物。
帯もルールがあり、さらに合わせる半襟や帯揚げ、帯締めなどにもこの時期にはこの素材、という決まりごとがあります。

嫌になってませんか?
なりますよね(笑)

さらにいうと、何処に何を着ていくかのルールもあります。
たとえば、街をぶらり散策の時に着るような着物でお茶会に招待された席には行けない、みたいなことです。
大丈夫、もう言いません。書きません。
私も嫌になってきました。

……というように、着物の世界はかなりのルールが存在します

それをある程度は守って気にしつつも、楽しく着ちゃおうぜ〜い!なのが、『KIMONO姫』でした。
アンティーク着物ならば、手に入りやすい値段、色や柄が楽しく、古着を着こなす感覚で着物を楽しめるからいいよね!(実際、古着です)…そんなお客様たちがたくさんいらっしゃいました。

◇◇◇◇◇◇

「着物を着るの、初めてです。」

こうおっしゃるお客様が多く、まずはどこにどんな目的で着ていきたいかを聞くところからスタートです。

お友達との着物さんぽと、結婚式のお呼ばれでは違います。
お客様のなかには、「私が着ていきたいからルールなんてどうでもいいんです!」とつよく主張される方もいらっしゃいました。

〝友達の結婚式と披露宴にアンティーク着物で行きたい”
というお客様がいたとして、私達スタッフはこうお聞きするところから始めます。

「お客様がアンティーク着物をお召しになってご列席されることを、先方様にお話しになってみましたか?」

アンティーク着物か現代ものかは、分かる人にはすぐ分かります
何といっても大きさ問題
アンティーク着物はサイズが小さい。
丈が足りない。
裄(ゆき:首から袖口にかけての長さ)が足りない。
身幅が足りない。
ないない尽くしではありますが、着方を工夫したり、洋服アイテムと組み合わせたり、自由な発想で着こなし、楽しむことが出来ます。

生地に特徴があります
アンティーク着物に多いのが、銘仙(めいせん)、錦紗(きんしゃ)、お召し(おめし)など。これらは生地の名前です。
「着物なんてどれも同じに見える」
確かにかたちは現代ものと同じなのですが、アンティーク着物の生地は、カンタンに言うと、「脆い」です。時間を経ているぶん、薄くなっていたり、ほころんでいたり、穴があったり、破れやすくなっています。

ある人達には美しく素敵な着物であっても、アンティーク=古いものと、あまり快く思わない方々もいらっしゃいます。

着物販売が増えていくなかで、着物ルールを頭に入れ(時に裏で着物ルール本をそっと確認しつつ)、お客様が楽しんでお買い物できるよう、お買い上げ後も心地よく着用できるよう、スタッフ一同心がけました。

お客様たちの着物姿を拝見していると、自分も着てみたくなりました。

私も、着物を着てお客様の前に立とう。

◇◇◇◇◇◇

着物を着たことはありました。
いつも着せてもらっていました。

もともと器用ではありません。不器用です。

でも、着てみたい。
着ることが出来たら楽しい、そしてお客様との距離が縮まるようにも思えました。

着付けの本を見て、練習しました。
帯が後ろで結べないので、前で結んでからぐるっと後ろに回します。
自分で着て一日着物で仕事をすると、どこが着崩れてくるのかもわかりました。

私は身長157㎝で、なで肩、きゃしゃな体つき(←当時は)だったので、現代ものよりサイズが小さいアンティーク着物が着やすくて、ちょうどよかったのです。

アンティーク着物は汚れもあれば、状態も傷んでいる場合があります。
ほどき、洗い張りに出して(生地を専門店で洗ってもらう)、新しい胴裏(=裏地)をつけ、和裁師さんに縫い直してもらっていました。
ひと手間かけることで(その分のお金もかかりますが)着物がよみがえり、
体にも馴染んで、さあ、今日も頑張るぞ!という気持ちになりました。

着物を着て売り場に立つと、お客様の方から声をかけていただけました。
商品を説明、おすすめする際も、以前より聞いていただけるようになりました。
明らかに着物効果を感じました。

洋服を着ている時は見向きもされないのに、着物ではモテました。
結婚式はドレスで、披露宴のお色直しで大振袖を着たのですが、「着物の方がずっときれいだった」と友人たちに言われました。ありがとう(;^ω^)

次回「vol.6 本を出版」に続きます。
長文をお読みいただき、ありがとうございました。

※見出し画像は絽(ろ)、夏着物です。この着物を着ていると、どんどん人に声をかけられました。おそるべし着物マジック!!









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