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私の貧血のお話⑧

⑦の続きになります。

入院中は、毎日採血をした。

輸血と朝晩の鉄剤の服用の効果が出て、ヘモグロビンの数値は順調に回復してきた。

いちばん最初に救急で診ていただいた先生は、毎日顔を見せにきてくれた。

「どうですか?動悸がするとかめまいとかはないですか?」
「数値、良くなってきてますよ」
「場合によってはもう一回輸血した方がいいかなぁと思ってましたが、この経過なら、しなくていいです」

先生、連日出勤だわ。
お休みはあるのだろうか……と勤務状況を心配したり……そう考えられるくらい、私にも心の余裕が出来てきた。

消化器系からの出血の有無を調べるため、便潜血検査をし、異常がなかった。
入院の早い段階で直腸診もした。

念には念を入れるなら大腸内視鏡検査もあるが、これで大丈夫だと思う、本人の希望があれば検査しますがどうしますか?と聞かれて、内視鏡はしなかった。

「私の貧血のお話」には書く予定はないが、造影剤を入れてCTを撮った時に副腎腫瘍が見つかり、貧血の件とは別に、その検査も進められていた。
(悪性のものではないと言われ、退院後、この病院の内分泌科にも通院している)

病院としては、

輸血をし(記憶違いでなければ『2単位』)
貧血原因を探るひと通りの検査が済み、
現在、状況も改善されてきていること、
子宮からの出血だと思っていいこと、
以後は婦人科の方で引き続き検査と治療を

という流れになった。
(MRI検査と、婦人科外来の予約済み)


入院4日目の朝、歯を磨こうと廊下に出た時に、医師から言われた。

「最速で、今日の午後に退院出来ますけど、どうしますか?」

そう伝えてくれたのは、輸血の時に立ち会ってくれたもうひとりの循環器内科の先生だった。
毎日顔を出してくれた先生ではなく。

「退院していいのですか?今日?」  

「ご都合で構いませんよ。
今日でも明日でも」

迷わず、"今日退院したい"と先生に伝えた。

すぐに家族にメールすると、驚きながら喜んでくれた。
予定されていた入院期間は6日間だったので、2日早く退院出来る。

通常の退院は午前中に行われるのだが、私は急に決まったので、その日の午後になった。

このベッドに、また新しい患者さんが来るのだと思いながら荷物をまとめた。

6人部屋だった。
私を含め5人の患者さんが居た。

入院していた4日間の間にも、2人が退院し、すぐ新たに2人が入院してきた。

カーテン越しに聞いてしまっていたが、どの方も症状や診療科はさまざまで、私以外は入退院を何度も経験されている感じだった。
年齢もさまざま。

看護師さんとの会話を聞いていて(聞こえてきてしまう)、あまりの理不尽さにそれはないでしょう?!と会話に割り込みたい衝動にかられることもあった。

が、どの方も自分の身体と向き合っているのだなぁと感じる。

不安がある時、痛い時、苦しい時。
自分の身体がこれからどうなっていくのか分からない。
冷静でいたいと思うのに、いられない。
考えたくもないのに、ネガティブなことばかり考えてしまう。

それにしても、様々なことを言ったりしたりする患者に対して、看護師さんらの対応が素晴らしいなと思う。

お仕事であるから。

プロフェッショナル。

分かってはいても、目の当たりにするとすごいなぁと思わずにはいられない。

病院には患者を治そうとしてくれる人がいて、治療に専念出来るように、院内や病室や共用スペースの清掃をしてくれる人がいる。
私が気が付かなかっただけだが、他にもたくさんの方々が働いている。

出産以外は入院体験がなかった自分には、遠い世界だった。
それが突然、飛び込んできた。

これからも忘れずに生活しようと思った。


「1階の入退院の手続きをする部署に寄ってから
お帰りになってください」

手首にある患者認識のためのリストバンドを切ってくれる看護師さん。

「お世話になりました。ありがとうございました」

「お大事になさってください」



病院の外は、8月の終わりの夏で満ち満ちていた。

迎えに来てくれた母がタクシーで帰ろうと言ってくれたが、あいにくタクシーは一台も来ておらず、待っている様子の方々が並んでいた。

駅まで歩けると思うから大丈夫と話して、母とゆっくり歩いた。日傘をさしながら。

街の雑踏、行き交う車両、いろいろな音、人、人、人…………

むわりとする熱気を帯びた空気ですら美味しくて、意識してたっぷり吸って、吐く。

病院から最寄り駅まで5分とはかからないのだが、この日はもっと長く感じた。

体調がわるいのではなく(久しぶりの外で、多少はつらかったけれど)また病院の外に戻って来れた事を実感しながら歩いた。

家に向かう山手線車内で思った。

ここに乗ってる人達の中には、自分では気づかずに貧血になってる人もいるのだろうなぁ。

気づけないのだよね。
だからこそ、気づかなきゃいけないよね、自分で。
気をつけます、私。

ああ、つらくないなぁ、身体が軽やかだなぁと思いながら、ゆっくりと駅の階段を上った。

大丈夫?大丈夫なの?という母の方を心配しなから。

…………………………………………

お読みいただきありがとうございます。

「私と貧血のお話」は次回で最終話にしようと思います。
退院後のことと、治療のことについて書こうと思っています。

コメント欄でも書いてきたのですが、検査のすすめや子宮の病気をぜひ知って欲しいと思って書いている気持ちはありません。

あくまでも、私の日記として書いています。

読むのが怖い、不安を煽られると感じられる方もいらっしゃるだろうし、治療を経験したり、現在も治療中の方も、ご本人ではなく、ご家族やご友人だという方もいらっしゃると思います。

「まあ、あやしもさんたら、そうだったのね」くらいに捉えていただけたら幸いです。

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