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【光の観光資源 Vol.2】 大仏様へのライトアップ

聚楽園の大仏さま

私が生まれ育つ、愛知県東海市には聚楽園公園という公園があり、かつてより鉄筋コンクリート製の大仏様が知多半島を見守ってくれています。曰く、奈良の大仏様よりも大きく代表的な地域アイコンや名物となっています。

聚楽園公園の大仏様

地元東海市の光の観光資源開発を担う私にとって、また小さい頃から慣れ親しみ普段から見守ってくれている大仏様をより観光資源としての価値を付与する考えは当然のことであり、いつしかの夢でありました。

ここでは宗教物としての大仏や政治的な事象は論点からずれるため省略するとし、この高さ約19mの大仏様へ普通のライトアップならいざ知らず、フルカラーライティングで表情や様相を描き出すプロジェクトが2021年についに動きました。

大仏ライトアップ照明設計

初年度のライティング設計

私自体は、商業施設やテーマパークなど効果照明のライティングを行う中で、建築照明とは異なり演出性のあるエンターテイメント寄りのライティングを得意としてきた為、非日常、異世界感のある光づくりをしてきました。

ただ本プロジェクトは、宗教物であることと同時に、光で照らし出すことにあたって不敬にならないこと。あくまで東海市の新しい観光資源化としてのライトアップであること。東海市政50年以上の市政の中での初の取り組みの為、歴史に残ってしまう失敗は許されない。色々な思惑の中照明設計を進めました。

簡易的に境内をモデリング化

台座をふくめ手の届く範囲で測量を行い、CAD上で具体化を行いました。仮設イベントと成るため、イントレを組みそこからの照射を行う計画にまとまり、ライティングシミュレーションを出来る最低限仕立てました。

照明器具の配置。影の付き方なども見ながら配灯計画を詰めていく。

照明シミュレーションアプリは様々あるのですが、私は照度計算を要する建築照明を行う類のライティングは行わないため、エンターテイメント性やリアルタイムレンダリング要素を持つゲーム開発エンジンを採用しています。プレゼンテーションやオンラインミーティングの際に、変更や調整をそのまま議論しながら調整もしたいということと、スピード感を優先という観点を主軸にした為です。

そのあたりはUnreal Engine と Unity3D があるかと思いますが、かつて使用していたLingo言語のDirector、FLASH ActionScript といった開発環境に肌感が近かったのでしょうか、もう3,4年ほど前よりUnity3Dで光の空間デザインやイルミネーションデザインに取り入れることにしました。

Unity3D上のシミュレーションプレビュー/ 御顔は都合でぼかしてます

予算のこともありますが、総数30灯強の配灯で組み上がりUnity3D上でライティングシミュレーションを確認を終え、実際に仕上がったライトアップは下記です。

Unity3Dでシミュレーションと同じシーン/撮影の露出の関係で明るめに写っています
陽のもとで拝むことが出来るありのままの姿
地元の小学生にライティングの色合いを公募し再現

フルカラーライティングである為、様々な色合いの表情を取り入れることが出来、時間とともに移り変わる表情を見ながら大仏様と時間を過ごすことが出来ます。

2年目の照明設計

初年度は配灯計画の精度を高める目的でUnity3Dでシミュレーションを行っていましたが、2年目の今年(令和4年)は周辺空間など含めてより全体把握がしやすいものにしたく、境内を3D LiDARスキャンし精度アップと関係者の方がイメージしやすく把握してもらうための取り組みを行いました。

実際のところの照明設計としては、初年度で高い精度まで具体化出来たため今年は見にこられた方がどういう気持で空間に入れるかの設計が主です。

地形や樹木配置の精度を高めUnity3D側に反映
暗くなりやすい場所へ灯りを入れながら大仏様への影響も出ないような計画も俯瞰して確認

自分のアプリ練度も上がっていることも有り、シミュレーション自体が色々な関係者の方が見てもかなり伝わりやすい仕上がりに出来たことも有り、演出プランもすべてUnity3Dで仕立てて、そのままライティングプログラムで仕上げました。

昼間の景観
月夜のすがた(暗転状態、月明かりで大仏様を見る)
ありのままのすがた(昼間の姿をそのままうかびあがらせる)
金色のすがた(要望もあり金箔を召されたイメージ)
翡翠のすがた(翡翠であしらわれたイメージ)
五色のすがた(仏教5色)

などより高い精度で照明設計寄りのシミュレーションから関係者様へのわかりやすい説明のためのシミュレーションに仕上げることが出来たと思います。


現在、開催中

記事投稿における現在はライトアップ開催中です。聚楽園公園は江戸時代より紅葉の名所でもあり、もみじライトアップを行いながら光の観光資源としての魅力アップを年々拡大させながら展開をしております。


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