存在すら定かではない‟真相” 『オッドタクシー イン・ザ・ウッズ』感想

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 漫才のような会話、周到に仕込まれた伏線、衝撃の展開――おそるべき脚本力と、Youtubeと連動したメディア展開で話題になったTVアニメ、オッドタクシーの劇場版続編。
 オペレーション・オッドタクシー実行の少し前。
 一連の‟事件”に関わった人物たちへのインタビューにより、「真相」に別の角度からの光があてられる。

予告

 オッドタクシーとは、ざっくり言ってしまえば動物を擬人化したキャラクターたちによるサスペンス・ミステリである。
 キャッチ―なルックに関わらず内容はハードで、女子高生行方不明事件を皮切りに、美人局、ネット詐欺、剣銃乱射、銀行強盗といった物騒な事件が次々と起こる。
 それらはすべて裏で繋がっており、運命のクリスマスに向けて収束していく。
 先ほどTVシリーズとYoutubeが連動していると書いたが、これはTV放送と交互にYoutubeで配信されていたオーディオドラマを指している。
 内容は、ボールペンに仕込まれた盗聴器の録音音声を流す番組という体裁を取っており、アニメとオーディオドラマを併せて視聴することで物語の全体図が見えてくるという面白い仕掛けになっている。
 ちなみにこのボールペン、‟幸せのボールペン”と名付けられ、アニメ本編で人から人へ渡り歩いているようすが確認できる――が、あまりにさりげない描写のため、初見で気づくのは困難だろう。

 劇場版に話を戻すと、こちらはクリスマス=オペレーション・オッドタクシーの直前に、事件の関係者を謎の人物がインタビューしているという体裁でTV版全13話を振り返り、プラス各キャラクターの後日譚という内容になっている。
 インタビューという形式でピンときた方も多いだろうが、「インザウッズ」とは「藪の中」の意である。
 ただし、芥川龍之介とは違って、各人の話を聞くことでますます真相がわからなくなる、といった印象は薄く、むしろいままでわからなかった部分の答え合わせといった趣が強い。
 そういう意味では、劇場版に新たなる驚きを期待して観にいくと肩すかしをくらうかもしれない。
 だが、そこで終わらないのが本作の一筋縄ではいかないところである。
 よくよく思い返してみると、TV版ではかなり重要な位置にいたにも関わらず、劇場版に登場しなかった人物が一人(あるいは二人)いる。
 本作の考察をあたってみると、その人物が黒幕として、このインタビュー映像を作らせていたのではないかという説が囁かれている。
 この説が正しいとすると、「インザウッズ」にはもうひとつ、「木を隠すには森の中」という意味もあるのかもしれない。

 このように、本作は深掘りすればするほど面白い作品ではあるのだが、一点残念だったのが、今回明らかになった真相により、TVとオーディオドラマ死んだと思われていた二人の人物の安否が確認できてしまったことである。
 これにより、あの震えがくるほど恐ろしい存在だった‟犯人”の格が落ちてしまったように思えたからだ。
 しかし、もしかしたら本作にはまだまだ明らかにされていない謎がありそうだし、もしかしたら、さらなる続編もあり得るかもしれない。
 今後の展開を期待して待つことにしよう。

                             ★★★☆☆


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