20210627──たとえば詩集を三十分で読み終えて

たとえば詩集を三十分で読み終えて

きみはなにも読み終わらない


それが一時間でも、一ヶ月でも、一年でも同じことだ

一生でも

四百万年の命を持っていても同じことだ


きみは一歩を進み

きみから二歩遠ざかる

そして二歩目で近づこうとした頃には

もうきみは四歩後ろにいる


帰路という旅路

大阪は遠い


ぼくのことを探している詩人がいる

ぼくがタンネという喫茶店できみの詩集を読んでいるとは

きみはつゆほども思わないだろう


針山の中に紛れ込んだ芥子粒を

刺そうとぼくらは何十本と針を突き立てるだろう

届かないだろう

きみの詩集がぼくを刺した

ぼくはきみを刺した

はじめから刺さっていた針を抜いたときに

ぼくたちはふたり血を流す

夕日の響きさえない血を

流して

あったのは既に芥子粒を貫いた針だけだったのだと

気付くものもおらず


なにも読み終わらない


詩集を読む

100円でも投げ銭をしていただけますと、大変励みになります。よろしければ応援よろしくお願いします。