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「私たちは友達」
酷暑の南京で
南京は、武漢や重慶とともに中国の「三大かまど」の一つに数えられ、夏には40度を超える日々が当たり前です。私の宿舎にはクーラーも冷蔵庫もなく、天井のファンが回っていても暑さをしのげません。
この炎天下の中で困るのは、冷たい飲み物がどこにも売っていないことです。中国では冷たい飲み物を嫌うため、ペットボトル飲料が常温で並んでいます。コーラやファンタ、セブンアップなど、街中のスタンドには蛍光色の飲み物が陽光にギラギラと輝いています。
滞在先の中医薬大学の宿舎で知り合った松本さん曰く、
「あれは日本で禁止されたチクロとか、入っているかもしれないね。どちらにせよ、体には良くないよ。あんな太陽が当たる場所に置いておいたら、ペットボトルだって劣化するし、温度上昇で化学反応もあるだろうし。」
松本さんも私と同じく、中国に来たばかり。中国医学の研究をしている大学院生です。私がむくみの悩みを話すと、カリウムが含まれているから良いよ、とサンザシのお菓子を勧めてくれたり、今学んでいる中国医学の知識を分かりやすく説明してくれたりと、知識豊富で楽しいお方です。独学でNHKラジオ中国語を徹底的に聴き、ゼロから1年でHSK高級を取得したというのだから、すごい。研究のための道具としての言語を身につけて、南京で論文執筆に励んでいます。
HSK高級とは多くの留学生にとってのゴールです。特に目的もなく、単なる語学習得を目的に来た私は、一体何をしに来たんだという気持ちになります。
中国のお茶屋さん
さて、そんな松本さんに茶葉を買いに誘っていただき、夫子廟の「天福茗茶」へ向かうことにしました。頻繁にKFCで冷たいコーラを買っていた私を見かねて声をかけてくれたようです。
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高品質な中国茶や茶具を販売しているお店。
試飲や中国茶道のデモンストレーションをしてくれます。
店内では、さまざまなお茶を試飲しました。特に美味しかったのは朝鮮人参ウーロン茶、花が開く細工を施したジャスミン茶、そして苦丁茶です。苦味が体のどこかに効いている感じがして、仄かな甘みもあってクセになります。
伝統茶道のデモンストレーション
店員さんが優雅な手つきで何杯もお茶を注いでくれるから、半日くらい居座ってしまいました。中国はサービスが悪い、と言われますが、そんなイメージを覆すような心地よい接客でした。値下げはほとんどないけれど、試飲はエンドレスです。次から次へと「こちらもぜひ味見を」とお茶を用意してくれるので、何度もトイレに立ち、毒素を排出するかのようでした。
店の女の子たちは接客を忘れて私たちとおしゃべり。最初は無愛想だった子も、次第に私たちと打ち解けて輪に加わっていました。皆、南京よりも田舎出身で、外国人と会ったことがない様子。日本語を勉強していると言うと、一生懸命日本語で話しかけてくれました。最後には店長まで出てきて、みんなでテーブルを囲みました。
何か裏があるのでは?と疑う癖がついていた私は、この和やかな雰囲気に驚きました。結局殆ど買わなかったのに、こんなに親切にしてくれるなんて。
朋友という言葉の広さ
帰り際、松本さんが店長からもらった名刺を見せてくれました。そこにはプライベートの電話番号と「私たちは友達、いつでも連絡を」という走り書きが。「留学中の不便はいつでも相談に応じる」とも言ってくれたらしいです。マンションの件も相談してみたらいいと言ってくれました。(私は宿舎に1ヶ月住んでいる間に、外のアパートやマンションを探して引っ越す予定です。)
外国人であること、松本さんが大学に所属する研究者であることが信用につながり、新規客を連れてくる可能性も考えたのかもしれません。顧客との関係を深め、信頼を築くことを重視する接客スタイルということなのでしょう。
いずれにしても、「友達」という言葉が、気軽に、広い意味で使われるのだな、と感じました。中国では誰と繋がっているかが大事、人間関係がビジネスの成功に大きな影響を与える国である、と聞いたことがあります。日本ではむしろ、敬語やマナーを駆使して相手と距離を取り、立場を明確にしながら商売を行いますが、中国ではカジュアルに関係性を築きながら、ということなのでしょう。
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