薄暗い診察室

((気まずい、なにも話せない))

▶︎取り上げられた問診票のことを考えた。先生はなにか話題を提供してくれないだろうか。診察室の空間一点を見つめたり、机の上の置物とアイコンタクトを取ったり、手の感触を確かめたり。なにも準備せずに受診したことを後悔した。数分間の沈黙が流れていた。

▶︎ようやく先生から質問を投げかけられた。質問は精神科でよく取り扱う病気を鑑別する内容。

先生「睡眠は取れてますか」

自分「はい」

先生「実際には存在しないモノを見たり、聞いたりはすることはありますか」

自分「いえ」

先生「大人の発達障害を疑ってますか」

((なにそれ))

自分「?」

先生「知らない、ですね。」

▶︎ここでの診察は、前のクリニックと比較して沈黙が多め。時々、先生の、なにか考え込んでいるような音は漏れてくる。

先生「安定剤を出すので飲んでみてください、1週間後、来れますか」

((薬は要らないけれども))

自分「はい」

▶︎最悪なスタートを切った。主訴は何も伝えられないまま終わってしまった。そして、次回がある。次はどうなってしまうんだろう。そういえば、診察室の電気は点いていたんだろうか、なんだか薄暗い中で話をしていた気がする。

◼️あとがき

診察室の電気はふつうに点いていて、明るい。通院当初は、あまり診察室内の明るさを感知していなかった。自分の頭の中や先生の質問にどう答えるかを集中するあまり、感覚がおかしくなっていた。