リセット

▶︎職場に頼りなさそうな新人が配属されてきた。今年は取らないはずなのに、会社の都合により、予定外の配属となった。教育担当は自分だった、これも想定外。こんなに忙しいのに、教育する余裕はない。教育される側もきしねんりょをもつ人間から教わるとは、なんとも哀れ。

▶︎意外とできる。人は見た目や印象だけでは正しくその人の性質を理解することはできない。この新人は、わからないことがあるともんもんと悩み始めるが、丁寧に指示を与えると、かなり正確に、そしてよく働くと知った。新人だった自分を覗くようだった。

▶︎はじめて精神科受診をした3月。その頃から体調がおかしく、咳が止まらない。内科を受診した。診察室に入ると、デスクに置かれた ”先生を模したフィギュア” が目に入る。こちらが恥ずかしくなる。検査の結果、肺は悪くない。気休めの薬だけもらった。

▶︎咳が止まらない。別の内科を受診した。内容は聞き取れないが、診察室から大きな音が漏れてくる。入室。元気で高圧的な先生。こちらがしっかりと話さないと、大きな声が返ってくる。初めて肺活量を測定する。今度は元気な看護師が側についた。

看護師「吸ってー ! 吐いてー !」

声が大きい。そんなに力を込めて言われると、逆に集中が途切れる。この両名が、待合室に漏れていた音だと知った。肺活量が計測基準を満たさなかったため、やり直しをした。木管奏者の肺活量が劣っているとは、不甲斐ない。

▶︎あの初診から半年くらいが経っていた。また、考えがつよく。

((もうダメ、耐えられない、死にたい))

再び、精神科の予約を取った。前回のクリニックは諦めた。決して嫌な先生ではない。でも「(半年も経って) どのような困り事があって、いらっしゃいましたか」と問われたら、返す言葉がわからない。

◼️あとがき

本当は同じクリニックに行きたかった。けれども、仕事は新人のおかげですこし軽くなり、今度は ”頭が回らない” という理由で受診できない。「今回は、前にも伝えたきしねんりょの方がキツくて受診しました」と言えばよい。でももう一度話す勇気がなかった。