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スポ根算数から脱却せよ!〜おもしろ算数:数編〜(おしごと算数番外編)

小学生向け、アウトプット型・探究学習プログラム「なりきりラボおしごと算数」(2019年度グッドデザイン賞受賞)。子どもたちの探究心や創造性を刺激する、数十の職業が詰め込まれています。マガジン「なりきりラボ・おしごと算数の世界」では、その一つひとつのタイトルの魅力をご紹介します。今回はおしごと算数番外編おもしろ算数〜数編〜です。


<プログラム開発者、いわたく&すぎちゃんに聞きました!>

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いわたく(岩田拓真):
株式会社a.school(エイスクール)代表取締役校長。京都大学総合人間学部卒、東京大学大学院工学系研究科修了(専門分野は、脳科学とイノベーション)。大学院在学中に、ひとり親家庭に対して動機づけ教育を行うNPO法人Motivation Makerを仲間とともに創業し、理事に就任。Boston Consulting Groupにて経営コンサルタントとして勤務した後、a.schoolを創業。探究学習の塾「a.school」を運営するとともに、様々な創造的な教育コンテンツの開発に携わる。自分自身も新しいことを学ぶのが大好き。一児の父。

すぎちゃん(杉野 亮介):
慶応義塾大学経済学部卒業。学生時代に学習指導やテニスコーチの仕事を通じて「人に何かを教えること」に没頭。一方、日頃から思考ゲームや数学パズルなどに高じる、根っからのロジカルシンカー。大人の教育を手掛ける企業に7年勤務し、子どもの教育分野へ転身し、算数・数学の魅力を伝えるべく活動中。a.schoolではラーニングデザイナーとして、「おしごと算数」の企画開発に携わるほか、2017年3月〜2019年7月は柏の葉T-site校の同名クラス講師も務めた。


ー おしごと算数の番外編は「パズル算数」に続き2つ目ですね。

いわたく:はい、今回の「おもしろ算数」は数編・図形編の二つで構成される、おしごと算数の番外編です。おしごと算数は算数と仕事のつながりを学ぶプログラムですが、その特性上算数そのものを探究する機会はほとんどありません。なので、この「おもしろ算数」では算数を主役とし、数・図形という二大テーマにスポットライトをあてました

すぎちゃん:数編のテーマは「新しい発見を楽しもう」。4つの切り口から数にまつわるさまざまな発見を繰り返します。

1. 数字の不思議
2. 計算の不思議
3. 数の性格
4. 世界の算数

1. 数字の不思議

すぎちゃん:さまざまな国や地域で使われてきた数字の過去を辿りながら、数を歴史的な観点から探究します。

いわたく:象形文字のような数字を真似して書いてみたり、とにかくややこしくて面倒くさい昔の計算方法に挑戦してぐったりしたりと、子どもたちが盛り上がる体験が詰まっています!マヤ文明からインダス文明まで、大昔の世界を横断しながら学ぶダイナミズムもあって。

すぎちゃん:でも、歴史を知ること自体は目的ではないんですよね。昔と比べると、私たちはいろいろなことが圧倒的に便利に、効率化された世界に生きている。先人の努力や発明のおかげで、すごく楽できているんですよね。だからあえて物事がもっと不便だった時代にタイムスリップすることで、今の時代はすごいんだね、便利じゃん!ということに気がついてほしい。過去の(やたら複雑で難解な)数字に楽しくツッコミを入れながら、今この時代に生きられることを改めて評価してもらえたら。

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2. 計算の不思議

いわたく:これは計算に潜む規則性を見つけるものです。例えば九九。九九表を折り重ねるとなにが見えてくるか?同じ数字を見つけたり、足し引きしたらこうなるという法則を見つけたり。普段九九表はただ記憶するためのツールとしてしか使われないけれど、よくよく眺めてみると不思議がたくさん隠されていて、ただの記憶を超えて、あれこれ思索にふける余地があるんですね。

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こういう「目利き」は数に強くなるのに大事な能力なんです。計算が得意な人は、ただ単に計算力(処理能力)が高いだけではなく、規則性を発見したうえで工夫を凝らしている。楽する工夫だったり、素早く概算する工夫だったり。そのコツを掴んでもらえたらと。

3. 数の性格

いわたく:偶数奇数、倍数、三角数、素数・・・数にはさまざまな特徴がありますよね。友達の人柄を知るように、数の性格を知ると数字の羅列や束の見え方が変わるということを学ぶ回です。

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すぎちゃん:例えば、1, 4, 9という数の羅列。見る人が見ると、平方数に見えてくる。こういうものの見方・解像度が高くなるメガネをかけられると、日常生活でも応用が効くんです。例えば私は、集団授業をやるときのテーブルあたり人数を考えるときに、数の特徴をふまえたシミュレーションを行いますね。

もちろん、算数力そのものの強化にもつながります。特に子どもたちがつまづきやすいのが、分数の通分・約分。これは倍数のメガネを鍛えることでぐっととっつきやすくなるはずです。

いわたく:一言でいうと、数に対するセンスを磨く内容なんですね。研究者から営業マン、デザイナーまで、数のセンスが生きる仕事って意外と多いんです。でもこと算数教育となると、見方・考え方のセンスを磨く前になぜか(ひたすらドリルを解くような)体育会系に走っちゃうことが多くて。そうした傾向に対するいわばアンチテーゼとして設計しました。

4. 世界の算数

いわたく:最後は、海外に住む子どもたちは算数をどのように学んでいるのか、探究します。同じ算数という科目でも、ところが違えばアプローチはこんなに多様だということを伝えたくて。特定のお作法に終始して算数が嫌いになってしまうよりも、いろんなやり方・考え方があっていいんだ!自分に合ったものを選べばいいんだ!と自信を持ってもらえたらと。

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すぎちゃん:例えば、イギリスはダースの感覚が根強く残ることからか、掛け算を学ぶのは9×9(九九)ではなく12×12が基本。だから、12まではtwelveと数えるけれども13からはthirteenというのか、と数と言葉のつながりも実感できますね。あとは、桁区切り(欧米諸国は3桁だけれど日本は4桁、つまり万の位で数える)や筆算の仕方など、各国のアプローチを学んではそれぞれのメリットデメリットを分析します。

アメリカ・オーストラリア・イギリス・インド・中国・フランス・・・・算数で世界旅行をするようなプログラムなんですが、数と文化のつながりを体感して楽しんでもらえたらと。

ー なるほど。そう言われてみると、フランス語もなかなかアクロバティックな数え方をすることに気がつきました!80はquartre-vingts、つまり4-20という掛け算で表現しますもんね(笑)

すぎちゃん:そうですね、あくまで算数の探究なんですが、文化的視座が高いので、特段算数好きでない子でも楽しめるかなと思います。

いわたく:算数をただこなすだけじゃなくて、いつもとは違う切り口から楽しんで、再発見してほしいんです。同じ問題に対するアプローチだってもっと多様でいい。スポ根算数からの脱却ですね!

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グッドデザイン賞受賞の小学生むけ・アウトプット型探究学習プログラム「なりきりラボ」「おしごと算数」は、東京は本郷・池上の直営校のほか、全国のパートナー校で受講できます!(2020年4月からは、オンライン受講も可能に!)くわしくはエイスクールのホームページをご覧ください。


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