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なりきりラボ・おしごと算数ってどんな学び?

2019年度グッドデザイン賞を受賞したa.schoolのオリジナルプログラム、「なりきりラボ」と「おしごと算数」。この春には全国15都府県42教室で開講する予定の、今や全国に広がりつつある学びです。

〜なりきりラボ・おしごと算数とは?〜
「仕事(職業)」を軸にした、小学生向けのアウトプット型・探究学習プログラム
。世の中にあるさまざまな仕事を題材に、子どもたちができる限りそのリアリティに触れながら学ぶのがコンセプトで、仕事さながらのミッションの数々に挑戦します。

「なりきりラボ」「おしごと算数」を制作しているのは、a.schoolのラーニングデザイナー達。それぞれどんな授業で、どんな思いがこめられているのか、チームを率いる校長いわたくに聞きました。

<話し手>

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岩田拓真(いわたく):
株式会社a.school(エイスクール)代表取締役校長。1985年京都に生まれ、滋賀で育つ。京都大学総合人間学部卒、東京大学大学院工学系研究科修了(専門分野は、脳科学とイノベーション)。大学院在学中に、ひとり親家庭に対して動機づけ教育を行うNPO法人Motivation Makerを仲間とともに創業し、理事に就任。Boston Consulting Groupにて経営コンサルタントとして勤務した後、a.schoolを創業。探究学習塾「a.school」を運営するとともに、様々な創造的教育コンテンツの開発に携わる。自分自身も新しいことを学ぶのが大好き。一児の父。

<聞き手>

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大森友暁(もりりん):
早稲田大学教育学部3年。株式会社a.schoolインターン(a.school MENTORS)。a.schoolの小学生コース「なりきりラボ」「おしごと算数」のメンターとして大学1年秋より活動。現在はT-KIDSシェアスクール柏の葉校おしごと算数講師(2019年9月~)・ゑもんキッズプロジェクトwith a.school講師(2019年10月~1月)など、講師としての活動もスタート。

小学生版リベラルアーツ、「なりきりラボ」

ー それではまず、「なりきりラボ」について教えて下さい。どんな授業ですか?

いわたく:「なりきりラボ」はその名の通り、職業人(プロ)になりきって学ぶ授業です。授業は大きく前半・後半にわかれていて、前半はどんな仕事なのかということを学ぶ見習い期間。クイズ・ゲーム・ロールプレイなどワクワクするアプローチをふんだんに取り入れることで、自然と興味関心がわくようなシカケを大切にしています。後半は、前半で学んだことをいかして実際の仕事と同じようなミッションに取り組みます。商売に挑戦したり、アイディアを商品化したりと、ミッションの形はさまざま。知識を得て(インプットして)終わりにせず、知識をいかす(アウトプットする)ような試行錯誤をとおして、本物の力、使える力を育成します。

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(教室風景。ときには教室全体で盛り上がり、ときにはチーム対応やグループワークで協力し、そして個人でもくもくと制作に取り組むことも。)

「なりきりラボ」の特徴は大きくわけて4つ。

【特徴1】教科科目に縛られずに、分野横断的に学ぶ
「なりきりラボ」は、世の中を盛り上げるアツい仕事や、様々な専門職に触れながら学ぶ、いうなれば小学生版リベラルアーツ。高校までの学びは教科・科目ごとに体系化されていて、学際的な学びは(あったとしても)大学以上となることが多いのですが、世の中は本来分野横断的。さまざまなテーマやトピックが連関して初めて、社会は成り立つんです。だから、社会で役立つ教養を体感や体験、試行錯誤をとおして学ぶことを重視しています。

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(古代ローマでは、文法・修辞学・弁証論・算術・天文学・幾何学・音楽学の7つを自由七科=7つのリベラルアーツ、とよんでいました。)

【特徴2】仕事の本質に迫る
世の中の職業体験プログラムは、まずは子どもが仕事に関心を持つようにと「入り口」の工夫を凝らしたものが多いですよね。例えば、キッザニアのような職業体験施設や、Gifte!にあるような1日体験プログラムなど。もちろん、こんな仕事があるんだって子どもたちはワクワクして楽しめると思うんですけれど、(ともすれば表面的なことを)知って終わり、体験して終わりになっちゃうという側面もあるのではと仕事を知る・関心を持つきっかけとしてはいいのですけれど、そのさらに奥深くを探ることができません。

だから「なりきりラボ」ではあえて、プロになりきって実際に価値を出すところまで挑戦します。本来仕事は、お客さんに対して価値を生み出すことでその対価としてお金をもらえるというものですよね。例えば、生き物マニアな人がいるとして、ただ好きなだけ・詳しいだけでは研究者になれません。生き物に関する問いを自分で立てて、実験や調査などの試行錯誤の先に新たな発見をして初めて、価値を生むことができます。つまり、仕事とは価値を生み出すこと、アウトプットすることなんです。

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(「起業家・経営者」では、小学生も商売に挑戦!手作りアクセサリーを地域のお祭りで実際に販売しました。出納帳の記録や在庫管理もしっかり行います。)

もう一つ、仕事の本質として大切なのは、未知の答えに向かって試行錯誤し続けること。だから「なりきりラボ」では、作り方が決まっている工作キットの組み立てや、やり方が決まっている実験の実行はほとんどしません。自分でつくりたいもののデザインをおこしたり、研究であれば仮説をたてるところから始めて実験方法まで考えたり、ある意味仕事の一番タフなところを体験するんです。もちろん子どもたちはそんなことを意識せずに、やってみたい一心で取り組むのだけれど、そういうものの考え方や行動の仕方が自然と身につくと、たくましくなれますよね。

【特徴3】夢中になれる仕事を探す
「なりきりラボ」をとおして20もの仕事に出会えることは、将来のキャリア選択の土台づくりにもなります。その幅広さに視野が広がるということもありますが、一つひとつの仕事をかなり深くまで掘り下げるので、なんとなく好き、というところからさらに一歩先に進んだ理由が見えてくるんですね。

例えば、「なりきりラボ:営業・販売」。商品を売る仕事が好き、ではなく、相手に何かを伝えたりコミュニケーションを取ったりするのが好き、というくらいには解像度が高くなるんです。そうすると必ずしも営業・販売である必要はなくて、コミュニケーションをいかしたほかの仕事の可能性もみえてきます。なに(What)から一歩進んでなぜ(Why)好きか、どんなアプローチ(How)が好きか、というところまでわかる職業体験プログラムはなかなかないのでは、と手前味噌ながら思っていて(笑)。

【特徴4】アウトプットする力を養う
どの仕事も、前半にその仕事に関する知識やスキルをインプットしてから、後半は子ども自らがアウトプット・ミッションに挑戦する設計になっています。アウトプットにはどんな力が必要かというと、①つくる力 ②表現する力 ③考える力 ④伝える力 ⑤行動する力 の大きくわけて5つ。でも例えば「③考える力」一つをとってみても、論理的思考力もあればアイディア発想力もあるんですね。

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(なりきりラボ:アウトプットの5分類。これからどんどんお仕事ラインナップが増えます!)

また、例えば「なりきりラボ:メカエンジニア」。中心となるのは「④つくる力」なんですが、その過程で機械の仕組みを論理的に考えたり、作品完成後に展示会をしてその魅力を伝えたりと、実際は複数のアウトプット力を駆使しながらミッションに取り組むんです。実際の仕事も同じで、いろんな経験やスキルをかけ合わせて臨みますよね。仕事をテーマにすることで、さまざまなアウトプット力を複合的に使いこなす身のこなしができるようになるんです。

仕事でいきる算数を学ぶ、「おしごと算数」

ー さて、続いてお聞きするのは「おしごと算数」について。どんな授業ですか?

いわたく:算数と仕事のつながりを体感しながら、仕事でいきる算数的なものの見方・考え方を学ぶ授業です。なりきりラボと同じく、子どもは仕事体験を通して「いきた算数」を学びます。インプットの前半・アウトプットの後半という構成も同じなのですが、おしごと算数のミッションは特に、a.schoolのオリジナル・ゲームに取り組むことが多いですね。「コンビニ店長」になって商売ゲームをしながら計算力を高めたり、「ロゴデザイナー」になってクライアントのためにデザインをしながら図形センスを磨いたり、「投資家・ギャンブラー」になってギャンブル・ゲームに一喜一憂しながら確率的思考を身につけたり・・・。

ー さきほど「なりきりラボ」は分野(教科)横断的だという話があったと思うんですけれど、「おしごと算数」は算数という教科に絞っているんですね。

いわたく:そうですね。算数は子どものなかでも好き嫌いがわかれる教科なんですが、苦手意識を持たずになんとか楽しんでほしい、好きになってほしいと思われる保護者の方も多くて。僕自身は算数が好きだし、同じ設計チームにも算数マニアの仲間がいるから、身の回りの暮らしや仕事と結びつけることでちょっとでも関心を持ってくれないかな、楽しんでくれないかな、と考えたんです。あと、意外と算数を使う仕事って多いんですよね、理系文系に関わらず。

おしごと算数の特徴は主に3つあります。

【特徴1】身の回りの物事(社会・仕事)と算数の「つながり」を学ぶ
算数って「何の役に立つの?」と学ぶ目的がわからずに算数嫌いになってしまう人、多いですよね。特に数学になるとこの傾向は顕著で。学校での科目指導が、身の回りの暮らしや仕事の文脈から切り離されてしまっているんです。だから、算数と社会のつながりをきちんと見せてあげると子どもも腑に落ちて、学ぶ意欲がわく。「へー、これって算数なんだ」「ああ、こういうふうに繋がるんだ」「算数はこんなところで役立つんだ」と、意外な職業にも算数(的な見方・考え方)が応用されていることに気がつけます。

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(おしごと算数:算数を使ってできることの6分類)

【特徴2】反復して磨く計算力より、算数の「見方」や「考え方」を鍛える
算数嫌いを生む要因の二つ目として、何度も何度も同じ作業をやらされる退屈さがあります。算数の教材って計算ドリル型になりがちで、たしかに何度も反復すると計算力は身につくのですが、ただの作業になってしまうとつまらないですよね。

でも算数の面白さはもっと別のところにあると思うんです。算数的なひらめきや着眼点、論理的思考力や試行錯誤する力を養うと、自分の頭で考えることの楽しさや、試行錯誤を繰り返して答えやアイディアにたどり着く達成感を味わえる。おしごと算数は、子どもたちにその快感を味わってほしくて、さまざまな難易度のミッションをふんだんに取り入れています。

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(自分が調べてみたい「数」をピックアップしてその移り変わりの特徴を読み取るワーク。カレールーの販売数だったり、大好きな漫画・コナンの販売部数だったりと、算数のメガネをとおしてみることで新しい発見が!)

【特徴3】クイズやゲームを入り口としているから、算数に親しみやすい
最後に、算数嫌いの子にも楽しくとりくんでもらえるよう、ゲーム(遊び)要素が多いのも特徴です。「なりきりラボ」と少し違うのは、実際の仕事に近づけるアウトプットを目指すことよりも、暮らしや仕事の疑似体験のなかで算数を使いこなす面白さを体感してもらうことを大事にしていることかな。嫌いな科目ナンバーワンだった算数のランクが少しずつあがってきた、がんばりたいと思うようになった、という子が多くて、開発者冥利につきますね!

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(「投資家・ギャンブラー」ではサイコロやカード、ルーレットなどで確率をあてるゲームが盛りだくさん!チーム対抗戦は思わず子どもも本気になっちゃいます。)

「なりきりラボ」「おしごと算数」の共通点とは?

ー それぞれの特徴を聞いてきましたが、共通点はあるんですか?

いわたく:考えてみたら6つもありました(笑)。駆け足で紹介しますね!

【共通点1】 子どもの興味を引き出す細かな工夫がある
クイズやゲーム形式を活用したり、また子どもが「何それ?」と食いつくようなネタ(ボケ)を取り入れたり、文字だけではなくて絵や動画などのビジュアルを多用したりと、子どもが自然と興味を持ってくれるような設計を心がけています。特に、プログラムの前半にそういった工夫を詰め込んで、初めて触れるテーマへの興味喚起に繋げています。

【共通点2】 仕事がテーマで、実生活につながった学びである
仕事がテーマといっても、もちろん実際に働くわけではないんですが、できるだけ実際にある事例を扱ったり、プロがやっている仕事に近いワークをやったりします。子どもにわかりやすく伝える努力はしつつも、過度に子ども扱いしないというか、大人の(リアルな)世界もきちんと見せていますね。難しい専門用語もあえて使うことが多いかな。

【共通点3】ミッションやゴールに向かって挑戦する
ただ講師の話を聞くだけの受け身の授業ではなく、子ども自らがミッションやゴールに挑戦する能動的な時間であることも、共通点ですね。全8回を通した大きなミッションもあれば、授業ごとに挑戦する小さなミッションもあり、ミッションクリア=小さな成功体験を積み重ねて成長できるステップを大切にしています

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(「おしごと算数:コンビニ店長」ては売上を競うべく、数々の計算をこなします。)

大小さまざまなミッションに取り組むことで、インプットとアウトプットのサイクルがぐるぐるぐ回る効果もありますね。知って、考えて、やってみて、新しくわいた疑問や振り返りたいことをまた学んでと繰り替えすことで、自ずとインプットの質もあがるんです。

【共通点4】日常生活でも使える技が段階的に増えていく
例えば「なりきりラボ:コピーライター」だったら、物事の良いところを発見する技、ことばの工夫をする技、相手にどんな行動を促したいか考える技などを磨くんですが、どれも日常生活で役に立ちますよね。家族の良いところをみつけたり、欲しい物を買ってもらうためのおねだり文句を考えたり(笑)。日々の暮らしににじみ出る学びを目指しています。

【共通点5】個人と集団の組み合わせで学ぶ
a.schoolでは、自分が「面白そう」「好きだ」「やってみたい」と思うことを探究することを大切にしているので、特に最終成果物をつくる際は個人ワークになることが多いんです。でも、授業前半のクイズやゲームはチーム対抗でわいわいと競ったり、クラス全体で盛り上がったりすることもありますし、個々人の作品作りに入っても互いに議論したりフィードバックをし合ったりと関わり合いもたくさんある。個人ワークとグループワーク、全体ワークを交互に繰り返すことで、さらに探究が深まるように設計しています。

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(同級生はもちろんのこと、大学生メンターやときには保護者の方々を巻き込んで、一緒に学びを深めます。)

【共通項6】プログラムに余白がある
プログラムの大きな流れはもちろんしっかり作り込んでいるんですが、その枠の中でどれだけ子どもが自由にのびのびとやりたいことを実現できるか、という余白の設計を重視しています。だから講師も、授業の終盤にどんなアウトプットが出てくるのか、子どもたちがどんな反応をみせてくれるのかわかりません。答えはその場にいる参加者みんなでつくりだす、という化学反応を楽しむ姿勢がプログラムにありますね。

ー 授業で身につけた技を日常生活でも生かせるっていうのがいいですよね。学びが役に立つ実感が湧いて子どももどんどん探究したくなるだろうし

「なりきりラボ」「おしごと算数」に込められた想い

ー 最後の質問なんですが、「なりきりラボ」「おしごと算数」に込められている想いを教えてください。今この時代に、なぜこのプログラムなのかということも含めて。

いわたく:一番は、自分のワクワクにしたがって夢中になって学んでほしいということ。加えて挙げるとしたら、学びを学校や科目に閉じたものにするのではなくて、社会につなげてあげたいということと、自分の将来につながる、自分がどう生きていくか考える土台となる学びを体感してほしいということかな。

価値を出してこそ仕事だということ、それがとても刺激的で面白いということを子どもたちに伝えたいんです。私自身、これまでにたくさんのプロフェッショナルに出会って刺激を受けてきたからこそ、自分も面白い仕事をしよう、楽しもうと思えるわけで。仕事に対する辛い・つまらないイメージを払拭して、その魅力を教えたい。

おしごと算数ではさらに、算数嫌いを減らしたいという願いもありますね。自分自身は子どもの頃から算数・数学が好きで、ほとんど趣味のようなものだったんですね(笑)。逆に、なんで算数嫌いになってしまう人がいるんだろうと考えた時に、算数を学ぶ意味を十分に伝えられていないことや、反復学習を中心とする学びになってしまっていることが原因なのかなと。であればアプローチを変えればいいわけで、個人的には「おしごと」×「算数」の掛け算は、学びの発明だと思う(笑)。

ー たしかに、その掛け算は他で聞いたことがないですね(笑)。

「自分のワクワクにしたがって夢中になって学んでほしい」という願いにとても共感しました。子どもの頃からそんな姿勢で学べたら、自分の好きなことや得意なことはもちろん、嫌いなことや苦手なこと分かるだろうし、試行錯誤するうちに自分が将来なにをやりたいか、ということも自然とみえてくるように思います。

さて、インタビューも長くなりましたので、今日はここまで。ありがとうございました!


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