BASARA(田村由美)の浅葱について書く

・田村由美さんの漫画「BASARA」を読了済みの人向け
BASARAに出てくる浅葱というキャラクターについて、140字フルのクソ長ツイートをTwitterで連投していたものをnoteにまとめる。

■朱理コンプレックス

浅葱には朱理に対する根強いコンプレックス、朱理コンプが始終あったと思う。朱理のことが嫌いだと何度も言いながら、朱理が自刃しかけた際に助けたり(そのあと奴隷として売り飛ばしてるけど)、朱理の片腕が柊に飛ばされたときなんか、あの場にいた誰より号泣していた。

そういうのを見ていると、
浅葱は朱理のことを、単体では嫌いじゃなかったんじゃないかな。そこに柊先生からの評価や銀子からの贔屓が絡んでくると、「比べられた!!!僕はアイツと比べると劣ってるんだ!!!」という劣等感、憎悪みたいなものが芽生えてしまうのですが~…。

柊先生が朱理を「心技体すべて揃っています^^」みたいなこと言ったあとに、浅葱は?→「浅葱様は技のみかと…」て本人を前にして言われたらまあ普通にショックだよね。

ただあのときの柊先生の評価も完全に正しくて、
浅葱はそもそも情緒が不安定というか、メンタルがょゎょゎで、昔の浅葱は特にそうで。そのときのテンションによって出せる全力の範囲が大きく変わってくるタイプというか……。調子が良いときと悪いときの振れ幅がデカイんだよな。
別に、調子が悪いからって凡人に劣るような剣技ではなく、調子が悪くてもそこらの奴には負けないし、調子が良ければもう誰に負けない! て感じだったんだろうけど、柊先生の目にはその””剣技にあからさまに影響するような不安定なメンタルそのもの””が不可として映ったんじゃないかな……。

それを、常に100%が出せて、かつ「やる!!」と思ったらすぐにそのテンションを作れる朱理と比べると、まあ確かに心技体としての心はないかもな、という気にはなる。

体は体で、病弱で二十歳まで生きられないと言われてて……。

とにかく朱理に悪気はないあらゆる面で、浅葱は朱理と比較され続けたり、朱理自身の豪快で不遜な振る舞いも、知らず知らずのうちに浅葱を傷付けることが多かったんだろう。桃の件しかり。

繊細だからよ、浅葱様は……。

朱理が柊先生に腕飛ばされたときの号泣も、あの絶対に追い越せない朱理が自分の手の届かない(自分の力の及んでいない)ところで絶対ではなくなってしまった、という絶望、喪失感みたいなものがあったんじゃないかと思う。ここは解釈が何通りもありそうなので、あくまで個人の意見なのですが……。

浅葱は朱理を見ていると劣等感や敗北感が煽られて苦しいから嫌いだったけど、同時にそのすべてに憧れてもいて、だからそういう意味では本当に好きで(好きというか絶対的な存在で)、それが失われてしまった、欠けてしまったと感じてボロボロに泣いてしまったと……。そう見えました!!

だからこそその喪失感に対して、熊野組が「あの男は何も失ってない」と言葉をかけたんじゃないかなと。

そしてもう一つ、これは時間が経ってから思ったことだけど、
浅葱は柊先生に「技のみ」と言われていたことから、ずっと自分には技しかない、あとは見た目の美しさくらいしかないと思ってきた。逆に言えばそれだけが自分のアドバンテージ、突出したところであって、自分の価値はそこにしかないと思ってきた。

言っちゃうと浅葱は剣をふるう腕とその完全な美貌を失ったら自分には何も残らないと思っていたんじゃないか。

それを朱理は失った。覚悟のうえで失い、しかもそのうえで強く気高く、なおかつ何も失ってないように見える。剣を振るうに必要な片腕も(技)、五体満足で完全だった肉体(心技体の体……)も失って、それでも何も欠けてない。

泣いちゃうな~~~~浅葱!!! 自分にとってはそれがすべてなのに、朱理にとってはそうじゃないんだもんな。自分がこだわり続け、憎むほど強く妬んだものたちは、本人にとっては失ってなお誇りを失わずにいられる、ただの「自分の価値のほんの一部」でしかないんだ!!! と思ったら、それは泣いちゃうな……。

だから結局、朱理がたくさん失っても泣いちゃうし、失ってなくても泣いちゃう……困ったね…。困ったちゃんだよ浅葱様はよ……。群竹さんいつも浅葱のフォローありがとう(?)。


■最終巻付近の浅葱まわり

まず群竹さんの存在がデカい。デカすぎる。群竹さん……浅葱のそばにいてくれてありがとう。浅葱にとって群竹さんみたいに、誰かの命令ではなく「今 蘭丸を斬れというなら斬ります」「浅葱様の赴かれるところに 私はついて参ります」と言ってくれる人間の存在ほんとうに大事だよ。
浅葱のそばに生涯群竹さんがいてくれることが救いだよ……よかったね…。

浅葱が柊先生を斬るページ本当に何度でも言うけど信じられない美しさじゃないですか? 静かな湖面に雫が落ちる水音が聴こえるようですよ。それはそれとして銀子さまに捨て子COされた浅葱が城とともに落ちようとしたとき群竹さんが黙って俯いたの、二人とも死の覚悟ができすぎている。
生命に執着をしろ。

あそこで浅葱の足が動かなそうになったとき群竹さんはじっと跪いて運命をともにする覚悟キメて、聖さんとなっちゃんは熊野に来い!!!て言ってな~〜どっちも浅葱を思う気持ちなんだよな……形というか~発現のしかたは違ったけどどっちも浅葱の心を尊重していたので……。

尊重の形が主従だったか仲間だったかの違いというだけなので……あそこで群竹さんが何も言わなかったことも浅葱はずっと覚えてると思うよ、あのときお前は僕と一緒に死ぬ気だったの、ていつか言うと思うし群竹さんも真顔で「はい」て言うと思う……。馬鹿だねて言うよ浅葱は……浅葱の馬鹿だねてアリガトだから…。

群竹さんは浅葱の唯一無二の本当の意味での従者だけど仲間ではなくて…なので聖さんとかなっちゃんみたいに"生きろ"は言わないというか……。浅葱という月側の人に仕える群竹さんもまた月側の人で、二人とも月なので……。

タタラ軍にいるときは月側だった聖さんが、浅葱にとっては間違いなく太陽側の人間だったのは感慨深い。

浅葱は良くも悪くも素直というか、染まりやすいんだろうな。あなたは高貴で美しい蒼の王よと言われればそうあろうと努力するし、浅葱は頼りになる仲間だよて言われたらモチベ上がっちゃう。ので、お前は狡猾で計算高いと言われたら、そうだよ僕の得意分野だからねって言っちゃう…………。

浅葱のことでちょっといい感じにまとまりそうだった朱里とタタラが若干ぶつかるのも良かったよな!?? 浅葱にあの口論みてほしいもんな。
「今の浅葱は違うよ、赤の王」
「あなたにはわからない」
「ずっと一緒に戦ってきた大切な仲間だ!」
これ浅葱に聞いてほしい~〜!!

浅葱にとって、タタラが朱理に上記のことを大きな声で言って、むむむ…!!!て顔するのって嬉しい反転、すごく複雑なんじゃないかな……。

浅葱は自己評価が高いようで常に低めなので、
タタラが浅葱迎えに一人で行ったときも、あれだけ大事にされてまだ「タタラが僕に会いに 来るはずが」と思ったんだよな浅葱……来るよ!!!来るだろ!!来るだろどう考えても!!!お前めちゃめちゃ大事にされてるよ自信持てよお前めちゃくちゃ良い奴だよ

あと、昔読んだときは浅葱が更紗に恋してたと思って失恋しちゃったね…て感じてたけど、いま読むと浅葱は97%くらいはタタラに用があったんだな……朱理とかタタラとかに用があって……あれを失恋というなら浅葱は朱里にもタタラにも失恋してたよな。

しかもそのあと朱理からも「同じ時代に生きてよかった」「頑張れ」て言われるんだよな……浅葱は振り向かないけど…思ったよなぁ!??お前にそんなこと言われるなんてって思ったよなあ!!浅葱!!!朱里に頑張れって……しかも柊先生とこのあと戦うってときに頑張れだぞ、信頼だよ〜😢😢😢

■その他 感想

時系列かなり戻るんですが、
浅葱が朱理に向けるクソデカ感情と揚羽が四道に向けてたクソデカ感情は種類は違うけど質感が近いと思うので、そう考えるとやっぱり、浅葱や揚羽は月側の人間で、朱理や四道、タタラは太陽側なんだよな……。誰かのためのほうが頑張れる人間と、自分の「これ」と思うもののために頑張る人間……だから網走編ね……好きですね……。

ナギが浅葱に「あなたはもう少しわがままになるべきでしょうね」つって浅葱が「僕はわがままだと思われてると思うけど?」て返すの、浅葱が、自分は周りにそう思われてるって思ってるんだな…て思うから最高なんですよ。浅葱は気分屋でひねくれてるけど常に誰かに囚われているので…。

崖から馬で駆け下りてって言われて逡巡してたときも、結局は信用されるためとかじゃなくて矢をくらったタタラの「わぷ」て顔を見て体が動いた感じに描写されている。お前~😭😭😭お前はずっと信用されたかったんだよ、ずっと信頼と期待に報いたかったんだよ。報いることができたね……。

そのあと知恵熱かなにかで寝込んでるときに「水〜」「桃食べたい」とか言って「もも?鳥の?羊の?」「桃も知らないの?田舎者はこれだから」みたいなこと言うところもめちゃめちゃ""良い""よ……。

最後に、
ハヤトが「浅葱ってうるさいね」って言ってるところ好きすぎます。

浅葱のうるさいところを知ることができるのは浅葱と親しくなった人間だけなので……。””うるさいと思われている浅葱””という存在そのものが、なんというか許しと甘えの証明って感じで、救いですね……。

この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?