稽古場日誌 #06

「明後日の方向」のnoteにようこそ!『赤目』演出助手の植田です。
せっかく演出助手が書いているので、今日はスタッフワーク関係の話をぽつぽつと書いていこうと思います。(微ネタバレ)

持続可能な演劇

今回の公演は、大きなセットを作ったり新しい衣装を公演のために作成したりせず、「あるものでいかに面白いものを作るか」を目指して作っていました。これはコロナ禍で公演中止になる可能性が通常よりも高いことから、万が一中止になった際のリスク回避という意味もありましたが、「明後日の方向」の目指す『持続可能な演劇』にもつながることだと思っています。
演劇の公演をすると大きなお金がかかる。そのせいで演劇の持続可能性が低くなっているのであれば、それはもったいない。でも演劇って俳優と戯曲が面白ければ面白いはずで、そこにプラスαで何かがあったらもっと面白い。そのプラスαが何かを「明後日の方向」を通じて探りたい、と以前世莉さんが言っていたのを、振り返りをしながら思い出しました。

じゃあ具体的に『赤目』ではどんなことをやっていたのか。
例えば今回の舞台は、平台でメインのステージがあるのみで、あとは木箱とハコウマがいくつかという、とてもシンプルなものでした。
個人的には舞台から客席まで続く養生テープのグリッドがものすごく好みで、こんなシンプルな舞台なのにバチバチにかっこいいの袴田長武さんすごいな……と思いながら毎日眺めていました。そうそう、配信だとわかりにくいと思いますが、今回の舞台(と客席)は劇場に対して斜めに配置されていたんですよ。これもかっこよかったな……。

衣装も、「自分たちのクローゼットの中から、自分が思う、本役のパーソナルな部分をフィーチャーした服」というコンセプトで役者本人に持ってきてもらうところから始まりました。そこから全体のバランスを整えたりはあったものの、原則衣装はこのコンセプトで選んでいます。座組の中で手持ちの服であれだけ素敵な衣装が揃ったのもすごいし、それを発案して成し遂げてしまう衣装の及川千春さんはかっこいいなと思いました。
正直「手持ちの服だけでやる」と言われてもあまり具体的なイメージがついていなかったのですが、及川さんとの最初の衣装ミーティングで一気にイメージができて、すごくわくわくしたのを今でも覚えています。

もちろん、最低限のもので面白いものを作る、という方針は照明さんなど他のスタッフさんも同様です。

iOS の画像 (2)

稽古場のはなし〜ムーブメントと音楽〜

せっかくスタッフさんの話を書いたので稽古場の話も。

『赤目』ムーブメントを担当してくださった小林真梨恵さん。今回は主に紙芝居・人形振りのシーンや動物・植物・農民の時の身体の使い方などを見ていただきました。
特に紙芝居シーンは、台本にどんな絵かの指定があります。ト書きを読んで役者がやってみて、それを真梨恵さんが最終調整する……という形で作っていったのですが、どんどん形になっていく過程がとても面白く、個人的に真梨恵さんが稽古場にくる日を楽しみにしていました。

そして音楽の後藤浩明さん。直前まで2公演本番が続くというハードスケジュールの中、実際に音楽と役者が合わせたのは劇場に入ってからでしたが、事前の綿密な打ち合わせからめちゃめちゃ面白そうだなと思っていました。音楽については後藤さんご自身が『赤目』おしゃべり会(振り返りの会・動画)その続きのnote👇で色々語ってくださっているので、ぜひご覧ください。音楽隊(後藤さんと藤田奏さん)は本当に二人でやっているのか疑いたくなる量の楽器を使っているのに全然うるさくない(というと失礼かしら)、ものすごく素敵な音楽でした。

ちなみに後藤さんが初めて稽古場にきて、シーン(確か2幕)を見終わった7秒後くらいに「うん、できました」と言ったもんで稽古場がどよめきましたね……(実際の音を聞くのは小屋入りになるわけですが)。

ムーブメントも音楽も(&演出も)、実は本番中にもどんどん修正・変化していったのですが、それもまた実験を繰り返す「明後日の方向」らしいな、と思いました。

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(撮影:保坂萌)

(終)

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「明後日の方向」について、主宰・黒澤世莉が語る記事はこちら👇

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