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国道489号旧道 1 山口県周南市

国道489号は、周南市大神の国道2号線との分岐(永源山公園があるところ)を起点に、山口市旧阿東町エリアで国道9号に至る、延長44.6kmの一般国道である。

非常に大雑把に言えば、山口県南半分を南北に貫く道で、以前紹介した裸隧道は国道489号北側、佐波川ダムのダム湖である大原湖を通るあたりの道路脇にある。中国山地を縦断していくので一部に険しい区間がある(こちらのデータによると改良率=総延長に対する道路構造令に適合した部分の割合は72.4%)が、走破自体に特段の支障はない道路である。私もよく利用している。

今回のご紹介は国道489号の南側、起点である周南市大神の交差点からわずか5kmほど北西の津浦ヶ垰に至る国道489号の旧道である。
現地の地理院地図はこのとおり。

真ん中で特に目立っている南北に走る道が、現国道489号(以下「現道」)である。現道は神代川右岸を地形をものともせず直線的に登り、大きくカーブして左岸に回り込んだ後、「津浦ヶ垰隧道」というトンネルで峠を越えている。

扁額と銘板の写真はtunnel web様からお借りしました。

津浦ヶ垰隧道は昭和59年2月竣工のトンネルである。取り立てて特徴あるトンネルではないが、地理院地図には「津浦ヶ垰隧道」、扁額には「津浦ヶ峠隧道」、工事銘板には「津浦ヶ峠トンネル」と記載されており、名称の食い違いが見られる。「隧道」か「トンネル」か?「垰」か「峠」か?実に錯綜していておもしろい。
時代を考えれば「トンネル」であろう。「峠」と「垰」はほとんど同じ意味の異字体と解されるので、一般に馴染みのある峠を採用し、「津浦ヶ峠トンネル」を正式名称として推したい。

トンネルについてついつい語りたくなってしまうが、本題は旧道である。

再び先程の地理院地図に戻る。地図真ん中あたりの「神代川」と記載があるところに、軽車道(幅員3m未満の車道)の記号で描かれた道路がある。現道が神代川右岸を登ってから左岸に移るのと対照的に、左岸を登ってから大きく蛇行して右岸へと移っていく道が見えるだろう。
慣れていない人にも分かるようにハイライトするよ。

この緑でハイライトした道路が、津浦ヶ垰へ至る国道489号の旧道である。地図から分かるとおり、旧道自体は「津浦ヶ峠トンネル」と並走する形で続いているのだが、注記したように峠に火葬場があり、トンネルの西側坑口から分岐して火葬場に至るまでの道は現役バリバリの道である。なので、実質的な旧道区間はハイライト部分に絞られる。

画像は今昔マップ様から。

昭和45年発行の地形図との比較。現在の地図では軽車道の旧道が、県道の太さの車道として描かれているのが分かるだろう。当然、現道はまだ影も形もない時代である。この旧道が津浦ヶ垰を越えて島地地区へ向かう貴重な交通路であったことが見て取れる。

ところで、現在の旧道を地図で眺めていて、誰もが自然と気になってしまう部分があると思う。
そう、ここ。

道がない・・・

本来ならここは神代川を渡るための橋がなければならない部分だろう。古い航空写真ではちゃんと道はあったのだ。

1960年代の航空写真ではこんなにも鮮明だった道が今どのようになっているのか。ほぼ間違いなく、現在の地図では道が描かれていないこの「欠落部分」の攻略が探索のハイライトとなるだろう。
気になるよね、「欠落部分」。私だけかな。まあ、いいや。
緑でハイライトした旧道を、下から登って上り詰めて、火葬場まで歩く。ことを目指す。歩けたらいいな。無理かもしれない。

ピクニックはこの案内板から始まる。

この先通り抜け出来ません 周南市

つづく


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