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オール讀物12月号のこと

 いらしてくださって、ありがとうございます。

 何年かぶりで雑誌を「発売日」に求めてまいりました。
 オール讀物12月号(文藝春秋:11月22日発売)です。

 前号(11月号)を、『絶対、「小説家」になる!』という特集に惹かれて購入したところ、村山由佳さんの連載小説『PRIZE─プライズ─』に出逢い、こちらがとても面白く、続きが気になっての「12月号発売日ゲット」となった次第です。

 過去記事をお読みくださった方にはくり返しになりますが、この小説、直木賞を切望する作家の女性が主人公で、業界の内情を散りばめつつ、彼女の作家としての仕事ぶりや立ち回りが鮮やかに描かれており、小説を読むのも書くのも好きという方には、たまらない作品でございます。

 さて、12月号の『PRIZE─プライズ─』も、芥川賞を熱望した太宰治の一連の騒動など、作家界の伝説にも触れながら、現役作家さまと思しき方々(ビミョーに名前は変えてあります)のプライベート描写などもあり、主人公が登場しない場面も興味深く。

 けれどやっぱり、もの凄いのが主人公の天羽カインなのです。
 この連載、前号の連載第二回からしか読んでいないのですが、その回と今号の第三回を読んでみて、どうやら彼女はサイコパス的な性質を色濃く持っているらしく。
 見惚れるような笑顔から、瞬転、修羅のような形相で編集者に迫りくる描写などは、文楽人形のガブを(ご存じない方は、文楽・ガブでぜひ検索を)目の当たりにしているようで、背すじが寒くなりました。

 どうして彼女はこんな性格なのか、その謎は、私が未読のままの連載第一回で明かされているのか気になってしまい。本作の単行本化までは待てそうにないので、連載初回を掲載する「オール讀物9・10月合併号」の取り寄せを書店にお願いしてしまいました。
 
 それにしても主人公の性格の、そのイヤな一面が本当に苦手で。もしもこの作家が実在していて、SNSなどでその性格の一端を垣間見てしまったら、絶対に作品を読もうとは思えないレベルです。
 毒がない作品は物足りないと仰せになる方もおいでですが、私はこういうタイプのキャラクターを読むのはしんどくて。にもかかわらず、彼女がこれからどう立ち回り、そして最終的に渇望する直木賞受賞が叶うのかを追いかけずにはいられない。
 今後の展開から目が離せない作品のおかげで、連載終了まではオール讀物を発売日に買いに行くことになりそうです。

 12月号には、東野圭吾さんのガリレオシリーズの短編も掲載されています。たまたま登場する事件現場がかつての散歩コースだったので、その描写などから、「もしかしてあの辺りを東野圭吾さんが歩かれたのかも」と想像したりして、二重に楽しめました。

 THE ALFEE高見澤俊彦さんのインタビュー記事「神様の話をしよう」や、現在開催中の「陰陽師とは何者か」展(2023年10月3日~12月10日:国立歴史民俗博物館)に合わせた企画『「陰陽師」が好きすぎる!』では、大好きな夢枕獏さんを中心にした座談会記事もあり。

 また、第13回本屋が選ぶ時代小説大賞の特集では、候補作の中から大賞が決定するまでの各選考者の方々の評価が読めまして、それぞれの注目ポイントの異なりが興味深かったです。
 この賞の候補作は、歴史時代小説に詳しい文芸評論家お三方が選定した「今年のベスト10」の中から、複数の推薦があった四作が選ばれた、ということですが、その選定の基礎となった三氏のベスト10も掲載されておりました。
 まさに文学賞は「選者の好み」が色濃く反映されるものだと実感させられ……その好みの差を凌駕して大賞を獲ることの難しさを思いつつ。惜しくも受賞を逃した推し作家さまへ、そっと胸の中でエールをお送りしたのでありました。

 雑誌を発売日に買いに行く。
 そんなワクワクを久しぶりに与えてくれた月刊誌『オール讀物』、今回も小説にエッセイ、特集記事と盛りだくさんで、楽しませていただいております。これ一冊で、これまで読んだことのない作家さまの読み切り短編に出逢えたりもして、内容も濃いので数日間はたっぷり楽しめます。
 個人的には南伸坊さんによる扉絵のタヌキの「こんな顔してませんよ」というつぶやきがツボで、仕事から帰った家人に「これ見て見て」と玄関先まで本誌を持っていったほどです。
 この扉絵だけでも(そんなこといわずに小説『PRIZE─プライズ─』などもぜひ)、書店でお見かけの折はご覧になってみてくださいませ^^

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 最後までお読みくださり、ありがとうございます。

 焼き芋フェスが開催されているようですが、出かけることままならず。ご近所スーパーのシルクスイートねっとり系焼き芋をいただきつつ、ホットコーヒーで一服する午後です。
 どうぞみなさまもあたたかくお過ごしになれますように(´ー`)ノ

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