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[Short Story] 留守番電話 ≪No.1≫

私が初めて性的に快感を得たのは、3人目の彼との行為でのことだった。

彼とは所謂、セフレの関係だったけれど、体の相性が良かったようで、その体験をした時は、頭の中が真っ白になるというのはこの事か、と思った。

「なんで泣いてんの?」

彼とのクライマックスでは、気が付くと涙が出ていた。
悲しいわけではないのに。

彼に対して恋愛感情がまったくなかったかというと嘘になるけれど、しばらく連絡がなくても気にならない相手だった。

というのも、私はそのころ仕事が忙しくなりかけていたし、彼にも不特定多数の女がいるようだった。

***

彼と知り合ったのは、イベント帰りに友だちと寄ったバーのカウンター席で隣合わせになり、話が盛り上がったことがきっかけだった。

飲んだ勢いでそのままお持ち帰りされる、王道パターンだ。


「そこもっと……」

不思議とバーで知り合った彼には、気兼ねなく言うことができた。

その夜以降は、会うときはどちらからともなく連絡し、時間が合えば私が彼の家を訪れる関係だった。

***

しばらくして、私はいよいよ仕事が忙しくなり、彼からの電話を折り返せない日が続いた。
写真がいくつか添付されたメールも届いていたけれど、彼もバイクで旅をして楽しんでいるようだった。

お互いすれ違いはあるけれど、そのうちまた時間が合うときに会えれば良いと思っていた。

やっと仕事が落ち着いてきたころ、私の誕生日を迎えた。

その日は土曜日だったので、昼近くまで寝ていたが、玄関のチャイムに叩き起こされた。

「お届け物です」

花屋からだった。

23本の真っ赤な薔薇に、1本だけ白い薔薇が混じる花束で、付いていたタグの送り主には、彼の名前が書かれていた。


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お礼を言おうと電話をかけたが、出たのは女性だった。
スマホのアドレス帳からかけたので間違うはずはないのに、何度かけても女性にかかってしまう。

不審に思い彼宛にメールを送信してみると、送信エラーになってしまった。

思い当って、留守番電話を聞いてみた。
メッセージは3件残っていて、すべて1ヶ月ほど前のものだ。

3件のうち2件は彼からのメッセージで、1件目は食事に誘う内容、2件目は思いつめた口調で、かけなおしてほしいというものだった。

留守番電話の3件目は、彼の父親を名乗る男からだった。


≪ No.2 に つづく ≫


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