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音のない年、2020年

むかし母が、お皿を洗いながら歌っていたのを思い出して
ふと、口笛を吹こうとしたら、
口がうごかなくて、口笛にならなかった。
かすれた音が情けなくてやめちゃった。
音のないくらしが、普通になってしまったんだな。

大掃除というほどじゃないけれど、部屋を片付けて、
アレクサに言って音楽をかけた。
でも、聞こえてくる音がこころにぶつかって、辛くてしかたなかった。
入ってくるな、入ってくるな、って身構えて全身がざわざわする。
耐えられない、くるしい、やめて。
音をすぐに消してしまいたくなったけれど
しばらく我慢して聞いていたら、急にふと何かが綻びるのを感じた。
悲しすぎない曲の、ゆったりと流れるリズムやコードが、
わたしのカラダにじんわりと染み込んで、
力の入っていた顎や肩が、少しづつ少しづつしびれてくる。
胸の奥の、カチカチになったなにかが、かすかに震える。
そして、わきあがるものをごくんと飲み込んだら、
目の奥が熱くなって、涙が滲んだ。

人には感情がある。
誰に隠す必要もないものなのに、出してはいけないと
今年は1年中思っていたように思う。
歌うことなんて、いつやっても良かったはずなのに
1年間歌わずに過ごしてしまった。

笑っても笑えなくて、泣いても泣けなくて、
自分がまるでいないようにして、1年過ごして
機械のように、最低限やらねばならない判断や行動だけを
誰かに怒られないように、やってた。
ごめん、そんな自分だったと思う。

2020年、今年は辛かったって
1週間前まで口にできなかったけれど
今なら分かる、辛かった。辛かったんだよ。
頑張ったね、って言ってあげられるほど頑張れなかったし
もっともっときっとみんなは頑張っているし
情けない自分を目の当たりにして、がっかりもしたけれど

去年のわたしより、少し人の痛みが分かる人間になった。
去年のわたしより、ものごとを良い方向に見る力がついた。

2020年、後少し、もう終わってくれていいよ。
来年は、今年より良い年になるといいな。
新しい年がまたくることに、感謝して。

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