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おじいちゃんの、優しい「ばいばい」

いろいろなところに散らばっている息子の成長や子育て日記、少しづつまとめたものです。時系列ではないかもしれません。また途中で思い出した内容も綴ったりする予定です。※息子は2005年9月生まれです。

2006年07月04日

私は…あんまり怒らないで大きくなったと思う。
感情自体はもちろん何度も持っていたと思うけれど、物心ついたときから、怒りの感情は押し殺すべきものだと思っていて出してこなかった。

だから、初めて怒りを表出させた時のことをすごくよく覚えている。
高校生くらいの時、名古屋のおばあちゃんの家でおばちゃんに対して怒った。おばちゃんはかなり強い個性の持ち主で、家中みんながそのおばちゃんに振回されるような状況で、それで、おじいちゃんの心臓病のことをなんだかひどい表現をしたから、あったまきて、怒った。

怒り方を知らないので、
ドアをばーーーん!と蹴って閉めて、でも言葉にならなくて、大きな声で「いい加減にして!」みたいなことを叫んだ。

結果、
私の行動に動揺したおばちゃんが、おばあちゃんを責めて、お母さんを責めて(教育が悪い!みたいな感じで)、まず最初に、おばあちゃんがまいってしまった。

「asaちゃん、なんてことをするの…そんなに乱暴者だと思わなかった。」

いやいや、私はおじいちゃんをかばったんだよ…。
理不尽な思い、重い重い、家の中の空気。
お母さんも、暗い顔をしている。

あ、まずいことしちゃったな…。
と思う気持ちと、
変に清々しい気持ち(私、怒れるんじゃん!みたいな)があって、
でもぜんぜん状況を改善できる気もしなくて、
帰る!というおばちゃんに張り合う気持ちで、次の日の朝一番にひとりで東京へ帰ろうと思った。

いつもなら見送りに来てくれるはずのおばあちゃんは、ふうん。という感じで見送りには来ず。なんか淋しいな、と思って一人で家を出ようとしたら、おじいちゃんがいつの間にか帽子をかぶって、

「ちょっとまあ、そこまで」

? 結局おじいちゃんは何もいわず
私と一緒に名古屋駅まで一緒に電車にのり、いつもなら改札で別れるのにそのまま切符をかってホームへ。一人で家に帰る私を、静かに見送りに来てくれた。

「おじいちゃん、ごめんね」

やっと、ひと言そういうと

「ええ、ええ、気にせんでええ」

私の目を見ずに、来る新幹線を気にしながら、変なこと言いなさんなと話題を変える。新幹線の空席を窓から探して、

「asaちゃん、ここあいてる。ここに急いで行きなさい。」

心配性のおじいちゃんはそういってわたしを急かし、
座ると、窓の横でおじちゃんはきょろきょろしている。
発車を待っているのか、もしかしたら照れ屋のおじいちゃんだから、その変な間にどうしていいのか困っていたのかもしれないね。
電車が動き始めたら、
ばいばい、
手をぶらぶらさせて、にやにやして、そのまま向こうに、小さくなった。
とっても優しい「ばいばい」だった。

おじいちゃんが亡くなって、それから生まれた息子。
息子の名前は、おじいちゃんの名前から譲り受けたものだ。

その息子が、最近「ばいばい」を覚えた。
手をぶらぶらさせて、「ばー」と言う。

なんだかね、その時の、おじいちゃんの「ばいばい」に、
ちょっと似てるんだよ。


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