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母としての虚勢

いろいろなところに散らばっている息子の成長や子育て日記、少しづつまとめたものです。時系列ではないかもしれません。また途中で思い出した内容も綴ったりする予定です。※息子は2005年9月生まれです。

2006年03月15日

今日会社から直行して保育所に息子を迎えに行ったら、
いつもの保育士さんが息子を抱っこして、あやしていてくれた。

「ただいま」(←息子へ)
「いつもありがとうございます」(←保育士さんへ)

そういって近寄ると彼女が、

「あ、お母さん来たよ。
 どうする?お家帰る?それともずーっとここにいる??
 ほらほら、どーしますかあ?」

息子はにっかーと笑って、
ぴったりと抱きかかえられて、

「お家帰る??」

そう聞かれている。
お家帰る?ってさあ、帰るよー帰るに決まってるじゃん!!
でも息子が保育士さんに抱かれてニコニコしてるから、
半分出した私の手は、その先にのばすことができない。

あんな風に、ぎゅっと抱きしめてもらって、
ああ、大切にしてもらってありがたいなあと、と本気で思う。
私のいない時間、私のかわりに、息子を、愛してくれている。
息子に必要な人だ。いい保育士さんだ。
ありがたいと本気で思って、
なのに私は、なんだか笑顔がひきつってしまって。

なかなか息子を離してくれない彼女の腕から、
急いた気持ちをひた隠しにしながら
一生懸命笑顔をつくって、はぎとるようにして返してもらった。

「お家に帰ろうね。…お家に帰るよ。」
「お家で…お家で…」

それで私はそこで、
何か、家でしかできない何かを、
すごく言葉にしたいと思ったのだけれど、
何も思い付くことができず。

「お家に帰るんだよ。」

靴下を履かせるのを手伝おうとする手を
「ああ、大丈夫ですよ」と素早く制して、
「本当にいつもありがとうございます。」
「また明日よろしくお願いします。」

と笑顔を作り、

「ほら、ほら、ありがとうは?」

まだしゃべれない子供にそんなことを言って、
母としての虚勢をはり、

本当に本当に、ありがたいと思っているけれど、
嫉妬に似たぐるぐるとした想いも迫り上がって。
保育所の門をくぐってぎゅっと抱き寄せると、
保育所のにおいが移ってしまった息子の頭。

…あーあ。なんとも。
もう、あまりにも自分勝手な、私。


2006年03月01日

今日は雨です。
でも鬱々とした気分の理由は別にある。

寒いけれど、ほどよくぬるく。
雨は雪にならずに道路に水たまりをつくる。
バリウムみたいに白くて重そうな雲が水たまりに映って、
白くぬめっと広がる、先に続くみち。

白いペンキを塗ったみたいなテカテカの道路も
結構悪くないなあと思いながら、

…この先の方から、息子が歩いてくればいいのにと、
ふと、考える。
保育園を出てくる時の息子の顔が目の前にちらついて、
のどの奥からじわじわと染み出てくる“恋しさ”で、
少し、視界がゆがむ気がする。

金曜日、彼は、寝返りをするようになったみたいです。
私は、まだ目撃したことがないけれど。

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