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拝啓、あの頃の東京ディズニーリゾートへ。

私がこの界隈に足を踏み入れたのは、今からおよそ5年前、東京ディズニーリゾートが35周年を迎えた頃であった。

…どうして私は、あれほど東京ディズニーリゾートにハマったのだろうか?

そう自らに問うたびに、私の前頭前野は異なる解を提示してくる。

ある時は、「ミッキーマウスのカッコよさや、ミニーマウスの可愛さ」と答え、ある時は「東京ディズニーリゾートの洗練された世界観がもたらす現実逃避的な効果」と答え、ある時は「エンターテインメントを介して感じられるメッセージ性」と答える。

でも、そのどれが正しいかとか、そのどれが1番なのかとか、そんな事よりも私の頭を悩ませるのは、こうして何度も自らに問わなくてはならないパーク状況であった。

私は数々のDオタ達のオタク歴からすれば、まだまだ新参者ではある。東京ディズニーリゾートの歴史はご存知の通り40年もあるのだから。

それなのにも関わらず、この5年という、その長い歴史からすれば一瞬にも満たない間で、私は何度も「改悪」を経験した。

ここでいう「改悪」とは、何も私にとっての「改悪」である。企業としては今期の営業益が最高に達していることもあるので、そういった面では申し分ないと言えるだろう。

私を熱中させてくれた、東京ディズニーリゾートの様々な「要素」。その要素が、この5年間だけで何度も失われた。

その度に、「もう少し前の声優さんに寄せた声の人に割り当てて欲しかった」「顔は変わらないで欲しかった」「ハーバーショーをもっと丁寧にやって欲しかった」「ファストパスやTodayを無くさないで欲しかった」「ステージショーをコスパ重視でやらないで欲しかった」「アトモスフィアを縮小させないで欲しかった」「ディズニー・プレミアアクセスは導入しないで欲しかった」「もう少しメッセージ性のあるショーパレを公演して欲しかった」「グランドフィナーレくらい、停止バージョンで公演して欲しかった」…等と欲求不満が高まりつつも、他にある「良い所」という妥協点を見出して何とかディズニー愛を食い繫いできた。

この傾向は、何も私に限ったことではないと思う。何年も東京ディズニーリゾート界隈に所属していれば、誰しもが自分にとっての「改悪」と向き合わなければならない瞬間がある。「ストームライダーを無くさないで欲しかった」「BGSをもう少し丁寧に扱ってほしかった」…。

ウォルト・ディズニーの名言「ディズニーランドは永遠に完成しない。この世界に想像力が残っている限り、成長し続ける。」は、過度なほど賞賛されている言葉だけれど、成長というのは、破壊と再生のもとに生じる。何かを生み出したいのならば、何かを犠牲にしなければならない。TDRがこれまで歩んできた華やかな歴史の影で、Dオタ達にとって大切なそれぞれの「何か」が犠牲となり、その度にパークのどこかで誰かが泣き叫んでいた。


先日、東京ディズニーランドを訪れた。
お目当ては、「ミニー@ファンダーランド」の鑑賞だ。

私は、TwitterからXへの移行に伴って、情報収集ツールとしての利便性が悪化したり、単にネガティブ情報が多くてSNS疲れしてしまうこともありDオタ垢へのログインをしばらく控えていた。従って、情報が少ない中このパレードに臨んだ。

何も考えず1stに地蔵した。パレード自体は良かった。ミニーちゃんの可愛さを前面に押し出した音楽・衣装。フロートを降りるシステム。

何を想っているのだろうか?

ただ、公演終了後、何となく2ndの様子を見に行った所、思わず唖然としてしまった。

DPAエリアの前で、豪華なパフォーマンスが行われていた。それどころか、2ndでは通常の曲に加えて、「イッツ・ベリー・ミニー!」と、「ミニー、ウィー・ラブ・ユー!」の楽曲がリミックスされているのではないか。

その後試しに3rdの様子を見に行くと、1stと公演内容はほぼ同じだった。

DPA自体は数千円でも、アーリーの時点で売り切れるので、実質彼らの座席にはホテル代込みの価値がある。
私が知らない間に、パークはここまで露骨にDPAを優遇していたとは…。

初めてDPAのシステムが導入されると聞いてから、既に微妙な気分にはなっていた。今まで無料で提供していたコンテンツに収益性を見出している部分に、どうしてもパーク内なのに資本主義的要素を感じなければならないからだ。だから、新規ショーパレや、新エリアなどの情報が出回るたびに、DPAに関する情報もセットで告知されるので、毎回嫌な気分にさせられていた。でも、今までは地蔵の競争自体が激しかったので、平和なパークのためにこれはこれでありなのかなとも思っていた。

だけれども、パレード内容自体を変えるというのは、あまりにもやり方が露骨すぎる。いや、企業としては正解なのだろうけれど、私が好きなパークというのは、パークに入ったらみんなが一緒に楽しめるかつての空間だった。

思わずため息が漏れてしまった。この5年で、私の人生を変えてくれて、あんなに大好きだったこの場所はこんなにも変わってしまったのか…。

私はディズニーに限らず、こういう時は一旦界隈から身を引いている。好きだと思っていたもので、嫌な気持ちになるのは辛いからだ。

35周年終了後の様々な「改悪」の時も、私はどうしても好きになれなくて一旦パークを離れた。ただ、当時は何だかんだ行く機会に恵まれて結局また別の部分でディズニーが好きになった。

今回も身を引こう、これでしばらくは「最後のイン」になるのかな。そう思いながら舞浜を後にした。京葉線から眺めた東京ディズニーリゾートの景色は、いつも漂わせてくれるノスタルジックな雰囲気と、あれほど好きだったパークがここまで変わってしまったという2つの意味で寂しかった。

でも、運命は私と東京ディズニーリゾートのどちらに味方したのかは知らないけれど、まさかの以前応募していた貸切パーティーに当選していた。物欲センサーというのはやはり存在するらしい。

もう一回だけ行ってこい、という運命からのメッセージなのか、もう一回だけチャンスをくれという東京ディズニーリゾートからのメッセージなのか…。


拝啓、あの頃の東京ディズニーリゾートへ。

35周年おめでとうございます。
何度でも言いますが、私の人生を変えてくれて本当にありがとうございました。あなたに夢中だった日々は、今でもかけがえのない思い出です。

「あの頃」から5年、パーク内では様々なことが起こり、「好き」という気持ちに素直になれなくなっている自分がいます。ごめんなさい。

でも私は、きっとまたあなたの元に戻ってくると思います。それは、「爽涼鼓舞」や、未来で公演されるであろう「クラブマウスビート」で使われている楽曲、「スパークリングサマースターズ」内の歌詞"Wherever you go, I'll be here, you know"のように、あなたはいつだって、千葉県浦安市舞浜でゲストを待ち受けていますから。

私は自分の好きという気持ち以上に、誰かがかつての私のように、東京ディズニーリゾートで生きがいを感じている姿を観るのが好きです。ですから、あなたがこれからもずっと、世界中のゲストを幸せにしてくれる場所で居続けることをただ祈っています。

…欲を言えば、もう一度だけ、あの頃の東京ディズニーリゾートに戻りたかったな。

敬具

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