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ディズニーシーであった心温まる物語【第1回】

こんにちは。あさ出版noteにお越しいただきありがとうございます。

 今年の9月4日で20周年を迎えた東京ディズニーシー。現在は20周年イベント「タイム・トゥ・シャイン」も開催されているディズニーシーですが、入場制限がかかり、なかなか行くことが難しくなってしまっています。そんな「東京ディズニーリゾート」であった、心温まる物語をお届けします。

 今回は、20年前にオープンを迎えたディズニーシーであった「冒険の始まり」というお話しです。

2001年9月4日

 2001年9月4日。
 待ちに待った日がやってきました。
 「東京ディズニーシー」のグランドオープンです。
 世界のディズニーパークで初めて海をテーマにした施設であること、東京ディズニーランドにはなかったビールやワインなどアルコール飲料の販売があること、大人をメインターゲットにしていることなど、情報が発表されるたびに、いったいどんな世界が広がっているのだろうと、ワクワクが募るばかり。
 歴史的瞬間を、しっかり目と心に刻みつけたい。
 そう思った僕たち夫婦は、万全な体制で臨むべく、前日から舞浜のオフィシャルホテルに乗り込みました。
 ところが、ベッドに横になっても、興奮で目が冴えてしまい一向に寝つけません。結局、ほぼ一睡もせず、しとしとと雨が降る中、開園の2時間前にディズニーシーへと出発したのでした。

 昨晩から雨が降ったりやんだりと、不安定な天候だったにもかかわらず、朝6時だというのに、ゲート前にはすでに長蛇の列ができていました(あとで知ったのですが、1万5000人を超える人が並んでいたとのこと)。
 上空には何機ものヘリコプターが舞い、地上では中継車がずらっと並び、あちこちで、タレントやアナウンサーが、いまかいまかとオープンを待ち受けるゲストにマイクを向け、インタビューをしています。
 
 「やっぱり、スゴイことなんだ」
 
 異様な熱気の中、ようやく列の最後尾にたどり着いた僕は、今日という日の重みをあらためて感じたのでした。
 
 本来の開園時間は8時の予定でしたが、予定を早め、7時半にゲートを開けるというアナウンスが流れたのを機に、人々が入場の準備を始め出し、一気に慌ただしくなってきました。

 僕も、気持ちが高まってきました。
 
 妻も同じらしく、開園までまだ30 分以上あるのに、手にはしっかりチケットを握っています。
 隣の列に並んでいる学生らしき女の子たちも、気持ちが高ぶっているのか、「ドキドキする〜」「やだ、緊張してきた~」などと、声をあげています。
 落ち着こうと空を見上げると、いつの間にか雨がやんでいました。
 「よかった」と思いながら、カサをたたんだ、まさにその時でした。
 
 「あ!」
 
 大きな声が聞こえました。
 声がしたほうを見やると、女の子がどこかを指さしてうれしそうに何か言っています。しかし、ヘリコプターの音がうるさすぎて、言葉が聞きとれません。
 すると今度はすぐ脇から、
 「虹だ! 虹が出ているよ」
 子どもの大きな声が聞こえました。
 「えっ?」
 その子の視線の先に目をやると、かすかですが、ゲートの屋根の上にうっすらと虹がかかっています。

 「ほんとだ、虹だ」
 「スゴイ!」

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 ビックリしました。
 そして、運命を感じました。
 なぜなら、東京ディズニーランドがグランドオープンを迎えた日も、オープニングイベントの直後、シンデレラ城に虹がかかったという逸話があるからです。
 ついさっきまで、はしゃいでいた隣の列の女の子たちも静かに虹を見つめています。
 
 妻も、カメラを持ってきているのに、写真を撮るのを忘れ、見入っていました。
 虹はすぐに消えてしまいました。
 その間、おそらく1分もなかったかもしれません。
 でも、僕にはそれが、ディズニーシーの立ち上げに尽力してきた人たちから、僕たちへの歓迎のプレゼント(ディズニーマジック)のように思えました。
 
 きっとシーも、たくさんの人を笑顔にしてくれるんだろうな――。
 
 そんなことを思っていると、アナウンスが流れ、ゲートが開きました。
 入り口では、船長姿のミッキーが描かれた青いフラッグ(旗)が、ゲスト1人ひとりに配られ、シーの中心地であるメディテレーニアン・ハーバーに続く通路の両サイドには、大勢のキャストさんがズラリと並び、温かな笑みを浮かべながら、手を振って迎えてくれています。

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 初めて見る光景に、さらにテンションが上がります。
 キャストの方に手を振り返しながら、ハーバーへ着くと、腕時計は7時45分になるところでした。


 「開園時間まであとわずかだね」 

 そう、妻に言おうとしたのですが、突然、音楽が流れ始めました。
 そして、海の向こうから4つの船が現れ、ハーバーに停泊したのです。
 メインシップには、ミッキーとミニー、ザ・ウォルト・ディズニー・カンパニーのマイケル・アイズナー会長兼CEO、オリエンタルランドの加賀見俊夫社長、ウォルト・ディズニーの甥のロイ・E・ディズニー氏、東京ディズニーリゾート・アンバサダーの四柳聡子さんが乗っています。
 他の船には、ドナルドやグーフィー、プルート、チップ&デールの姿が見えます。
 やがて音楽が止まり、静かに、厳かに、ディズニーシーのオープニングセレモニーが始まりました。
 
 マイケル・アイズナー会長の挨拶が終わる少し前のことでした。
 空を覆っていた厚い雲の間から、太陽の光が射し込み、あたりを照らしだしました。
 その光がシーの水面に反射して、美しく輝いています。
 
 まさに「冒険とイマジネーションの世界」が、そこにありました。

 そして迎えた午前8時――。

 「2001年9月4日。東京ディズニーシーの開園をここに宣言いたします」
 加賀見社長によるオープンの宣言と共に、ハーバー、プロメテウス火山から祝福の花火が上がり、東京ディズニーシー・オープニング・セレブレーション・ソングである「カム・ウィズ・ミー」が流れ始めました。

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 言葉が出ませんでした。
 何もかもがキラキラしていて、素晴らしすぎて――。
 世界で初めて海を舞台にしたディズニーシー。
 ここでどんな奇跡が起きるのか、ずっと見ていきたい。そう思いながら、僕は拍手をし続けたのでした。


 お話しはここまでです。最後までお読みいただきありがとうございました。20年前の「東京ディズニーシー」でも、奇跡が起きていたのですね。本書では他にも、全26のステキなお話を収録していますので、お手に取っていただけると嬉しいです。

 これからしばらくは、「東京ディズニーシー」であった、心温まる物語をお届けします。どうぞ、お楽しみに!


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 また、今までお届けしました「心温まる物語」はこちらより、ご覧いただけます。


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