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ディズニーランドであった心温まる物語【第7回】

こんにちは。あさ出版noteにお越しいただきありがとうございます。

 緊急事態宣言が終了しても蔓延防止措置などによって、引き続き入場制限がかかり、なかなか行くことが難しくなってしまっている「東京ディズニーリゾート」であった、心温まる物語を、今回もお届けします。

今までのお話しは、こちらからご覧いただけます⇓

 今回は、ほうきとチリトリを持って、園内をキレイにしてきたカストーディアルさんから語られた「夢を集める仕事」というお話しです。

夢を集める仕事

  カストーディアルへ配属されて、まだ間もない頃のことです。


あっ!!

 目の前で母娘連れがポップコーンを地面に落としてしまったのを発見。
 私は女の子のもとに駆け寄り、急いで散らばったポップコーンを片づけ、女の子に声をかけました。

「ポップコーン残念だったね。せっかくだから、もう一度、一緒にバケツいっぱいにしに行こうか?」
「ほんと!! ありがとう!!」
 女の子はそう言うと、うれしそうに私の手を握ってきたので、私はちょっとびっくりしました。
 当時の私は人と接することが得意ではなく、ましてや子どもとのコミュニケーションに自信があったわけでもなかったからです。ただ、その女の子がとても人懐こく、愛嬌のある子だったので、握ってきたその手にドキドキしながらも、近くのポップコーン売場まで、そのまま手をつないで歩いて行くことにしました。

「どこから来たの?」
「今日は何に乗ったの?」
 などと質問すると元気よく答えてくれます。そんな彼女の様子に私の緊張もすっかりほぐれ、楽しく会話することができました。

女の子からの質問

「ねえねぇ、お姉ちゃんが持ってる、それって、なぁに?」
「えっ、これ? う〜んと、トイブルームとダストパン」
「ト・イ・ブ・ルーム?」
「あっ、トイブルームっていうのはホウキのことでね、こっちのダストパンはチリトリかなぁ〜」
「ふう〜ん、でも、おうちにあるホウキと違〜う」
「そうだね。ちょっと変わっているけど、これもホウキなんだよ!!」

 すると、女の子から質問が。
「それで、お姉ちゃんはココで何をしているの?」
「えっ!? お姉ちゃんは……、このホウキとチリトリで、え〜っと、う〜んと、そう、みんなの夢をね、集めているんだ!!」

「スゴ〜い! お姉ちゃんは夢を集めてるんだぁ〜。楽しそう!!」

いつもの私だったら「掃除の仕事だよ」と言ってしまうところだったでしょう。
 でもこの時はなんだかうれしくって、気がついたらそんな風に答えていたんです。

 売り場に着き、新しいポップコーンでバケツをいっぱいにしてもらったので、「じゃあね」と別れようとすると、
 
 「どうもありがとうございます。ディズニーランドはここまでしてくれるんですね。せっかくですから記念にこの子と一緒に写真を撮っていただけませんか?」
 
 と、娘さんの頭をなでながら、お母さんが言ってくださいました。

えっ……。

 ゲストの方から一緒に写真を撮ってほしいと言われたのは、初めてでした。
 それまで、写真を撮り合っているゲストの方から、「シャッターを押してもらえませんか?」と頼まれたことは何度もあります。ですが、「写真に一緒に写ってください」なんて言われたことはありませんでした。
 華やかなコスチュームのショーキャストとかならわかるものの、真っ白い清掃のコスチュームの私と写真を撮りたいと思う人など、いないだろうと思っていました。
 ビックリしながらも、うれしくて元気よく答えました。
「……ハイ!! 喜んで!!」

 パシャ。
 
 「あら、いやだわ。この子ったら(笑)今日いちばんいい顔で笑ってるじゃない!!」
  カメラのシャッターを押し終えたお母さんが、うれしそうに言いました。

時刻は16時過ぎ

 時刻は16時をまわっています。
 
 たぶん、色々なアトラクションやショーを楽しんで来られたんだと思います。
 そんな中、私と一緒に写真を撮った今が、その子の今日いちばんの笑顔だなんて。
 そう言ってもらえたことが本当にうれしくて、やったー!! と、心の中でガッツポーズをつくってしまいました。
 
 バイバーイ。
 私は親子に手を振りながら、なんだか清々しい気持ちになっていました。


 スゴイなあ。
 ディズニーの魔法をかけるのが私たちキャストの役割だと思っていたのですが、実は私のほうがゲストからの魔法にかかっていたんですね♪
 
 by 元カストーディアルキャスト


 今回のお話しはここまでです。最後までお読みいただきありがとうございました。

 ディズニーリゾートでは、従業員をあえて「キャスト」と呼びます。これは、ウォルト・ディズニーの「ディズニーパークではお客さまが映画の世界に入り、一緒に感動を作り上げていきたい」という思いがあるから。 また、スタッフそれぞれに配役を与え、テーマに沿った役割を「演じてほしい」という理由もあり、キャストと呼ぶことにしているからとのことです。

 

ディズニーランドでは、毎日どこかで物語が生まれています。

 本書では他にも、全26のステキな物語を収録していますので、ぜひ、お手に取っていただけると嬉しいです。


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