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書き出しだけ

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物語のはじめだけ。おもいつくまま。
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2016年9月の記事一覧

プレナイトの手

さわやかな風が頬をなでる。
まだ朝日の昇りきらない暁時、いつもこうして草原を眺めるのがエナの習慣だ。
右も左も、見慣れた景色。それをゆっくりと、全身に風を纏って感じていると安心する。―ここは、私の場所。私の世界。
深呼吸をひとつ。そうしたら、朝一番のあいさつをしにいこう。
トゥトもマァも、一つ下のミラももう起きて卓を囲んでいる頃だから、少し遅れたことを詫びながら。

それもいつものこと、

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いたずらケーキ

このケーキ、なににみえる?

あかのスカートのおんなのこ、「いちごのケーキ!」
くろのズボンのおとこのこ、「チョコレートケーキ!」
みどりのくつのおとこのこ、「ケーキじゃないよ、プリンだよ!」
きいろのふくのおんなのこ、「わかんなぁい!」

さてさてケーキはこまりました。
だれひとり、おなじ「じぶん」をみていないみたいです。

じぶんはケーキのつもりですが、もしかしてケーキじゃないのかしら。

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月をみあげて

やけに空があかるいと思ったら、ほぼ満月に近いんじゃないかという月がかかって星も見えない。
雲もなくて、月の独壇場。さすがに情緒のかけらもない。
ひっそりした夜の空気が好きなのに、煌々ととでも言うべき月の光。あーあ、影から影へも楽じゃない。
きょうのところは白旗あげて、やすむとしよう。
きっと明日、明日がだめならつぎの日にでも、私の好きな夜がまたやってくる。