見出し画像

Uber Eats の配達員を始めたら、東京がオープンワールドになった

半月ほど前に Uber Eats の配達員を始めた。多少の金欠と技術的な興味、友達の体験談がタイミングよく重なり、自転車を買うことからスタートした。

カバンを取り寄せてパートナー登録を済ませ、おっかなびっくりでアプリを起動すると、自分のいるエリアを中心に地図が現れた。時間や混雑具合によって報酬が変動し、”稼ぎの良い” ゾーンは強調表示されるようだ。

画像1

面白いのは、待機時には個々の店舗が現れず、配達依頼があったときだけ行き先として表示されること。どの店からリクエストが貰えるかは一見して分からないので、配達員は「あの辺で注文が取れるだろう」とアタリをつけてさまよう必要がある。

店から呼び出されたら、無理なく急いで受け取りへ。注文番号を伝え、商品を受け取り、四角いカバンに倉庫番よろしく詰め込んでいく。準備ができたらお客さんのもとへ。家族の団らんや深夜の頑張りを想像しながら、「俺が幸せを届けるんだ」と自負を持って走り出そう。届けるのが早ければ早いほど配達回数(報酬)も増やせるので、スピードも大事な要素になってくる。


俺はリンクなのかもしれない

ビギナーズラックかエリアの良さゆえか、40回ほど配達した現在の時給は1,000~1,500円くらいになった。運動不足の解消、スキマ時間の活用といった要素と合わせれば、十分すぎる報酬だろう。

それよりも、「さまよい、受け取り、届ける」という一連の流れに楽しみを見出している自分が気になった。

もともと散歩が好きなので、その延長かもしれない。だけど、それだけでもないような……と逡巡しているうちに、ひとつのゲームが思い浮かんだ。言わずと知れた傑作、『ゼルダの伝説 ブレスオブザワイルド(以下BotW)』である。


「お店のリクエスト」に誘われる配達員

Uber Eats の配達プロセスを振り返ろう。

(1) アタリをつけて散策する
(2) お店で商品を受け取り、効率よく届ける

(1)では需要の多いエリアに寄っても良いし、散歩感覚でフラフラ自転車を走らせても良い。どれくらい稼ぎたいかによっても変化する、かなり自由度の高いフェーズだ。

それと比べ(2)では制約が大きくなる。サービスを提供する/される関係が確立し、時間単価の意識も強くなる。好きな場所には行けず、ただ指定された店や家屋を目指す、ミッションドリブンな時間と言えるだろう。

画像2

「散歩が好き」とは言ったものの、テキトーに歩き続けるには限界がある。配達ミッションは強制的に新しい土地を開拓させるため、普段は気にもしない場所での発見を提供してくれる。「自由度の高い散策」と「配達による強制移動」の連鎖が、飽きのこない体験をもたらすのではないか。

画像3

配達の帰路に通りすがった夜の東京駅。この時間、このアングルで出会えたからこそのカッコ良い表情。


「ほこらの光」に誘われるリンク

他方、BotW の主人公リンクは、途方もなく広いフィールドに放り出され、ストーリーを進めるために奔走したり、それとは関係なく点在する「ほこら」をクリアしたりして力をつけていく。

(1)フィールドを散策する
(2)ほこらの謎解きをクリアする

BotW はやれることが無限にあるゲームなのだが、(1)ほこらを探して(2)謎解きする体験は、多くのプレイヤーが繰り返し味わっただろう。

画像4

こちらの動画からのスクリーンショット。左手前に見える青い光や、左奥に見えるオレンジの光が冒険のチェックポイントになっていく。

ほこらを見つけるためには、ナビを使ったり、ほこらが放つ光を目印にしたりする。広大なフィールドを自由に散策しながら、偶然あるいは意図して見つけたほこらに潜り込み、その場限りのミッションをクリアしていく。ここでも「自由度の高い散策」と「ほこら限定の謎解き」が連鎖しているのだ。

画像5


配達員オブザワイルド

Uber Eats も BotW も、自由すぎず、一本道過ぎもしない。散策とタスクを行き交いながら、広い世界に親しんでいくフローがそっくりだったのだ。

画像6

配達/プレイ時間が伸びていけば、ちょっとした成果(現金やアイテム)を手に入れて強くなる。世界に詳しくなればなるほど、効率的な移動が可能になり、マニアックな要素にも出会えるようになる。

そうこうしているうちに、東京という街がオープンワールドゲームの舞台に見えてきた。早解きのために効率を追い求めるもよし、数えきれないコレクションに挑戦するもよし。Uber Eats の配達員を通じて、自分が住む土地への新しい親しみ方が見つかるなんて、まったく嬉しい誤算だった。


……みたいなことを考えていたら、ある日の配達中、急な大雨に降られた。一度請け負ってしまったからには届けなくてはならない。辛い気持ちで自転車を漕いでいたら、はずみでスマホを水没させてしまった。液晶がチラチラ点滅し、操作もままならない。本当に泣きそうになった。

画像8

【ゲームさんぽ/ゼルダの伝説】より。最高の動画なので未見の方は是非。

これも BotW で体験したことである。雷ゾーンに足を踏み入れたが最後、容赦ないダメージがリンクを襲ってくる。寒さや暑さ、天気のアイコンを見過ごしていたからこその被害なのだ。

つまりは配達員としてのプレイングが甘かったわけで、もっと成長しなければなるまい。なお、シーカーストーンは壊れないが、スマホのFace IDは機能しなくなりました。南無三。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?