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「ずるい」という言葉

子どもが言いやすい言葉、というものがある。

語感が良かったり、便利だったり、ちょっと大人っぽく感じたり。
一度覚えるととにかく多用する、そんな言葉。

その最たるものが「ずるい」だと思う。

「ねぇ、それズル!」
「○○ちゃんずるい!!」

長女も次女も、すぐ言う。
全然ずるいことをしていない相手にも、すぐ言う。

親としては、あまり濫用してほしくない言葉だ。
しかし、これの説明がものすごく難しい。

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己の子育てにあまり自信はないが、一応心がけとして、質問にはきちんと答えるようにしている。

もちろん「知らないなぁ」と答えることもある。親だって知らんもんは知らん。最近は「携帯で調べればいいじゃん」と言われてしまうけど。

「ずるい」は一番説明に苦労した。

「じゃあ、『ずるい』ってなに?」

なんらかの卑怯な手段…(あー卑怯がわからないか
ズルをして…(いや本末転倒
うーん…

さんざん迷った挙句、
「正しくないやり方をしたのに、正しいやり方でやったふりをすること」
というような説明をした気がする。

子どもたちは、わかったようなわからないような顔をしていた。

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大人になると「ずるい」と口にする機会は減る。

狡猾な人はどこにでもいるけれど、それによって得たものに対する嫉妬があって初めて「ずるい」という言葉になると思う。

嫉妬は、自分が得るはずだったものを欲する気持ちから生まれる。地位も名誉も財産も、まず「私が得るはずだったもの」が浮かばない。ゆえに、「ずるい」からも遠ざかっている。

そんな中、唯一「ずるい」と思うのは夫だ。

ひとりの時間があっていいよね。
思い付きで行動できていいよね。
帰ってきてすぐ座れていいよね。

行動の自由を奪われる子育てにおいて、伴侶の自由さは「ずるい」以外の何物でもない。夫に悪気がなくても、その自由さは育児からの逃避に等しく、私の犠牲によって成り立っている。

白い花束

ある日、相変わらず「ずるいずるい」と連呼する次女に、

「何にも頑張らないで『じゃあどうぞ』ってもらえるのを待ってるあなたの方がずるいんじゃない?」

と言った。

言って、自分でびっくりした。その通り過ぎた。

「ずるい」は諸刃の剣。
言った方も言われた方もずるいのだ。

もちろん、悪辣な手段を使う人も居るだろうから、その場合はこの限りではないけれど。

「ずるい」は、頑張らずに何かを手に入れようとすること。

これが一番子どもへの説明にしっくりくるかも。

願わくば、言うことも言われることもなく日々過ごしたいものだ。

私も、ちょっと頑張って説明&交渉して、もう少し自由時間を手に入れよう。
ずるいずるいと思ってばかりいないで。

#エッセイ #子育て

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