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あの頃

大学生の時、私は、四畳半に小さい台所つき、風呂トイレ共同の、下宿屋さんで生活していた。大家さんも一緒に下宿部屋の奥に暮らしていた。当時、推定年齢70くらいだから、もうこの世には居ないだろう。門限は10時.入り口には門がある、高い鉄の門。帰宅が、遅くなる時は、連絡を前もってしておけば開けて置いてくれるが、そうでなければ、門は閉められる。
その日、私は、初めて出来た彼氏とデートだった。だから、ずっと緊張している状態だった。
美術館で絵を鑑賞した後、居酒屋で軽く呑みながら食事。その後、歩いて下宿まで帰った。時計を見ると、門限まで後10分。走れば何とかなるけど私の足では、間に合わない。「もういいわ。友達のうちに行く。」と言うと、彼は、
「諦めるな!俺の背中に乗れ。」と言う
当時、私太っていた。彼は今風に言えば草食系男子。無理無理無理。首を横に振って断ったが、無理矢理今度はお姫様抱っこして、夜の道を走る。
火事場の馬鹿力である。初デートでまさかのお姫様抱っこ。恥ずかしながらも。幸せであった。

何とか間に合い、門は開いていて良かったが、
その次の日から3日彼は学校に来なかった。そして彼とは1年でさよならした。

あの頃が一番輝いていた。私にとって二度とない大切な思い出だった。


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