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『マッチング・マン』 (未映像化台本)
(背景設定)
優斗 柔和な感じの普通の若者。服装はカジュアル。
小山田 押しが強そうだけど、普通のおじさんorお兄さん。服装はスーツ。
恵美 気は強いんだろうなーっていう、普通の女子。服装はカジュアル。
シーン1
街の景色がいくつか。
優斗のナレーション「世の中は変化していく。アメリカの大統領も交代したし、コロナのお陰で友達んチのラーメン屋さんも潰れた。だから、ボクにだって何か起きても不思議はない。・・・2021年の冬・・・」
シーン2
公園の風景。
優斗N「ボクはフラれた」
シーン3
公園のベンチに優斗と恵美。
バン!とベンチを叩く恵美。
恵美「大っっっキライ!」
と、優斗に声を叩きつけ、立ち上がり、そのままさっさと歩き去っていく。
気圧されたままの優斗、のけぞり座っているのみ。
----ざりっと地面を踏む小山田の靴。
落ち込む優斗。俯いている。
優斗「ふぅ・・・」
と、小山田の声がかかる。「やあやあやあ、君君君」
優斗「?」顔を上げる優斗。
横に小山田がにこやかに座っている。
優斗「・・・・・」無言で見つめる。
小山田「小山田と言います」
優斗「えっ?」
小山田「小山田です。わたしの名」
優斗「はぁ・・・」
小山田「君、自衛隊に入りませんか?」
優斗「・・・・・いやいやいや」
と、立ち上がり、小山田を置き去りに歩き出す。
シーン4
公園外の道路。横断歩道の信号が赤に変わる。
信号待ちの優斗。
小山田の声「どうもどうもどうも、君君君」
優斗の横に小山田。
小山田、にっこりと「小山田です」
優斗「・・・・・」胡散臭そうな目で小山田を見る。
小山田「自衛隊に入って、我が国の平和と独立を守りましょう」
優斗「うーん・・・」
言葉終わり尻に、不意に向きを変え、歩き出す。
小山田「あれっ?こっちに行くんじゃ?」
優斗、歩きながら、顔だけ小山田を振り返る。
小山田「そっちは行かない方が」
優斗、何言ってんだ的な顔で小山田に目をやりながら歩いてると、「ガクン」と衝撃。
小山田「あー」
道の段差とか、路面店の軒先の低い看板にひっかかって、べったりとぶっ倒れてる優斗。
やがて、優斗、両手を地につけ「く〜〜〜」と、体を起こす。
立ち上がり、ジロっと小山田を睨む。
小山田、右手を上げ、にこやかににぎにぎする。
優斗、ムッとして踵を返し、歩き出す。
シーン5
歩く優斗。
小山田の声「ねえねえねえ、君君君」
すぐ傍の横道の入り口に立っている小山田。
優斗「・・・・・」目を丸くする。
優斗、今来た道を振り返った後、なんでここに?と、また小山田を凝視する。
小山田、にっこりと、「自衛隊は良いですよ。どんな特殊車両の免許もコミコミで無料で取得できるし、包茎手術だってタダです」
優斗、なんなんだこいつ?と訝しりながら、小山田を見る。
で、急なスタートで歩き出す優斗。
が、
いきなり小山田のアップ「それに、なんと言っても、銃が撃ち放題です!」
また別の横道の入り口に小山田が立っている。
優斗、びっくりして、絶句「うえ・・・」
ダッシュ。
また、いきなり小山田のアップ「戦車にも乗れます」と、次の横道にも小山田。
優斗「ひゃう!」
小山田「ウチは陸自なので、残念ながら、戦艦や戦闘機は門外漢ですが。あ、陸自ってのは、陸上自衛隊のことです」
優斗、小山田のセリフ始めから聞いておらず、「・・・・・」と、ジリジリと横移動する。
が、次の横道にも小山田。
小山田「でも、ヘリならありますから」
優斗、たまらず、「ああああ!」
駆け出す。
小山田「あら。そっちは行かない方が」
「ガン!」と音。
優斗「おお〜〜〜」と、歩道と車道との間の間仕切りの鉄柵に、思いっきり脛を打ちつけたらしい優斗が、座り込んで、右の脛をさすっている。
傍に立つ小山田、かがみ込んで、「自衛隊がお嫌いなんですね」
優斗「いや、そうじゃなくて!いや、そうじゃなくもなくて!あいや、そもそもそういうことじゃなくて!」
小山田、にっこりと、「落ち着きましょう」
優斗「・・・・・」言葉を失なう。
小山田「嫌なら嫌とそうおっしゃっていただければ、わたしもさっさとおいとまいたしましたのに」
優斗「へ・・・?」と、立ち上がる。
小山田、にこやかに、「はっきりとしたお答えを頂戴出来ないから・・・(更ににっこりとし、)だから、彼女さんにも愛想を尽かされたのでしょう」
優斗「えっ?!」
呆然。やがて、ふつふつと怒りが湧き上がる。
優斗「ぐぐぐ・・・」
優斗、バッと踵を返し、ダッシュ!
と、思いきや、優斗「あ・・・」
小山田「そっちは」
優斗、ストップ。ババッと小山田に向き直り、「どっちだ!」
小山田「は?」
優斗「どっちならいいんだって、聞いてんだよ!」
小山田、或る方向を指差し、「あっち」
優斗「うぅおおおおおおおお」
どひゅーんと、その方向に走り去る優斗。
何やら思いありげに見送る小山田。
シーン6
がむしゃらに走る優斗。
シーン7
或る程度走り切ったのか、足を止めて、両腿に手を突き、はあはあと息を切らしながら屈んでいる優太。
顔を上げると、同じ様な格好で、同じ様に息を切らしている恵美が目の前にいる。
優斗「え?・・・恵美?」
気がつけば、そこはシーン3の公園である。
恵美「ゆ、ゆ・・・優斗!ゲホゲホ!自衛隊って何!なんでそんなことになんの?!」
優斗「いぃ?」
恵美「なんかニヤケた変なオッサンから聞いたんだよ!優斗を自衛隊にスカウトしたって!」
優斗「・・・小山田」
恵美「それ!そう言ってた!」
優斗、混乱「・・・・・?」
恵美「自衛隊なんか行ったら、男の園だよ?!BLだよ?!あんなことやこんなこと!めくるめく倒錯の世界にレッツゴーだよ!それでいいの?!」
優斗「えー、そうなの・・・?」
恵美、イライラとしてきた。
恵美「いいから、あたしの質問にちゃんと答えてよ!優斗っていつもそう!あたしに向き合ってくれないで、いつもはぐらかしてばっかなんだから!」
優斗「・・・・・」
小山田の声がぶり返す。「だから、彼女さんにも愛想を尽かされたのでしょう」
----ざりっと地面を踏む小山田の靴。
小山田、にこやかに、「やあやあやあ、どうもどうもどうも、ねえねえねえ」
恵美「あっ!この人!」
二人に歩み寄る小山田。
優斗「・・・・・」と、小山田を見るのみ。
小山田「どうですか?決心つきましたか?」
恵美「優斗は・・・優斗、はっきり言いなさいよ!」
小山田、二人を見比べる。優斗に最後に目をやる
優斗「オレは・・・オレ、自衛隊には行けない!だって・・・恵美に会えなくなっちゃうだろ!」
恵美、パーっと目の前が開けた気分。
恵美「優斗っ!」と、笑顔100%でしがみつく。
優斗「あわわ・・・へ、へへへ」
小山田「あれまぁー、そうですかぁ・・・ま、いいでしょう」
恵美に組みつかれたままの優太、笑みを浮かべたまま、「ちょっ、小山田さん・・・あんた、なんなの?ほんとに自衛隊の勧誘の人?」と、横目に見る。
優斗の視線の先には、浮浪者の爺さましかいない。
爺さま「は?」
優斗「あれ・・・?」と、恵美の体を離す。
(カメラ引いていきながら)優斗は、小山田が居たはずの方へ体を向ける。一歩、二歩と歩み、キョロキョロを辺りを見回すが、小山田は既に居なくなっていた。やがてフェーイドアウト、暗転。
優斗N「急に現れたおかしな男は、消え去り方も唐突だった。その後、恵美とはまあまあ上手くやっている。しつっこい勧誘にはだいぶ参ったけど、恵美とヨリを戻せたのは、あのオッサンのお陰だ。小山田さんはどうやらマッチングの達人なのかも、なんて思ったりして。・・・それで、この奇妙な人がそれからどこへ行ったかというと、・・・」
シーン8
(ストップモーション)小山田が手にしているコック見習い、建設会社、ITエンジニア求む、などの募集チラシ。
(ストップモーション)小山田の笑顔アップ。
(ストップモーション)場所はまた公園。ベンチで座っている優斗が、驚き顔で傍に立つ小山田を見上げている。
優斗「実はまだ隣にいるのです」
終わり
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