障害者の定義と支援、思うことあれこれ
私は普段からメガネをかけているので生活に支障がありませんが、メガネという技術がこの世になければ、あるいはこんなに普及していなくて差別の対象だったらば、私も「障害者」だったかもしれない。
というのは、障害者基本法には「障害者」は下記のように定義されているから。
現代では「障害者」が障害を治療とか克服とかしなきゃならないのではなくて、生活環境の側が変わって「生活に相当な制限を受ける状態」が解消されることをも目指す、つまり障害と障壁は別物であるという考え方が主流です。
そう考えるとテクノロジーが障害者福祉に貢献できる可能性はとても大きいです。
VRが出た当初、私はリアルのほうがいいじゃんと思ってしまったけど、行きたくても行けない人にとってはまさに夢のような技術ですし。
視覚障害で目がほとんど見えない方で、iPhoneのおかげで生活がとても便利になったという声も聞きます。
出社するのが困難でも、テレワークなら働ける人もいます。
ところで、特に精神障害をお持ちの方の仕事の相談に乗っていると、変わるのはこの人ではなく社会のほうでは? と感じることがときどきあります。
今の就労支援の考え方って、土台に体調管理や生活スキルがあって、それをしっかり基礎固めしてから仕事のスキルを身につけましょう、となっていることが多い。すごく乱暴な言い方をすれば、「普通の」生活ができるようになってから働きましょう、たまたまマジョリティができている就労形態に合わせられるように、訓練していきましょう、みたいな感じなのです。
これには、国が障害者雇用の算定方法を週所定労働時間で規定しているから、という背景もあるのだろうと思います。
でもそういう「普通の」生活が難しいから「障害者」になっている方もいらっしゃるはずで。怠惰だからとか規則正しい生活を知らずに育ったからとかじゃなくて、脳の障害ゆえに生活リズムの安定が難しい人というのは存在するので。
就労継続支援B型(通称「作業所」と呼ばれる)ならば、勤怠の安定にはそこまで厳しくないですが、作業に対する金銭的報酬は「工賃」と呼ばれ最低時給をはるかに下回ります。
以前バラエティ番組の街頭インタビューで、「年収20万円」って回答していた男性が映って観衆が「えぇー!」みたいな反応していたの見たことあるけど、たぶんあの人は作業所に通っていらっしゃるんじゃないだろうか、と私は勝手に想像していました。
極論ですが、部屋がめっちゃ汚くて食生活や睡眠リズムがぐっちゃぐちゃでも、定職に就いている人はいます。まずはなんでもいいから仕事して安定した収入を得ることで、生活が整っていくという場合もあります。
現代社会を生きていく上でお金はほぼ必要不可欠なので、仕事があるのとないのとでは精神的な余裕がだいぶ変わってくるのではないでしょうか。
と、いうのを考えると、障害福祉サービスの就労支援はもっと選択の幅があってもいいような気がしています。
まあ、障害福祉サービスを使うかどうかも言ってしまえば自由な選択なので、自分に合うものがなければ使わなくてもいいのですが。
たとえば一般就労のアルバイトで週2日、1日3時間から働いたり、日雇いや短期限定のバイトをしたり、ウーバーイーツみたいな歩合制の仕事で稼いだりして過ごすのも有りです。
もちろん、規則正しい生活を送るようになることで体調が良くなっていくこともあるので、生活リズムの安定を目指すことには私も賛成ではあります。が、その「安定したリズム」が人それぞれですからね。
以前雑誌に出ていたあるライターの方は、15時間寝て15時間活動するというのがいちばん自分に合うっておっしゃってましたし。
精神保健福祉士になってからというもの、すべての常識は一度疑う癖がついたような。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?