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野鳥観察|ミヤコドリに再会/「趣味」は解像度で決まるのかもと思った話

スコットランドで初めて会ったOystercatcher、日本語で「牡蠣喰い」と思いきや「ミヤコドリ」という雅な名前の鳥、ついに日本で再会。


熊本の実家に帰省した帰り、旧友に会うために福岡に立ち寄っていた。福岡市は海に接している。せっかくだから海鳥を見にいきたいなと、「福岡 干潟」で検索。

あったあった。
博多から遠くないところに干潟がある。秋春はシギチドリが飛来し、冬は「ミヤコドリがおすすめ」らしい。ご当地グルメのような紹介文だなと思いながら、ここに行くことにした。

電車を乗り継いで海町の小さな駅に降り立った。その瞬間、頭上を大きな猛禽が通り過ぎた。ミサゴだろうか?

飛んでる姿は優雅だった。
白いお顔が特徴的


スーツケースを転がしながら浜辺のほうに向かう。海の上で群れるカモの向こうに、懐かしい姿があった。ミヤコドリだ。

遠い。

スーツケース+ロングコート+革靴という絶対に干潟には向かない格好で、近づくか迷った。すると、地元のバードウォッチャーと思われる方が教えてくれた。

「そろそろ潮が満ちてきて、一斉に飛び立ちますよ。それを待てば、こちらの方に向かってくることもある」

待つことにした。
その間、ハクセキレイに遊んでもらう。

30分くらい経過。
水位は徐々に上がって、もうお腹まで浸かりそうだけどまだ飛ばない。

近縁のシギ科には、濡れることに寛容な種類と少しも濡れたくない種類がいるらしい。
ミヤコドリはどのくらい濡れても平気だろうか?


いつのまにかクロツラヘラサギが来てミヤコドリのそばに降りた。上空ではカラスがねぐらに帰り始めている。

雲が晴れて夕日が海を照らしたとき、ミヤコドリたちのいるほうがピュイピュイと賑やかになった。そして

飛んだ。飛んだ!

隊列を組み、綺麗に旋回して、もっと遠くの浜に落ち着いた。一瞬の出来事だった。ほとんど写真がない。旋回のとき、少しだけこちらに向かってくれたので嬉しかった。

干潟に着いてから約40分。
岸に近づいていた地元の方が戻ってきた。
この方が現れなかったら見れていたかわからない。

おかげさまで楽しめましたと報告すると、「こちらも、クロツラヘラサギが飛来した瞬間の良い写真が撮れましたよ」と嬉しそうに教えてくれた。



その夜、旧友たちと「趣味ってなんだろう」という話になった。

例えば、「好き」の度合いや「上手さ」の程度の話なのだろうか?
私の周りにいる人はそう考えている人が多い気がする。彼らによれば趣味とは、たくさんのお金や時間を注ぎ込むものか、あるいは一般の人よりは突き詰めるべきもの。ただ少し好きというだけでは趣味と呼ぶにはおこがましい。上には上がいる。

一方で私の場合は趣味と呼ぶハードルが低くて、それをやってるときの時間が楽しければ、それはもう趣味だ。下手だけど絵も趣味。さらに下手だけど料理も趣味。鳥も趣味。散歩も趣味。趣味趣味趣味。
こうなると趣味が増えて仕方がないけど、こういう世界との付き合い方があってもいいと思う。ともあれ、ここでは解釈が一致しなかった。

そしたら、なんだろう?

福岡で会った旧友たちはK-Popに夢中だった。なんとかというグループの誰さんが素敵で可愛いそうだ。同じホモサピエンスに対してとても解像度が高い。私も見分けようと頑張ったけど難しかった。
その一方、彼女たちは鳥の違いについてはあまり気にしていなさそうだし、ましてや例えば「あれがミヤコドリ」なんて言われても、すごい遠目だとカモとかに見える…のかもしれない。知らないけど。

年始早々からそんな話を繰り広げていると、

「趣味って解像度のことかも」
ある人が言った。なるほどと思った。

理解しなきゃと頑張らなくても、自然と細部まで見えてしまうもの。人にとっては漠然としたニッチな領域でも、本人にとっては目に飛び込んでくる情報がたくさんある広大で魅力的な世界。

ひとの数だけ世界が広がっている。だからきっと会話が面白くなるのかもしれない。

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