エディンバラ暮らし|犬にやさしい社会
ある日、ザ・メドーという、その名の通り芝生が広がる大きな公園のそばのカフェで、紅茶とスコーンのクリームティーを決め込んでいたときのこと。隣の席に老紳士と耳の垂れたおしゃれな犬がやってきた。
どう見ても介助犬ではないし、ここはドッグカフェというわけでもない。
静かにびっくり仰天していると、ひとりと一匹はあまりにも慣れた感じで、片方は新聞を広げ、片方はテーブルの下に身を伏せた。老紳士は私と同じセットを注文し、犬は時折飼い主からスコーンのかけらをもらっていた。目がまんまるで物静かな、たいへん可愛い犬だった。
故エリザベス女王はコーギーが好きだし、チャールズ国王はジャックラッセルを飼っている。グレートブリテンおよび北アイルランド犬好き王国では各家庭かならず犬がいる。
いや、さすがにそんなことはないけど、その言いたくもなるほど犬と人がよく一緒に歩いている。
犬がいるのが当たり前の社会だから、
カフェの店先には犬のための水入れが置いてあったり
犬の落とし物は街のゴミ箱に捨てて良かったり。
あるときは本屋で店番を任されたり。
肩を組んだり。
韓国から来た人とおしゃべりしていたときも、この話で盛り上がった。
「この国の人は犬にリードをつけない」目の前の公園をリードなしで駆け回る犬を見ながら言った。驚くポイントが同じだ。
「だけど、犬の方も相当に礼儀正しい」
ほんとうに、礼儀正しい犬が多い。
リードがあってもなくても、飼い主との間には忠誠心と信頼関係があるように見える。広い芝生を元気に自由に走り回ることがあっても、彼らは見知らぬ人に吠えたり飛びかかることもなく、テンションのゲージが振り切れて暴れ回ることもなく、最後には飼い主の元にすっと戻っていく。
公園のベンチでそんなことを思っていたら、不意に中型犬が私の手の中にあるケンタッキーのツイスター目掛けて突進してきた。
彼らも相手を選んでいるのかもしれない。
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