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【自分で出来る】発信者情報開示請求のやり方(Twitter編)【ひな型あり】(仮処分申立~ログ保存要請編)

※※※【重要なお知らせ 2023/7/24追記】Twitter社が買収されてからこちらの記事はアップデートされていません。こちら被告が変更されていますので現在はすべてのひな型を完全に使用できる状態ではありません。参考程度にご覧いただく程度でおねがいします。※※※

※この記事では、弁護士に依頼しなくても自分で裁判所に対して発信者情報開示仮処分命令申立てができるように、参考情報としてまとめました。申立書や訴状のひな型をダウンロードできます※

google編はこちら

みなさん、こんにちは。
司法書士の加陽麻里布(カヨウマリノ)です。

プロフィール

 私自身昨年まで、ツイッター上で実名を掲載された上で「死ね」「売春婦」「ゲス女」「愛人」「枕営業している」等、一切根拠もない投稿をされ続けてきました。YouTubeで情報発信活動をする者として多少の批判的意見や否定的意見は受け入れたいと思っていましたが、さすがに限度を超える虚偽事実による名誉毀損や著しい侮辱行為については、止めてもらいたく発信者情報開示請求を行いまして、現在は訴訟準備中であります(この話は別の記事で公開します)。

 自分で発信者情報開示請求を行う場合どう進めればいいのか等の情報を多くの人に提供すべく本noteを作成しました。ご参考までにご覧いただければ幸いです。

・IP開示後プロバイダ訴訟~本人特定まで編は、コチラ


0.はじめに

 昔から有名人が誹謗中傷されるのは、有名税であると考えられてきましたが、情報発信が簡単になった現在、この考え方は大きく変わったと感じます。また、仮に芸能人であっても同じ人格権をもった人間である以上、同じように傷つくので受忍限度は青天井であるはずがありません。

 有名人や政治家への誹謗中傷に対し、開示決定が出ると、裁判所の決定に対し「言論弾圧」とか「表現の自由の侵害」と反発する人もいますが、表現の自由とは自由だからこそ責任が伴うものであるし、そもそも「死ね」という言葉に表現価値はありません。開示決定が出る前提として裁判所より権利侵害の明白性が認められていることからは目をそらしネット上では加害者側の逆切れ状態が続いています。

 ※令和2年10月26日下記のニュースが入ってきました。加害者側の逆切れ状態を絶対に許してはいけません。

 いまや、芸能人・有名人・政治家だけでなく一般人がインターネット上で誹謗中傷される時代です。地域掲示板が存在し、●年●組のA子は〇〇している等、学校内や友人関係等のトラブルの延長線がインターネット上になっています。

 このように社会問題として取りざたされている以上、時代はすぐに代わり法改正が行われ今より加害者をもっと簡単に特定できるようになると思います。これらは政治に任せ私は私に出来ることとして、現状、苦しんでいる人、私と同じように虚偽事実を掲載されたり、誹謗中傷に悩んでいる一般人の方へ情報提供をしたいと思います。

 法的知識が乏しい、経済的に弁護士に頼むことが難しいという方が泣き寝入りすることなく、不当な権利侵害と戦える世の中でありますよう「自分で出来る発信者情報開示請求」のやり方をご紹介します。2回に分けてご紹介します。本編では、仮処分申立~保存までご紹介します。

1.申立できるかその前提となる条件


(1)その投稿が自分に向けられたものと読める必要がある

 例えば「A社の経理部長」と書かれた場合はその投稿が自分に向けられたものであると認識可能ですが「彼は犯罪者」という投稿の場合は、彼が誰を指すのか不明なため名誉棄損は成立しません。しかし同一ページ・前後に投稿された内容から、自分に向けられたものであることを立証できれば、この問題はクリアすることが可能です。

(2)ハンドルネームに誹謗中傷されている場合基本的に不可

 ハンドルネーム(源氏名)でツイッターを開設している場合、そのハンドルネームへの誹謗中傷については個人を特定できない以上は、基本的に、名誉棄損は成立しません。しかし、そのハンドルネームが通称として使われている場合や、オフラインでのやり取りでも使われて、実際に誰を指すのかを周囲が認識可能であれば名誉棄損は成立する可能性がございます。

 例えば「松田聖子」さんは、本名ではありませんが「松田聖子」とインターネットで検索すれば、表示された松田聖子さんの顔写真等の情報から、個人として認識可能であるため名誉棄損が成立します。同じく著名な一般人である「はあちゅう」さんも、本名ではありませんが、いわばインターネット上の有名人であり「はあちゅう」さんについて誹謗中傷すれば実際に誰を指すか周囲が認識できるほどに浸透しているので名誉棄損が成立します。

2.申立てにあたり準備するもの

 匿名投稿者を特定するには、2つのステップを踏まなければなりません。第1ステップとして、ツイッター社に対し発信者情報開示仮処分命令申立を行います。第1ステップで開示されたIPアドレスでプロバイダが判明しますので第2ステップで、当該プロバイダへ契約者の住所氏名を開示せよとする訴訟提起をします。第1ステップにかかる時間は大体1カ月~2カ月程になります。

 まずは、申立てをするにあたり下記2点をあらかじめ用意しておきましょう。

①本件投稿記事(権利侵害されている投稿記事)
 →投稿内容・投稿日時・投稿画面のURLが表示されている画面を打ち出す必要があります。また1度の仮処分申立の中で、複数のアカウント・複数の投稿を指定して申立てすることが可能ですので、名誉棄損にあたる投稿は、削除される前に、証拠保全しておきましょう。

②ツイッター社の資格証明書とその翻訳文
 →アメリカの登記簿謄本のようなものです。アメリカへ取寄せると数カ月かかりログの保存期間切れとなるリスクが増すため、国内で販売している法律事務所や業者が多数ございますのでそちらから購入しすぐに用意しましょう。

また、申立人が法人であれば法人の登記簿謄本も必要となりますのでご用意ください。

3.仮処分申立(第1ステップ)

 それでは実際に裁判所に対して発信者情報開示仮処分命令申立てを行いましょう。作成する書類は「申立書+別紙目録」「管轄上申書」「証拠説明書」「陳述書」になります。すべて簡単に作成可能なよう、ひな型をご用意いたしましたのでご安心ください。

(1)申立書及び目録作成(ひな型あり)

 まずは、申立書の作成を行います。下記ひな型を参考に、ブランクとした箇所に自身の情報を入力してください。※下記ひな型に「申立書・当事者目録・発信者情報目録・対象アカウント目録・投稿記事目録・権利侵害の説明」すべてついています。

 権利侵害の説明ですが、名誉棄損(虚偽事実を適示されてる)なのか名誉感情の侵害(死ね、破壊的ブス等)なのか、上記ひな型に記載した例文を確認しながら使い分けて書きましょう。上記書類が完成しましたら2部(裁判所提出用・自分用)刷りだします(※本当は3部ですが実務上相手方代理人にはメール又はFAXで送るため2部で足ります)。

(2)その他提出書類(ひな型あり)

 申立書とは別に「管轄上申書」「証拠説明書」を提出する必要があるため下記ひな型を参考に作成しましょう。

管轄上申書
 外国法人であるツイッター社は日本国内に拠点を有しないため「管轄が定まらないとき」に該当し、民事訴訟法10条の2及び民事訴訟規則6条の2の適用により「東京都千代田区」を管轄する裁判所(東京地裁)に管轄が認められることとなります。この主張を記載した上申書を提出する必要がございます。下記ひな型をご参照ください。

証拠説明書
 下記ひな型を参考に作成しましょう(※事件番号は受付されるまでは不明なのでブランクでOKです)。


 それぞれ「申立書」「管轄上申書」「証拠説明書」の債権者氏名の横には印鑑を押します(認印でOK)。

(3)証拠添付

 申立書面が完成したら次に証拠を添付します。証拠も決まっていますので下記を参考に作成いたしましょう。債権者が提出する証拠を甲号証といいます(債務者が提出する証拠は乙号証です)。 甲1号証からはじまり、証拠が増えるごとに甲2号証、甲3号証と番号が増えます。それではこの段階で添付する甲号証(証拠)を下記に記載いたします。

甲1号証「Whois検索結果」
 https://tech-unlimited.com/whois.html へ飛んで「twitter.com」とドメイン検索を行い検索結果の画面をプリントアウトします。


甲2号証「本件投稿記事」
 対象の投稿記事をプリントアウトしたものです。上述しましたが、必ず投稿内容のすべて、投稿日時及び本件投稿記事のURLが見える形で印刷してください。

甲3号証「陳述書」
 「名誉棄損」であると主張する場合は反真実性の主張を陳述書で行います。「名誉感情侵害」とする投稿においては不要。下記ひな型を参考に、主張内容を書きましょう(※事件番号は受付されるまでは不明なのでブランクでOKです)。

  陳述書は、最後に住所氏名を自書し押印(認印でOK)しましょう。

(4)裁判所へ提出し債権者面接

 「申立書」「管轄上申書」「証拠説明書」と証拠及び資格証明書を揃えたら完成です。作成した書面と証拠等を裁判所へ提出いたします。管轄は上述したとおり、東京地方裁判所となるため、地方在住の方は郵送による申立てを行う方が良いかもしれません。

 郵送先は下記になります。郵送の場合は直接もっていくよりも受付審査に時間を要する可能性がございます。

〒100-8920 東京都千代田区霞が関一丁目1番4号
東京地方裁判所 民事9部

 受付後、債権者面接の日程を決定することになります。債権者面接は裁判官と面談を行い、手続きの流れ等の確認がございます。また明らかに開示が認められなさそうなものについてはこの時点で、取下げるよう勧告される場合もございます。債権者面接は、申立の受付から最低24時間は空けなければならないルールがあるため、翌々日以降となることが一般的です。

 裁判所の方と直近で日程調整を行い、債権者面接日に東京地裁へ出頭します。面談時間は大体30分程度になります。

 その後、ツイッター社の代理人(弁護士)へメール若しくはFAXで書類を受領いただけるか確認し申立書・証拠等を一式先方の代理人へ送付します。その後、双方審尋期日を決める必要がありますので、先方の代理人に、出頭可能な日程候補を複数いただきたい旨も合わせて連絡してください。

 先方の担当弁護士より書類受領の旨と双方審尋期日に出頭可能な日時の候補が送られてきますので当該日程候補を裁判所へ連絡します。連絡方法ですが、下記書面を裁判所へFAXいたします。

※ コロナによるEMS遅延により、外国法人相手の仮処分申立は上述のとおり進行方法が現在非常に特殊になっています。よく確認しながら行いましょう。


(5)双方審尋期日

 上記で裁判所へ提示した日程候補の中から双方審尋期日を決定していただき当該日に出頭いたします。遠方で出頭が困難な場合は、電話会議で参加することが出来ますので裁判所にその旨申入れを行ってください。ここで、大体裁判官より心証言渡しがあり、開示決定が出るか否か概ね判明します。

 また、受付後に何か訂正する必要が生じた場合は「訂正申立書」を提出して訂正します。下記ひな型を参考に必要に応じて作成してください。

(6)仮処分命令発令

 双方審尋期日が終了して、仮処分命令の発令がされることとなった場合は、下記2点を裁判所へ提出いたします。

①無担保上申提出
 仮処分命令発令にあたり、ツイッター社は基本的に、担保を要求しません。しかし原則は、担保をたてますので、無担保で発令をしていただくためには手続上、上申書を提出することになっています。下記ひな型を参考に上申書の作成をしましょう。

②決定書用の目録差し入れ
 決定書の別紙となる目録を裁判所に3部差し入れます。ここで必要な目録は上記「①申立書(ひな型)」のところで作成した「当事者目録」「発信者情報目録」「対象アカウント目録」の部分です。この部分だけを印刷し、裁判所へ提出しましょう。

(7)発令後(受取り)

 仮処分命令の発令が決定すると裁判所よりいつから受け取れるようになるか連絡がございます。受け取る際は、受書が必要となりますので下記ひな型を参考に受書を作成し、裁判所へもっていってください。

 上記受書がなかったとしても申立ての際に使用した印鑑をもっていけば、窓口で受取り可能です(受書は書くのであらかじめもっていった方がいいですが…)。

 ※本noteでは「自分で出来る方法」を紹介をしていますが、仮処分決定後は弁護士に依頼することを強くお勧めいたします。この後、プロバイダにログ保存要請→プロバイダ訴訟(第2ステップ)を行いますが、高度な知識が求められます。

 また、発信者情報開示請求やプロバイダ訴訟について経験や知識の乏しい弁護士に頼むとサイトごとに定められている特殊な対応を知らずに、ログ情報が削除されてしまい以後相手を特定することが出来なくなる可能性があります。依頼するにあたっては、その弁護士がネット誹謗中傷関係の法的手続に対して十分な経験と知識をもっているのかよくご確認ください。

4.Twitter社よりIPアドレス開示

 仮処分命令発令後、1週間以内にツイッター社よりIPアドレスが開示されます。ツイッター社より、英文のメールが送信されてきます。各対象アカウント事にログイン時間帯別にIPアドレスが書かれたファイルをダウンロードできるリンクが送信されてきますので、当該ファイルをすべてダウンロードします(ダウンロード期間は7日間なので気をつけてください)。迷惑メールに入っていないか常に確認しましょう。

 その後、開示されたIPアドレスをWhoisに入力して検索をしプロバイダを特定します。

5.プロバイダへログ保存要請書を送付

 上述しましたように、開示されたIPアドレスをWhoisで検索し、プロバイダを特定することが出来ましたら、当該プロバイダへログ保存要請書を送付いたします。ログ保存要請書は下記を参考に作成してください。

 ほとんどのプロバイダはログが残っていれば保存要請には応じてくれますので、これによってログが消える恐れがなくなり、本案訴訟にむけて時間的余裕が出来ます。しかし、この時点でログが消えていた場合は残念ながら、相手を特定することが出来なくなります。保存期間は大体3カ月~6カ月。早ければ2週間、ながければ1年等、プロバイダによってまちまちです。

 ソフトバンク等の場合は、上記の任意で保存をお願いする書面だけでは足りず正式な開示請求として以下のテレコムサービス協会ガイドライン書式もあわせて送付する必要がございます。

 プロバイダによって手続の仕方はそれぞれ異なりますので必ずサイトごとに手続方法を確認の上、保存要請や開示請求書を発送しましょう。

 ※上述しましたが、本noteでは「自分で出来る方法」を参考としてご紹介していますが、仮処分決定後は弁護士に依頼することを強くお勧めいたします。この後、プロバイダにログ保存要請→プロバイダ訴訟(第2ステップ)を行いますが、非常に高度な知識が求められます。自身で手続きを行ったことによりログ保存期間切れとなり請求できなくなる不利益を避けるためにもご相談することをお勧めします。

 また、発信者情報開示請求やプロバイダ訴訟について経験や知識の乏しい弁護士に頼むとサイトごとに定められている特殊な対応を知らずに、ログ情報が削除されてしまい以後相手を特定することが出来なくなる可能性があります。依頼するにあたっては、その弁護士がネット誹謗中傷関係の法的手続に対して十分な経験と知識をもっているのかよくご確認ください。

6.ログの保存完了 

 上記の手続きを経て、ログの保存が完了すると下記のような手紙が書留で一週間後ぐらいに送付されます(NTTコミュニケーションズの場合)。ドコモ、ソフトバンク等も同様の文章が送られてきます。

 ログが保存されていない場合は、その旨が記載された手紙が戻ってまいります。

7.プロバイダへ訴訟提起(第2ステップ)

 アクセスログの保存が完了しましたら、時間的余裕が出来るためひとまず安心です。次は、プロバイダへの訴訟提起準備をおこないます。

仮処分決定後IP開示~プロバイダ訴訟、本人特定まで編(各SNS共通)についての記事はコチラから

8.おわりに

 本編では仮処分申立~ログ保存要請までのやり方をご紹介してきました。匿名者を特定するまで非常に高いハードルを感じた方も多かったかと思います。この記事を書いている令和2年10月26日、総務省は、悪質な投稿をした加害者を迅速に特定するための新たな裁判手続きを創設することを有識者会議で取りまとめたことを発表しました。

 現状は煩雑な手続きが必要でハードルの高さを感じざるを得ませんが、今後はもっともっと簡単にそして迅速に誰でも権利侵害を申立て、悪質な書込みを行った投稿者を特定できるようになることを望みます。これからもネット上の誹謗中傷に関するニュースもどんどん取り上げていきnote上へ公開していきたいと考えています。

 最後に、私は日頃、会社法人登記業務を中心に活動し同時に毎日YouTubeで情報発信をおこなっております。自身の専門分野である法人・企業に関する情報や、経済のこと等時事ネタを中心に毎日更新していますのでぜひ、チャンネル登録おねがいします。

 それでは、みなさま、また別の記事でお会いしましょう(^_-)-☆

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