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【自分で出来る】発信者情報開示請求のやり方(Google編)【ひな型あり】(仮処分申立~ログ保存要請編)

※この記事では、弁護士に依頼しなくても自分で裁判所に対して発信者情報開示仮処分命令申立てができるように、参考情報としてまとめました。申立書や訴状のひな型をダウンロードできます※

みなさん、こんにちは。
司法書士の加陽麻里布(カヨウマリノ)です。

ポニーテールグレースーツタイプ02

 先日は、自分で出来る発信者情報開示(twitter編)をご紹介いたしましたが今回は、グーグル編をご紹介したいと思います。

 自分で発信者情報開示請求を行う場合どう進めればいいのか等の情報を多くの人に提供すべく本noteを作成しました。ご参考までにご覧いただければ幸いです。

・IP開示後プロバイダ訴訟~本人特定まで編は、コチラ

0.はじめに

 Googleマップや口コミサイト・youtube動画・動画コメント欄等に悪質な書込みにより名誉棄損等権利侵害が行われているにも関わらず、その媒体がGoogle社(外国法人)であるが故に法的措置をとることに躊躇し泣き寝入りすることのないよう分かりやすくご紹介したいと思います。

 仮に投稿者を特定し名誉棄損で民事訴訟をした場合であってもその慰謝料は、100万円以下であることも多々あります。書き込みによって受けた損失を経済的に回復をすることは難しいかもしれませんが、裁判所に違法性を認めてもらえるだけで被害者の名誉は大きく回復するものであると私は身をもって、実感しています。ですから違法な書込みに対しては、泣き寝入りすることなく淡々と自身の権利を行使しましょう。

 1.申立できるかその前提となる条件

(1)その投稿が自分に向けられたものと読める必要がある

 例えば「A社の経理部長」と書かれた場合はその投稿が自分に向けられたものであると認識可能ですが「彼は犯罪者」という投稿の場合は、彼が誰を指すのか不明なため名誉棄損は成立しません。しかし同一ページ・前後に投稿された内容から、自分に向けられたものであることを立証できれば、この問題はクリアすることが可能です。

(2)ハンドルネームに誹謗中傷されている場合基本的に不可

 ハンドルネーム(源氏名)でツイッターを開設している場合、そのハンドルネームへの誹謗中傷については個人を特定できない以上は、基本的に、名誉棄損は成立しません。しかし、そのハンドルネームが通称として使われている場合や、オフラインでのやり取りでも使われて、実際に誰を指すのかを周囲が認識可能であれば名誉棄損は成立する可能性がございます。

 例えば「松田聖子」さんは、本名ではありませんが「松田聖子」とインターネットで検索すれば、表示された松田聖子さんの顔写真等の情報から、個人として認識可能であるため名誉棄損が成立します。同じく著名な一般人である「はあちゅう」さんも、本名ではありませんが、いわばインターネット上の有名人であり「はあちゅう」さんについて誹謗中傷すれば実際に誰を指すか周囲が認識できるほどに浸透しているので名誉棄損が成立します。

2.申立てにあたり準備するもの

 匿名投稿者を特定するには、2つのステップを踏まなければなりません。第1ステップとして、google社に対し発信者情報開示仮処分命令申立を行います。第1ステップで開示されたIPアドレスでプロバイダが判明しますので第2ステップで、当該プロバイダへ契約者の住所氏名を開示せよとする訴訟提起をします。第1ステップにかかる時間は大体1カ月~2カ月程になります。

 まずは、申立てをするにあたり下記2点をあらかじめ用意しておきましょう。

①本件投稿記事(権利侵害されている投稿記事)
 →投稿内容・投稿日時・投稿画面のURLが表示されている画面を打ち出す必要があります。また1度の仮処分申立の中で、複数のアカウント・複数の投稿を指定して申立てすることが可能ですので、名誉棄損にあたる投稿は、削除される前に、証拠保全しておきましょう。
②Google社の資格証明書とその翻訳文
 →アメリカの登記簿謄本のようなものです。アメリカへ取寄せると数カ月かかりログの保存期間切れとなるリスクが増すため、国内で販売している法律事務所や業者が多数ございますのでそちらから購入しすぐに用意しましょう。大体5500円くらいで手に入ります。

また、申立人(あなた)が法人であれば法人の登記簿謄本も必要となりますのでご用意ください。

3.仮処分申立(第1ステップ)

 それでは実際に裁判所に対して発信者情報開示仮処分命令申立てを行いましょう。作成する書類は「申立書+別紙目録」「管轄上申書」「証拠説明書」「陳述書」になります。すべて簡単に作成可能なよう、ひな型をご用意いたしましたのでご安心ください。

(1)申立書及び目録作成(ひな型あり)

 まずは、申立書の作成を行います。下記ひな型を参考に、ブランクとした箇所に自身の情報を入力してください。※下記ひな型に「申立書・当事者目録・発信者情報目録・対象アカウント目録・投稿記事目録・権利侵害の説明」すべてついています。

 権利侵害の説明ですが、名誉棄損(虚偽事実を適示されてる)なのか名誉感情の侵害(死ね、破壊的ブス等)なのか、上記ひな型に記載した例文を確認しながら使い分けて書きましょう。

 記載例6は、動画に対する開示請求する際の書き方です。動画なのでどの部分が権利侵害にあたるのか「〇分〇秒の箇所」と特定しましょう。また自宅が公開されている等のプライバシー権が侵害されている場合の書き方も例として公開していますので参考にしてみてください。

 上記書類が完成しましたら2部(裁判所提出用・自分用)刷りだします(※本当は3部ですが実務上相手方代理人にはメール又はFAXで送るため2部で足ります)。

(2)その他提出書類(ひな型あり)

 申立書とは別に「管轄上申書」「証拠説明書」を提出する必要があるため下記ひな型を参考に作成しましょう。

管轄上申書
 外国法人であるGoogle社は日本国内に拠点を有しないため「管轄が定まらないとき」に該当し、民事訴訟法10条の2及び民事訴訟規則6条の2の適用により「東京都千代田区」を管轄する裁判所(東京地裁)に管轄が認められることとなります。この主張を記載した上申書を提出する必要がございます。下記ひな型をご参照ください。
証拠説明書
 下記ひな型を参考に作成しましょう(※事件番号は受付されるまでは不明なのでブランクでOKです)。


 それぞれ「申立書」「管轄上申書」「証拠説明書」の債権者氏名の横には印鑑を押します(認印でOK)。

(3)証拠添付

 申立書面が完成したら次に証拠を添付します。証拠も決まっていますので下記を参考に作成いたしましょう。債権者が提出する証拠を甲号証といいます(債務者が提出する証拠は乙号証です)。 甲1号証からはじまり、証拠が増えるごとに甲2号証、甲3号証と番号が増えます。それではこの段階で添付する甲号証(証拠)を下記に記載いたします。

甲1号証「Whois検索結果」
 https://tech-unlimited.com/whois.html へ飛んで「youtube.com」(Googleマップであればgoogle.com)とドメイン検索を行い検索結果の画面をプリントアウトします。


甲2号証「本件投稿記事」
 対象の投稿記事をプリントアウトしたものです。上述しましたが、必ず投稿内容のすべて、投稿日時及び本件投稿記事のURLが見える形で印刷してください。youtube動画であればCD-ROMに動画を焼いて反訳書(文字に書き起こしたもの)をつけて提出しましょう。

甲3号証「陳述書」
 「名誉棄損」であると主張する場合は反真実性の主張を陳述書で行います。「名誉感情侵害」とする投稿においては不要。下記ひな型を参考に、主張内容を書きましょう(※事件番号は受付されるまでは不明なのでブランクでOKです)。

  陳述書は、最後に住所氏名を自書し押印(認印でOK)しましょう。

(4)裁判所へ提出し債権者面接

 「申立書」「管轄上申書」「証拠説明書」と証拠及び資格証明書を揃えたら完成です。作成した書面と証拠等を裁判所へ提出いたします。管轄は上述したとおり、東京地方裁判所となるため、地方在住の方は郵送による申立てを行う方が良いかもしれません。

 郵送先は下記になります。郵送の場合は直接もっていくよりも受付審査に時間を要する可能性がございます。

〒100-8920 東京都千代田区霞が関一丁目1番4号
東京地方裁判所 民事9部

 受付後、債権者面接の日程を決定することになります。債権者面接は裁判官と面談を行い、手続きの流れ等の確認がございます。また明らかに開示が認められなさそうなものについてはこの時点で、取下げるよう勧告される場合もございます。債権者面接は、申立の受付から最低24時間は空けなければならないルールがあるため、翌々日以降となることが一般的です。

 裁判所の方と直近で日程調整を行い、債権者面接日に東京地裁へ出頭します。面談時間は大体30分程度になります。

 その後、グーグル社の代理人(弁護士)へメール若しくはFAXで書類を受領いただけるか確認し申立書・証拠等を一式先方の代理人へ送付します。

グーグルの場合は申立書と陳述書を英文に訳する必要がありますが、心配いりません。作成した申立書と陳述書の内容を下記サイト(DeepL翻訳)にコピペして生成された英文を印刷するだけでOKです!

 形式として英文にする必要があるだけで実際に受け取るのは日本人の弁護士ですので、英文の精度は求められません。これら一緒に送付しましょう

 その後、双方審尋期日を決める必要がありますので、先方の代理人に、出頭可能な日程候補を複数いただきたい旨も合わせて連絡してください。先方の担当弁護士より書類受領の旨と双方審尋期日に出頭可能な日時の候補が送られてきますので当該日程候補を裁判所へ連絡します。連絡方法ですが、下記書面を裁判所へFAXいたします。

※ コロナによるEMS遅延により、外国法人相手の仮処分申立は上述のとおり進行方法が現在非常に特殊になっています。よく確認しながら行いましょう。


(5)双方審尋期日

 上記で裁判所へ提示した日程候補の中から双方審尋期日を決定していただき当該日に出頭いたします。遠方で出頭が困難な場合は、電話会議で参加することが出来ますので裁判所にその旨申入れを行ってください。ここで、大体裁判官より心証言渡しがあり、開示決定が出るか否か概ね判明します。

 また、受付後に何か訂正する必要が生じた場合は「訂正申立書」を提出して訂正します。下記ひな型を参考に必要に応じて作成してください。

 グーグルはtwitter社と異なり、申立があってから、その者についてのIPアドレス等を保有しているか等の保有情報の確認を行います。日本の代理人(弁護士)からアメリカ本社へ問い合わせるため保有情報確認に3週間程かかり1回目の審尋期日までに確認が間に合わないこともあります(その場合次回期日までに提出となりますので延べ1カ月程時間かかります)。

 また特徴として、youtubeの場合は、コメント欄は管理がしっかりとされておらず保有情報確認に時間を要します(既に削除されているコメントについては、追いかけられずほとんど厳しい)。逆に動画の場合は動画投稿者のIPをしっかりと管理していますので、動画投稿者に対する開示の場合は出てくることが多いように感じます。いずれにしても1度で複数の申立が可能なため目ぼしいものは1度全て申立てにいれてみてください。

(6)仮処分命令発令

 双方審尋期日が終了して、仮処分命令の発令がされることとなった場合は、下記2点を裁判所へ提出いたします。

①供託書正本
 仮処分命令発令にあたり、担保(供託金10万円(後で戻ってきます))を積む必要があります(Twitter社の場合は基本担保を要求しませんが担保はたてるのが原則です)。電話等で裁判官より担保決定を言い渡されたら、法務局で裁判上の保証供託をしたいと申し出れば、供託手続ができます。手続後発行される供託書正本を裁判所へ差し入れます(コピー後原本は返却されます)。

・供託書正本の見本

②決定書用の目録差し入れ
 決定書の別紙となる目録を裁判所に3部差し入れます。ここで必要な目録は上記「①申立書(ひな型)」のところで作成した「当事者目録」「発信者情報目録」「対象アカウント目録」の部分です。この部分だけを印刷し、裁判所へ提出しましょう。

(7)発令後(受取り)

 仮処分命令の発令が決定すると裁判所よりいつから受け取れるようになるか連絡がございます。受け取る際は、受書が必要となりますので下記ひな型を参考に受書を作成し、裁判所へもっていってください。

 上記受書がなかったとしても申立ての際に使用した印鑑をもっていけば、窓口で受取り可能です(受書は書くのであらかじめもっていった方がいいですが…)。

 実際にもらった仮処分決定書です。

 ※本noteでは「自分で出来る方法」を紹介をしていますが、仮処分決定後は弁護士に依頼することを強くお勧めいたします。この後、プロバイダにログ保存要請→プロバイダ訴訟(第2ステップ)を行いますが、高度な知識が求められます。

 また、発信者情報開示請求やプロバイダ訴訟について経験や知識の乏しい弁護士に頼むとサイトごとに定められている特殊な対応を知らずに、ログ情報が削除されてしまい以後相手を特定することが出来なくなる可能性があります。依頼するにあたっては、その弁護士がネット誹謗中傷関係の法的手続に対して十分な経験と知識をもっているのかよくご確認ください。

4.google社よりIPアドレス開示

 仮処分命令発令後、1週間程してgoogle社よりIPアドレスが開示されます。その後、開示されたIPアドレスをWhoisに入力して検索をしプロバイダを特定します。

5.プロバイダへログ保存要請書を送付

 上述しましたように、開示されたIPアドレスをWhoisで検索し、プロバイダを特定することが出来ましたら、当該プロバイダへログ保存要請書を送付いたします。ログ保存要請書は下記を参考に作成してください。

 ほとんどのプロバイダはログが残っていれば保存要請には応じてくれますので、これによってログが消える恐れがなくなり、本案訴訟にむけて時間的余裕が出来ます。しかし、この時点でログが消えていた場合は残念ながら、相手を特定することが出来なくなります。保存期間は大体3カ月~6カ月。早ければ2週間、ながければ1年等、プロバイダによってまちまちです。

 ソフトバンク等の場合は、上記の任意で保存をお願いする書面だけでは足りず正式な開示請求として以下のテレコムサービス協会ガイドライン書式もあわせて送付する必要がございます。

 プロバイダによって手続の仕方はそれぞれ異なりますので必ずサイトごとに手続方法を確認の上、保存要請や開示請求書を発送しましょう。

 ※上述しましたが、本noteでは「自分で出来る方法」を参考としてご紹介していますが、仮処分決定後は弁護士に依頼することを強くお勧めいたします。この後、プロバイダにログ保存要請→プロバイダ訴訟(第2ステップ)を行いますが、非常に高度な知識が求められます。自身で手続きを行ったことによりログ保存期間切れとなり請求できなくなる不利益を避けるためにもご相談することをお勧めします。

 また、発信者情報開示請求やプロバイダ訴訟について経験や知識の乏しい弁護士に頼むとサイトごとに定められている特殊な対応を知らずに、ログ情報が削除されてしまい以後相手を特定することが出来なくなる可能性があります。依頼するにあたっては、その弁護士がネット誹謗中傷関係の法的手続に対して十分な経験と知識をもっているのかよくご確認ください。

6.ログの保存完了 

 上記の手続きを経て、ログの保存が完了すると下記のような手紙が書留で一週間後ぐらいに送付されます(NTTコミュニケーションズの場合)。ドコモ、ソフトバンク等も同様の文章が送られてきます。

 ログが保存されていない場合は、その旨が記載された手紙が戻ってまいります。

7.供託金取戻手続

 開示されたらgoogle社への用は済んだので、上記で法務局へ差し入れた供託金の取戻手続を行います。おおまかな手順としては「保全取下げ→供託原因消滅→担保取戻し」になります。提出書類は以下のものになります。※いずれもひな型あります。

①取下書 ②権利行使催告による担保取消決定申立書 ③供託原因消滅証明申請書 ④その受書(あらかじめ用意)⑤切手及び収入印紙(84円切手1枚・1089円分の切手・収入印紙150円)

まずは①下記保全取下書を提出しましょう。下記ひな型を参考にしてください。

 当事者目録は「申立人・被申立人」という表記になります。「債権者・債務者」と書いた目録をつかわないよう気を付けましょう。ひな型そのまま使っていただければ間違えません。

 ②権利行使催告による担保取消決定申立書の作成

こちらは、本件開示決定によって損害を受けたと考えるのであれば一定期間内に本訴訟を提訴しなさいという申立書です。一定期間内に申立がない場合は担保取戻しに同意したものとみなし担保の取戻しが可能となります。下記ひな型を参考に作成してください。

 ③供託原因消滅証明申請書の作成

供託取戻手続の際に供託原因消滅証明書の提出が必要となります。また④受書(受領書)もあらかじめ一緒に提出しましょう。下記ひな型を参考に作成してください。

取下書と供託原因消滅証明申請書は共に2部ずつ印刷し、捨印+契印します。その他、権利行使催告書及び受書(日付は空欄にする)は1通でOK

84円切手1枚・1089円分の切手・収入印紙150円を用意した上で裁判所へ提出しましょう。

8.プロバイダへ訴訟提起(第2ステップ)

 アクセスログの保存完了しましたら、時間的余裕が出来るためひとまず安心です。供託取戻手続もおわれば、次は、プロバイダへの訴訟提起準備をおこないます。

仮処分決定後IP開示~プロバイダ訴訟、本人特定まで編(各SNS共通)についての記事はコチラから

9.おわりに

 本編では仮処分申立~ログ保存要請までのやり方をご紹介してきました。現状は煩雑な手続きが必要でハードルの高さを感じざるを得ませんが、今後はもっともっと簡単にそして迅速に誰でも権利侵害を申立て、悪質な書込みを行った投稿者を特定できるようになることを望みます。これからもネット上の誹謗中傷に関するニュースもどんどん取り上げていきnote上へ公開していきたいと考えています。

 最後に、私は日頃、会社法人登記業務を中心に活動し同時に毎日YouTubeで情報発信をおこなっております。自身の専門分野である法人・企業に関する情報や、経済のこと等時事ネタを中心に毎日更新していますのでぜひ、チャンネル登録おねがいします。

 それでは、みなさま、また別の記事でお会いしましょう(^_-)-☆

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