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いちばんの仕事はあきさせないこと

もう6年くらい前の話になるけれど、とある音楽誌の方から「ヨーロッパの音楽教育についての取材をしたい」というお話があり、イタリアの国立・私立音楽院の講師何人かとお話させていただく機会がありました。
(まぁその時には色々興味深い出来事が重なったのですが、その話はまたいつか)


そのうち1人、最初に尋ねたのはトスカーナ州フィエーゾレにある私立学校で教えるピアニスト。


当時日本語を勉強しているという理由からよく遊んでいたご近所さんの古くからの知人…という完全に「知らない外国人」である私を「よかったらランチでもしながら話そうか」と迎え入れてくれました。



その時も、藤が綺麗な季節でした。

着いたら電話してね、と言われていたのでその通りにすると

「真っ直ぐ進むとホールがあるから!とりあえず中まで来て!」


と電話が切れ、とりあえず進むと学生さんたちが稽古を重ねていて、



どうやら真ん中で指揮をとっているのがその人のようでした。



先の合間に空イスを指してウインクされたのが最初の出会い。



その姿はいわゆる「先生」というよりも、その場にいる「リーダー」という感じだなぁと思ったのを覚えています。



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楽しい時間が終了し、その地域には数少ないご飯屋さんへ。
イタリアで最初に住んだのがフィレンツェだということもあり、トスカーナ料理は大好きです。


「今日はこのあとの時間をあけてあるから、まずはゆっくりご飯を食べよう。」


と言ってお腹いっぱいになり、さらにはごりっとしたデザートが届いた頃、


「今回は音楽教育というテーマで伺ったけれども、一言だけといわれたら、何を1番大事にしているの?」

と聞くと
(事前に、敬語で話すのはよそう、と言われていました)



「まず第一に飽きさせないことだと思う。

最初は特に学ぶものが多いけれど、その後もやっぱり学びが多いのは麻美もわかっていると思う。

でもそれは義務的なものではなく、僕たちが魅了されているそのものなのだから

そこで飽きさせたりつまらないものだと思わせてしまえば

相手の才能を潰すことに成りかねない。
その責任は重いって、教えるならこれだけは忘れちゃいけない。


だから自分の行動が、相手に共鳴するということを忘れてしまわないように気をつけているよ。」



「それから目の前の人が誰でも、率直に意見を言い合えるようにすること。
(※なんでも言っていいということとは異なる)

相手をブロックしてしまえばいいものはそれ以上でてこないと思うから。」


「それは共演や公演の時(対共演者・対聴衆)にも覚えていたいことかもしれない。」
という話をしながら、なんとなく彼とは友人になっていけたのを覚えています。


性格にもよるものの、演奏するということ・舞台に立つということは今よりより良いものを求めることが多く、その中で悩んだりすることはあるけれど


この日に彼と話したように

今の相手の温度感
今どこに隙間があるか
を理解しようとしながら、共に進んでいくこと。


そしてそこにしかない楽しみを共有すること

これはオペラやコンサートをする時にも今も大切にしたいなぁ。



うん。そのためにも成長しよう。

ちょうどこの時にこの友人がしてくれた別の話のことを思い出しながら懐かしく書いてみました。




来週からまた稽古が重なるので、みなさんの演奏するところを観れるのを楽しみにしながら、もう少し電車に揺られたいと思います。


着いたらまた少し、練習しようかな。

それではみなさま、良い日曜の夜をおすごしください♪


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