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天国に着くまでがquality of life

自分でも今この時になんだかすごいタイトルだなとは思うのだけれど。今日祖父が最後の転院をしました。私も予定時間に合わせて仕事を終え、転院先で祖父を迎えました。

一昨年の冬に癌がみつかり、去年の3月くらいまでと言われていて、それから1年経ちました。夏は祖父と過ごすために帰省したものの、その後も私がいない間抗がん剤始めあらゆる治療をためしていました。

その後脳梗塞で入院。今回の帰国直前のことでした。80代半ばの体力でよく頑張っているなと思います。

今日は最初に祖父が手術した当時の担当医さんにもご挨拶をして、私の顔をみた先生は、帰り際に「いわなきゃな。」という顔をしながら、私の目をまっすぐと見て「緩和ケア」という言葉を口にされました。

初めて先生にお会いして、祖父が抗がん剤の治療を始めることを決めた時、その先生に所々繰り返していただきながら、その隣で治療のことや考えられるリスク、もしもの時のことなどをメモした日のことを自然と思い出していました。思い出しながら、口では「はい、よろしくお願いいたします。」と伝え、と同時に「本当にそう(緩和ケア)なんだな。」という気持ちがストンとお腹の真ん中に落ちていく感じがしました。

この一年強、言葉は交わさずとも母と私はそれぞれ、その時の病状に合わせて情報を集めまくっていました。まくる、という表現がぴったりなくらいに。どのくらいの数字かはわからないけれど、少なくともこれまで生きてきた時間よりは確実に天に行くまでの時間のほうが近いのはわかっていたし。

念のためだけれどそれはその時を待っているという意味ではなく、でもその時が来るのであればさいごのさいごまで"その時なりの祖父らしい暮らし"をして欲しいという思いからなのです。

端折るけれどそれなりに色んなことがありました。思うことも色々ありました。

でもどんな時も私と母の間では"祖父らしさ"が基準になっていました。それは今も同じ。と同時に、それを大事にしたい気持ちが"その時のわたしたちらしさ"でもありました。

(これは2人で介護をするというより、2人の間ではその点で方向性が一致しているということです)

上からでも下からでもなく、現実をまっすぐ受け止めながらも明るくというのが祖父の生き方。(いや、たまに斜めから見るところはあるなぁ…)

癌になってから、話せる間は何度も何度も「第二次世界大戦に比べればなんてことないよ。ははは。」とわらっていました。帰省しても「毎日会えるのは嬉しいけどさ、自分のこともやってよね。せっかくの日本なんだからさ。」と言っていました。同じ日には訪問看護師さんに「孫が会いにくる日々がずっと続けばいい。」と言っていたのも知っていましたが…。

だから今も「移動おつかれさま。○○先生にまた会えてよかったね。」と話しかける。以前から祖父は先生のことを心から信頼している様子だったから。数日前には「食べてないのに髪の毛伸びてる。点滴にどんな栄養が入っているんだろうね。」と言ったら、目を開けるのもやっとなのに、顔をくしゃくしゃにして笑って見せていました。まったく、根性のある男なのです。

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QOL=quality of lifeという言葉を知ったのは18歳のころ。生活の質、という意味だけれど肉体的・精神的・社会的・経済的にみた生活の質=満足度や生きがいといわれることが多く、医療や教育の場で聞くことも少なくないようですね。私の中では「その時々のその人らしさ」と解釈しています。

この言葉、私の尊敬している大学の先生が教えてくれました。娘さんにも名前で呼びあっていたり、「結婚記念日は配偶者と、毎年(婚姻の)契約更新できるか確認する(継続にはそれなりの努力も必要&継続だけが善ではないということだったと思う)」とおっしゃったり、おもしろくもちょっと共感してしまうようなことを軽い口調でおっしゃる方です。

そしてこの言葉とともに、この本を紹介してくださいました。

べてるの家の利用者やその周りの人の姿を眺めるような書き方で、読む人に"当事者目線"を考えさせる本だなと感じたのをおぼえています。

この本を紹介してくださったとき、こんな風におっしゃいました。

いまここ(大学)には、色々なバックグラウンドの人が集まっています。

出身地、性別や性格、人生経験などは人それぞれ、一人一人がその自分のフィルターを通してものを見て感じているということ。

それぞれが人生をいく過程で、登る日もあればそうでない日もある。降りていく日にも足元にかわいい花を見つければ、山頂の景色と同じくらいまたはそれ以上に記憶に残るかもしれない。

寄り添うということは、目には見えない"その人のそういうなにか"を感じながら、相手のフィルターで世界をのぞいてみようとすることなのかもしれません。

そしてそれは自分と向き合うときにも言えること。

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どんな日も"その時の"その人らしさを見つけたい。

今この色々な人たちの色々なおもいが溢れてきそうな時も、それぞれが今の自分にとって大切なこと、その気持ちにそっと寄り添っていけたらと願わずにはいられません。

そしてまた次のステキな景色を見つけられたら、その幸せを微笑んで味わいたいものです。

本日のBGM




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