見出し画像

食べたいものを買わない生活: オーガニック野菜の定期便

マルシェ。なんだかお洒落な路地にお店が立ち並ぶ中で長いバゲットが買い物かごから飛び出て、リンゴを齧りながらお買い物をするような異国感溢れるこの言葉。移住してからそこかしこで聞くようになりました。私たちが住むエリアでは、いくつかの場所で寒い冬を除いて、週末にどこかしらで地元の珈琲屋さん、手作りのクラフトをする人たち、ドライフルーツを作る方、地元のーーーなどを染料にしてアップサイクルで素敵な染め物を人などいくつかのお店が広場に集まって1日限定のマルシェが開かれます。

移住して間もないころは、都会生活で染み付いたショッピング願望のようなものがまだ抜け落ちておらず、毎週末どこかでマルシェがないものかとGoogleの口コミやら、周りの人から聞いた情報を頼りにあっちのマルシェ、こっちのマルシェと駆け回りました。そんな時に、我が家に一番近いエリアで開催されているマルシェで、オーガニック農家さんに出会いました。その方は私と夫と年齢がそこまで変わらない年齢の男の方が、ご夫婦で有機農業をやっていて、その野菜を定期便で自ら届けているとのこと。

オーガニック野菜も、野菜の定期便も考えていなかった私たちですが、その方が「どうぞ試食してみてください」と勧めてくれた切り干し大根がとても甘くて美味しい!普段切り干し大根を食べない息子もバクバク「美味しい美味しい」と頬張っているのを見て、夫を説得し、その場で有機野菜の定期便に申し込みました。

それからというもの、毎週(たまに旅行などでスキップをする時もありますが)、農家の方自らが、我が家の玄関まで大きな段ボール箱いっぱいのお野菜を届けてくれる生活になりました。お野菜と一緒に農家の方が作ったお便りも届きます。お便りには農園の最近の様子、入れてくれた野菜のリスト、そしてこうやって今回のお野菜を食べると美味しいですよーというレシピが書かれています。

そういったお野菜の中には、今まで見たことがないようなもの、仮にスーパーで出会っても買おうという思いにまで至らないかもしれないお野菜も含まれています。はじめのころこそ夫は「うちには玉ねぎとじゃがいもとニンジンとトマトだけあればいいのに」とブーブーと文句を言っていたり、私も目の前の「はじめまして」の野菜にどう料理したらいいのだろうと戸惑うことも多かったのですが、徐々に農家の方が届けてくれるお野菜が日常のかけがえのない一部になりました。


食べたいものを買わないということ

今までの私たちの生活は、「今度これを食べたいよね」という自分たちの計画のもと、スーパーに行ってそれに必要な野菜を買う毎日でした。日本のスーパーは季節に関係なく、欲しいと思うものは大体何でも揃っています。自分たちの欲求を解消する手段としての野菜があったとも言えるかもしれません。それを人は「便利」とも言い換えるのかもしれませんが、改めて振り返るとかなり人間中心のライフスタイルだったなーと感じます。

一方、有機野菜の定期便になってからは、農家の方の畑で採れるその時々の「旬の野菜」が届くようになりました。自分たちがその時食べたい、欲しいと思ってたかに関わらずです。例えばレタスが1ヶ月連続で届いたり、(夫が苦手な)ネギが連続で届いたり。自分たちでは買おうと思ったことがないビーツが入ってたりします。
食べたいものを買わない、その時々に採れる野菜を食べるようになって、自然の一部に戻ってきたように感じます。それは不便ではあるものの、これが自然のリズムの中で暮らすことなのだなと。

季節によって採れる野菜は違って、その時の天気や畑の状況にあった、まさに自然の恵を、私たちがたまたま頂いている。便利さ至上主義になりかけていて、自然のサイクルや季節なんかどこそこ、今の自分が食べたいもの第一優先みたいな生活が、いかに不自然だったのか思い出しました。


画像1

猪が食べるのか、人間が食べるのか

今まで、野菜をスーパーで買う時は、自分たちがその野菜にありつけるのが当たり前だという感覚があった気がします。何かほしいお野菜があって、それがたまたま不作だったという時は、まあちょっと値段がはるけどそれでも買うかどうしようか、と考えるだけで、それ以上に農家の人たちが直面している苦労を想像するところまで自分の意識は向いていませんでした。

一方、有機野菜の定期便には、毎回農家のご夫婦が順番に書かれているというニュースレターの中で、農業の楽しさと同時に時に、彼らが直面している苦労も時に語られています。今まで農家の人たちの声を直接聞くという経験をしたことがなかったので、私にとってそのニュースレターは自分の知らない世界をこっそり見させてもらっているようで毎回ワクワクします。そんなお便りの中で「一生懸命育てていた野菜が、猪に食べられてしまいました・・・!!」という報告や、「今年こそは猪対策をして、しっかりこの野菜を皆様に届けたいです!」とありびっくりしました。そういった農家の方が猪と必死に対峙しながら試行錯誤されているという報告をよんで初めて、あー野菜は人間のためだけにあるのではなかったのか!と当たり前のことに気付きました。他の動物も欲しいもので、たまたま私たち人間が他の動物の代わりにありつけているだけなんだ、と。

お野菜の種が土の中から芽を出して太陽の光を受けてぐんぐんと育っていく過程で「人間用」「猪用」なんていうラベルが付いているわけではない。私たちの食卓に野菜を食べることが猪から守ための工夫が出来る能力がたまたまあったり、たまたまその工夫が効果を出しただけ、という偶然の結果なんだなということをひしと感じます。

猪より先に人間に野菜を届けようと苦労している農家の方のお話しを聞くことで、今まで何も考えずに言っていた「いただきます」の意味を改めて考えるようになりました。お金を払えばもらえて当たり前なんかじゃ全然ないのだなと。


画像2

食べることに真剣に向きあう

有機野菜の定期便を食べるようになり、自分の身体の声をしっかりと聞こう、という気持ちがムクムクと湧いてきました。

一日に三回もある、自分の身体に外部から何か異物を入れるという行為に対してはあまり積極的に今まで考えていなかった自分がいます。皆も当たり前にやっていること、というのが前提にあるのか、今までは食べる行為にそこまで意識的になっていなかった自分がいました。なんとなく朝になって時間になったから、お腹の空き具合に注意を払うでもなく習慣的に朝ご飯を食べて、お昼は気分転換がてら食べて、夕飯も時間が来たら食べると決まったもの。それ以上でもそれ以下でもない、淡々と続く日常の一部にただただ組み込まれていただけでした。

今、私はお腹が空いているのかな。何を今私の身体は欲しがっているのだろう。
そんな風に都度都度自分に問いかけて出てきた答えでその時の食べるを決めていくということ。栄養バランスがどうとか、食べなきゃいけないとか、色々と左脳で考えて、自分の身体に取り入れるものを誰かの基準で決めていくのではなく、自分の状況や感情に合わせて自分自身で決めることは、なんだか結果として食べることがとても楽しい時間へとつながっていった気もします。
 


画像3

地方移住して、たまたま訪れたマルシェで、偶然出会った有機野菜農家さん。その方との出会いで、私は世界が広がっています。なんだか人生って面白いです。そんなことより、美味しいお野菜が食べれたり、ワクワクして料理が出来たり、そんな風に日常がちょっと今までよりカラフルになっていることだけでも、十分とっても幸せです。

-----------

こちらのオーガニック農園さんは、「陽だまり農園」さんです。HPはこちら。https://hidamarigrange.amebaownd.com/
県外にも郵送しているということなので、ご関心がある方は、ぜひ陽だまり農園さんにお問い合わせください^^

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?