月イチ感想・4月〜5月中に読み終わった本

4月7日に発令された緊急事態宣言。今では解除を待ち望むような、でも解除されたからって新型コロナウイルスがいなくなるわけではなく不安を感じるような、そんな気分で毎日過ごしています。

そんな私の自粛期間中はもう、心の隅にどうしようもなく居座っている不安を無視するために、目についた本、映画に片っ端から手を伸ばし、人気のないところを徘徊しております。文字通り充電期間です。

特に大きな作業もなかったので、これまでに読み終わった本は、漫画も含めて9冊(シリーズ)。普段から本を読み、映画・動画を見、ラジオを聞き、と文化的コンテンツを満喫しているものの、自分はひたすらそれを消費するだけ……という生活がいいかげんイヤになってきたので、せめて読書感想文だけでも書いていこうかなと思います。

1:『夜と霧』(旧訳版)

池田香代子さんによる新訳版を読み終えたのが先月。言葉遣いもやわらかく、エッセイのようになっていた新訳版と比べて旧訳版はどうなのだろう? と手を伸ばしてみました。図書館で貸し出し。

旧訳版はまず、本編の前に付け足された資料が圧巻でした。有名なアウシュビッツ・ビルケナウだけでなく各地の強制収容所でどれだけのことが行われてきたのか、まとめられています。
これだけでもうお腹いっぱい。本編の方は、新訳版から入った私には少々硬く感じました。軽い気持ちで読むなら新訳版、きちんと資料的に読みたいなら旧訳版、でしょうか。いずれにせよ、読後には希望に満ちた爽やかさを感じます。

関連書として『フランクル『夜と霧』への旅』『それでも人生にイエスと言う』が気になるところ。
「人間は誰でも心に強制収容所を持っている」とはドクター・フランクルの言葉でしたっけ。

2:『くまのプーさん 心がスッキリする幸せのヒント』

家族が読んでいたので(&勧められたので)読み始めた一冊。

なんていうんでしょうか、このかわいさ。おそらくいろんな作品から引っ張ってきたのであろう、いろいろな表情のプーさんが禅的な言葉とその解説とともに見ることができます。ですが、プーさんのかわいさの印象があまりに強くて、肝心の言葉のほうが頭に入ってこないのでした。

禅的な書籍で言うと、『小さな心から抜け出すお坊さんの1日1分説法』が少し気になっています。

3:小説版『屍鬼』

小野不由美さんの小説を読むのは高校生ぶり。当時は「十二国記」シリーズを読んでいました。外出も会う人も少なくなるなかで気分が鬱々としてきた時、ツイッターで「気分が暗くなった時はさらに暗い本を読むと良い」という投稿を見ました。そこで、読み始めようと思ったのがこの本です。

小野不由美さんのホラー本は、かなり怖そうでなかなか手が出せなかったんですよね。このタイミングじゃないと読まなかったと思います。

自粛期間中だしなるべく人に会わないで購入しようと思ったものの、この本、電子書籍では出版されていないんですね。
調べてみたら作家さんの方針で電子書籍化されないものがあるらしく、『屍鬼』も小野不由美さんの意向により、紙の書籍でしか読めないとのこと。amazonには在庫がないしhonto通販だと送料がかかるし、それならば、と古書店から通販で買い求めました。
文庫版5冊セットで1000円行かない価格。作家さんには申し訳ないですが、個人的には大変助かります。

孤立した村「外場」で、ある時期をさかいに次々と住人が死んでいく、という物語で、込み入った構造ではありません。
でも、登場人物がものすごく多くて把握するのが大変です。

途中で「これ誰だっけ」と思うこともしばしば。仕方なくwikipedia で確認するもネタバレを見てしまい、前知識なしで読み進めていたのが台無しということもありました。出てきた人をメモしながら読むことをおすすめします。

ちなみに、前半は日常が丁寧に描写されていて、後半から一気に血生臭くなります。夜には暗闇が少し怖くなります。気をつけてください。

4:『荒ぶる季節の乙女どもよ。』

電子書籍に、kindleに続いてhontoを導入しました。漫画は関係ありませんが、選択できるフォントがkindleよりも1つ2つ多くて良さそうです。ページを繰る動作はkindleのほうが好きかな。

こちらの漫画は、hontoで1〜2巻が無料になっていたので試し読み。後で知りましたが、アニメ化もされていたようですね。
wikipediaでは「文芸部に所属する5人の女子高生が性に振り回され、悩む様子が描かれる。」と書かれています。

まあ本当にその通りなのですが、考えてみると、性のことって本当に必要になるまでほとんど知らされないですよね。親からも、他の大人からも。タブーとされているけれども必要なこと。
それに漫画の登場人物たちがどういうふうに感じてどういうふうに行動していくのか、とても気になって全巻購入しました。

群像劇なのですが、それぞれのストーリーが立っていてとても面白い。一つの正解を求めなくてもいいのだなぁ、と改めて思います。最後まで大きな、精神がやられるほどの波乱もなく、安定した気分で読めました。

5:漫画版『屍鬼』

小説版を読んだので、漫画版もと思いました。こういうの芋づる式読書っていうんですっけ。映画でもよくやりますが、アレンジされている部分や共通した表現が見えて、とても興味深いです。

原作のストーリーとは、おおまかに一緒です。詳しく書くとネタバレになるので書きませんが、ところどころにアレンジが加えられていて、その違いを楽しむのもまたよいかなと思います。
そしてなんと言っても特徴的なのが絵。藤崎竜さんの作品は「封神演義」でも見ていましたが、本当に独特ですね。

他の方がブログで「漫画を先に読むと登場人物のイメージがつきやすい」と書いていた通り、漫画→小説の順番で読むと混乱が少なくてよいと思います。
または、なにせ独特な絵柄なので、小説で先に自分の”外場”を描いておいて、漫画はまた別物として楽しんでも良いかもしれません。

6:『82年生まれ、キム・ジヨン』

ツイッターで韓国の「n番部屋事件」のことを知って、少しだけ、本当にすこーしだけ調べた時に、この本のことを知りました。こちらも読み終わったあとに知ったのですが、フェミニズム的な本として取り上げられることが多いようですね。

本書の主人公は「1982年生まれのキム・ジヨン」という女性とそのお母さん(おばあちゃんもいたかな……?)。女の子よりも男の子が欲しがられる、息子には個室を用意しても娘ふたりが寝るのは同じ部屋、学校に行かせるのも息子が優先されるし、賃金は男性の方が多い。
そんな女性の境遇が、ふたり(おばあちゃんもいたら3人)の人物の半生を通して描かれています。

この本のすごいと思ったところが2つ。
1つ目は、ジヨン氏始め、この本に出てくる女性が、自分の性別が原因となる生きづらさを他の人には味わわせないようにしているところです。
その生きづらさをお母さんは娘が自分の部屋を持てるようにし、ジヨン氏の上司は職場での女性の境遇を改善しようとしています。

もう1つは、物語の随所に、現実の統計データが付け加えられているところ。これにより「小説という形はとっているけれども現実に起こっていること」という印象を受け取りやすくなっています。

私自身もソフトなフェミニストを自認しているがゆえに良い本だと思った節もありますが、この本は、フェミニスト本としてではなく1人の人間が経験した(している)こととして読んでみてほしいと思います。

7:『鬼滅の刃』

天の邪鬼なんでしょうか、あんまり流行っているものには手を出したくないと思っています。アニメの1話をみても面白と思えませんでした。
ただ、連載が本誌で終了したことと、どこかのレビューで言葉の使い方が面白いと書かれていたことで、ワンピースなみに続かないのなら、そんなに面白いなら、と思いました。

そう思ってhontoを見たら、割引クーポンがありました。本当に便利です、電子書籍。

言わずもがなですが、話は鬼退治です。何がそんなにヒットするのだろうと思っていたのですが、個人的に「おっ」と思ったのが、主人公の炭治郎がめちゃめちゃやさしい。
人をたくさん喰らって多くの人に憎まれている鬼なのに、炭治郎からするととても可愛そうな人になる。日々インターネットの防風にさらされ、生き馬の目を抜くような生き方一部で強要されるなかでは、この優しさが心に染みます。

それから、師匠が次々と変わるのも「おっ」と思いました。映画とかだと一人に師事して技を習得することが多いです。数は読んでいないのでわかりませんが、同じジャンプでも師匠は一人、複数人いても長期間の付き合いだったりするのではないでしょうか。
一方、この漫画では師匠が頻繁に変わり、時間の流れもわからないほど修行の描写が少ない。つまりテンポが良い。
詳しいわけではありませんが、なんだか新しく感じる漫画だな―と思いました。

ひとまず20巻まで購入しました。

8:『自分だけの答えが見つかる 13歳からのアート思考』

ちょっと前だったら「美術思考」って言っていたと思いますが、いつから「美術」よりも「アート」と言われるようになったんでしょうか。

私はアート信奉者なので、アートを介していろんな人が自分を表現しやすくなったり、自分のことを見直すことができたり、他人のことも理解しやすくなると考えてます。
もう1億総アーティスト時代です。この言い回しもすぐに古くなるんでしょうね。

アートの考え方、とてもわかりやすくまとめられていました。
13歳と書いてありますが、ふんわりと「作家ってどんなこと考えてるの」「アート自体意味分かんないんですけど」と思っている人は読んでみるといいかもしれません。

そしてよりアートに興味が湧いたら、映画の「ミステリアス・ピカソ- 天才の秘密」を見てみてください。
延々とピカソが絵を書いている映画ですが、どんな順番で筆を進めているのか、どんなふうに絵を完成させているのか、よくわかります。個人的には大変おもしろかったと思います。

9:『哲学ねこソフィーと学ぶ「働き方」幸福論』

やっとこさ最後の書籍。一気に9冊分書くのは大変ですね。

こちらの本はでは、哲学をかわいい漫画で学ぶことができます。といっても哲学を教えてくれるのはメガネをかけた青年「ショセイ」さんで、哲学ねこ「ソフィー」は横でツッコミを入れるだけ。それがかわいいんですけど。

仕事に悩む「つむぎ」さんは、読者と同じような存在です。哲学のことをまったく知らないつむぎさんにショセイさんが教えてくれるので、わかりやすい。
ひとつひとつ咀嚼して、理解することができます。

それだけでなく、登場する哲学者たちの生涯に触れられているのもとても楽しくて、今はとても有名だけれど仕事では全く報われなかった!とか、女性関係が謎だった!とか、それぞれの人物像も知ることができて、親近感もわいたりします。





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