マイガーデン

     (2018、10,10)

 今年の夏は本当に暑くて、連日35度越えの猛暑日が続いた。
冷房がきらい、などとは言っておられず、「いのちにかかわる暑さです」というTVの呼びかけに朝からリビングに引きこもり、畑に出るなどもってのほかである。
おかげで植えていたキュウリは早々と枯れ、水不足でトマトも茄子も実が太らない。
ただ、草だけはすくすく伸びて、マイガーデンは悲惨な状態である。

 9月も中旬になって私の夏バテもようやく回復し、元気を出して畑の草取りから始める。
顔から流れる汗を拭いていると、首に巻いたタオルはじっとりしてくる。
あまり無理をしないようにと、3日かけて大草を抜き、大きな袋に6杯になった。
 お彼岸中に秋物を植えなければと頑張って、何とか26日に大根、カブ、小松菜、春菊、ほうれん草、福立菜、菜花の種をまいた。

 この畑は普通の貸農園の4倍くらいあり、夫が30年かけて丹精して作り上げたものだ。
農作業など全く知らない夫が何を思ったか、家を建てて余った山土を一輪車で隣のスペースに運び、畝を作った。
いつまで続くかしらと見ていたが、参考書を買ってきて読んだり、患者さんに手あたり次第聞いたり。耕すたびにバーク堆肥をたっぷり入れて、見事な畑に仕上げ、いつの間にかひとかどのものしりになった。
「気ままに土と向き合っているのは楽しいし、いつ始めても、いつやめてもいいから気が楽だ」
「野菜は成長が早いから、日々の変化が面白い」
 常に呼び出しを意識している彼は、ことのほか農作業があっていたようだ。
私も子供のころは普通に農作業を手伝っていたから、少しはわかる。二人で「できたらいいし、できなくてもそれなりに」といろいろなものを植えて楽しんだ。

 最後の頃夫は体力をなくし、それでも時には畑に出てひと時を過ごした。
また実のなるものが好きで、「もう少し右、もちょっと左」と私を指図しながら、ザクロやヘイジョアを植えた。

 ひとりくらしになり、病院の厨房も委託になって、野菜の差し入れも必要なくなった。畑を作らなければならない意味はない。
でも、条件のいい日、気温がよくて曇り空で、少し風があって・・・という日に畑に出て土に触るととても気持ちがいい。
土は黒々としてサクサクで、大地と一体になったような気分になれる。
 
 ほうれん草はいつも失敗するけれど、今年は何とか芽が出た。酸性の肥料はよくないと書いてあったけれど、牛糞を入れてしまった、大丈夫かしら。これからはせっせと間引きをしよう。気がせいているときはこんな仕事はできないけれど、今はたっぷり時間がある。
 いい野菜が出来たら、もったいぶって皆さんにおすそわけ、できなかったらそれなりに。これからの成長が楽しみだ。

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