ちびっこ芋ほり

             (2021、10,15)                  
 
 3年前から近くの保育園の評議員を頼まれて引き受けている。
 あさひ保育園は井上医院ができる1年前の設立で、いわば同じ時代を生きてきた盟友だ。看護婦さんたちが大変お世話になった。
 一年に一回会議に出るだけでいい。今年の評議員会で
「去年からコロナの影響で遠足に行けない」と聞いた。
それなら我が家で芋ほりをして貰ったらと伝えると、園長先生がとても喜んでくださった。
 
 真夏には元気のなかったサツマイモが9月になって雨が降りその後好天が続いて、どんどん大きくなった。葉っぱが生い茂って足を踏み入れることもできない。試しに端っこを掘ってみたら赤くて大きなサツマイモが連なって出てきた。これなら大丈夫と保育園に電話した。
「いつでも結構です、掘りに来てください」
 前日に茎を刈って取り除き、大きなごみ袋5杯になった。スコップを入れて周りの土を柔らかくして掘りやすくしておいた。
 
 当日は抜けるような青空。保育園からは住宅街の中の道で、子供の足で10分もかからない。約束の10時前になると、ぴーちくぱーちくにぎやかな子供たちの声が聞こえてきた。
 四歳児の年中さん16名、手をつないで2列になり、おそろいの白い帽子をかぶって二人の保母さんと園長さんとでやってきた。
「どうぞよろしくおねがいしまーす」
 畑に入ると、子供たちは今から何が起きるのか分からなくて、怪訝な顔をしている。保母さんが「こうしてさぐってごらん」と土の中に手を入れたら、大きな芋が出てきてびっくり。
 それからは賑やかな事にぎやかな事。
「わー」「わー」「でかいのーでてきたー」
「せんせーとれなーい」「このむしなあに」
「わーすごーい」「せんせー」「せんせー」おおさわぎだ。
 掘り出したサツマイモの山を囲んで、みんなで記念撮影。芋ほり大成功だ。
 掘った芋は園児が、それぞれビニール袋に入れて持って帰ることになった。大きな芋を3個も入れると、園児には重たそう。
 最後のごあいさつ「どうもありがとうございました」 保母さんが人数の確認をして、また二列になり、にぎやかなおしゃべりと共にかえっていった。
 
 いつも静かな我が家に突然、かわいい嵐が吹き荒れたような時間だった。
数日後園長先生から写真とお礼状が届いた。
「掘った芋でスイートポテトにして給食で食べました。とても甘くて子供たちにも大好評でした」
スイートポテトをお行儀よく食べている16人の写真。みんなおりこうさん。
 四歳児には、芋ほりはきっと初めての体験だったのだろう。
私にとっても、楽しい初体験だった。 

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