『シン・ウルトラマン』は、ウルトラQ好きに向けた庵野式ラブレターだった!?

先日、『シン・ウルトラマン』(樋口真嗣監督)をついに観てきました!

『シン・ウルトラマン』は、『新世紀エヴァンゲリオン』TVシリーズや『シン・エヴァンゲリオン劇場版』シリーズで知られる庵野秀明氏が企画・脚本を手がけ、人気俳優の斎藤工が主演した作品です。5/13から全国401館(IMAX39館含む)で公開されていますが、なんと15日までの3日間で観客動員数64万人、興行収入9.9億円を記録!
まさかの2022年の邦画実写作品でNo.1の大ヒットスタートを切ったことがエンタメニュースなどで話題になっています。

この記事では、1966年にTV放映された日本で初めての本格特撮テレビ作品『ウルトラQ』や、1966年〜1967年に放送され今もなお愛される『ウルトラマン』の再放送やビデオ作品を擦り切れるほど視聴し、誕生日にはウルトラ怪獣事典やウルトラマンシリーズのフィギュアを親におねだりしまくった私が、作品を観て感じた感想をツラツラ書きます。

なお、映画の細かなあらすじはネタバレになるので割愛しますがポイントは以下の通り。

作品のポイント

●冒頭オープニングのタイトルバックはウルトラQ と初期『ウルトラマン』好きが感涙する演出。かつ、シン・エヴァっぽい振り返り方も良き❤️
●とにかく劇中の演出があざとい!斎藤工が最初から違和感ありまくりの喋り方したり(外星人感を演出⁉️)、他キャラクターのセリフの要所要所にめっちゃ昭和を感じるWord満載!
●作品中盤&終盤までは完全に庵野秀明ワールド。なのに、終盤は「ウルトラ警察隊隊長」のあのお方が登場!
●しかも、初代ウルトラマンで唯一ウルトラマンを倒し"最強の敵”と謳われるあの▲ットンとの対決!対決の行方は・・・

禍威獣やオープニング、随所に現れる初期「ウルトラ」シリーズへのリスペクト


主人公の名前がまさかの神永新二(シンジ)だったり、長澤まさみ演じるヒロインが超巨大化したり(!)、なんか一部の禍威獣(カイジュウ)の名前やらルックスが、使徒っぽくアレンジされていたり、あの方の声がエヴァでおなじみの有名声優さんの声だったり。。。劇中に散りばめられたシン・エヴァを彷彿させる仕掛け、CGなどを使った戦闘シーン他、見所やお楽しみはたくさんありましたが、個人的ハイライトは何と言っても、予告編終了後からの『シン・ウルトラマン』というタイトルバックと「シン・ウルトラマン」にいたるまでの回想を兼ねたオープニングでした。

ウルトラマンシリーズのなかで最も古い作品にあたる『ウルトラQ』、そして初期『ウルトラマン』のタイトルバックといえば、まるでサスペンス劇のような緊迫感溢れるBGMと、作品タイトルが渦巻きのように回転しながら登場する演出!
『シン・ウルトラマン』のタイトルバックは、かなりあれを意識した演出の仕方で、タイトルバックが始まった瞬間に、完全に幼少期にタイムスリップした感覚を覚えました!

狙いは『ウルトラQ』と初期『ウルトラマン』の断絶を溶くこと!?

かつ、驚いたのは、作品のオープニングです。
オープニングは、主人公・新二らが所属する禍特対が結成に到るまでをまとめてあり、あの『シン・エヴァンゲリオン劇場版:II』を観た人なら「あれ?デジャブかな?」と感じてしまう感じの編集の仕方(※完全に狙っていますね。。。)なのですが、最初に倒した禍威獣がなんとゴメス!
そう、『ウルトラQ』の怪獣と同じ名前だったのです。そして、マンモスフラワー、ペギラと続いてラルゲユウスまでは『ウルトラQ』に出てきた奴らと名前もルックスも酷似。・・・・「あれ?このまま旧シリーズオマージュ」が続く感じかな?と思っていたら。。。なんか聞き覚えのないカイゲルって名前のやつが。。。。かつ、パゴス完全に使徒っぽくない???」という展開に突入し、次第にシン・エヴァの序→破みたいなパラレル感が出てきて、現在のシーンに切り替わります。
個人的に『ウルトラQ』は大好きな作品ですが、旧作の中では、『ウルトラマン』以降の作品シリーズとは、ヒーローが登場しないまったく独立した世界観・物語シリーズとして別で位置付けされていたので、まさか『シン・ウルトラマン』内で、『ウルトラQ』の存在を匂わせてくるとは予想もしてませんでした!

ただ、あとから考えてみれば、このオープニングの回想で登場した禍威獣たちが、巨大カタツムリ、花などの動植物やゴジラ的な4本足の生物を巨大化したものたちだったのに対して、オープニング以降に登場する外星人たちが得てして二本足で歩行や戦闘をし、人間やウルトラマンの姿に化けられたり、言語を理解し電波なども操れる、いわゆるかなり高度な知的生命体だったことを考えると、冒頭にウルトラQのオマージュを入れることで、外星人の「進化」や、人間の置かれている状況の「変化」を描くための禍威獣登場だったのかもしれません。
でも、ウルトラQ好きとしては、自身も特撮マニアな庵野監督が「Qこそウルトラシリーズの原点!旧作では、単独扱いにされがちなウルトラQとウルトラマンシリーズの連続性をあえて持たせたのでは?と考えています。

終盤に出てくるあの台詞は、旧作では
「そんなに地球人が好きになったのか、ウルトラマン」だった

そして、公開予告や特報などでも印象的だった「そんなに人間が好きになったのか、ウルトラマン」は、初期『ウルトラマン』では「そんなに地球人が好きになったのか、ウルトラマン」でした。
「地球人」を「人間」という言葉に変えると、従来の宇宙から来た外星人と地球人という対比やSF作品的な要素だけでなく、ちょっと哲学的なニュアンスを感じ取ることができます。
異なる星から来た訪問者達を「異星人」ではなく「外星人」と表現したのも、あくまでも地球は宇宙の中の一部分でしかなく、訪問者達も地球に住む人間と同様、星に生きる生命体のひとつにすぎないんだ、というメッセージだったのではないかな、と個人的には感じています。

シン・ウルトラマンは上映時間1時間 53分。かなりスピーディーにエピソードが進む上、1作品に要素を詰め込んだ作品でした。個人的には、最後もう少し余韻とかエピローグ的なものを観てみたかった気がしますが、ラストの戦闘やシーンは旧作の流れを壊したくなかったから極力余計なアレンジ・セリフは入れなかったのかな、と。。。そこにも庵野氏のリスペクトを感じましたね。

この作品は、シン・エヴァのように何作にもわたってエピソードが作られる作品ではないと思うので、今後続編が公開されることはないかもですが、個人的には新二たちのその後が観てみたいなあ、と考えながら劇場を後にしました。

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