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ベルファスト観に行ってアイルランド風邪に浸ってみた

「どこにいても、自分が何者か分かっていれば不幸にはならない」

先日、映画館に『ベルファスト』を鑑賞しに行きました。一行目の言葉は、劇中ベルファストを離れるか否かで揺れる家族と、もし離れてしまったら、と悩む主人公にたいして祖父が投げ掛ける言葉。この作品を観たときにあまりに今の時勢とリンクする要素が多く、感じたことを吐き出したかったので記事に書きます。

映画の細かなあらすじはネタバレになるので割愛しますがポイントは以下の通り。

作品のポイント


ケネス・ブラナー(製作・監督・脚本)が実際の幼少期に経験した北アイルランド紛争下のベルファストの様子を投影した作品。1969年、北アイルランドの街ベルファストで起こったプロテスタントの暴徒によるカトリック住民への迫害と攻撃。最終的に荒れていく故郷に別れを告げることになったある家族の物語。

2022年4月現在、新型コロナウィルスの感染拡大から時間がたち、ようやく各国の待機期間や渡航制限は緩んできた状況ですが、ロシアによるウクライナ侵攻が行われ、また新たな分断が生まれています。

祖国や家族、恋人や友人など大切な人を奪われたり、命を守るために海外に脱出したり、暗い塹壕の中に身を潜めたり。様々な生活インフラが破壊されたり、市民がみんなで爆弾などを作ったり。。。TVを観ていても、21世紀に行われていると思えない戦時中の光景が広がっています。

そして他方、ロシアは、世界中の国々や国際機関、銀行、世界中の企業からも排除される傾向にあります。またそのためInstagramが使えなくなり、かわりにTelegramというロシア人が開発したアプリに移行して情報を発信している有名人やスポーツ選手もいます。

私の好きなフィギュアスケート界でもロシア人アスリートの国際試合からの排斥がおこなわれています。2022年3月23日~26日にかけてフランスのモンペリエで世界選手権が行われ、宇野昌磨選手と坂本花織選手のシングル競技カップル優勝🏆️と、三浦璃来&木原龍一組による日本勢最高の🥈が大きな話題でしたが、この大会はロシア人スケーターを除外した大会となりました。個人的には、オリンピック銀メダリストのアレクサンドラ トゥルソワ選手や金メダリストのアンナ シェルバコワ選手、カミラ ワリエワ選手の出場を楽しみにしてましたし、男子スケーターのミハイル コリャダ選手はコロナの影響でオリンピックに出場できなかったので、世界選手権で滑る姿を絶対見たかった😢彼らをはじめ、世界選手権に出場できなかったロシア人スケーターは国内大会「チャンネル ワン杯」に出場。ロシアメディアは世界選手権を「モンペリエの退屈な大会」と表現したり、ロシアフィギュアスケート界の重鎮が、ロシア除外の世界選手権で優勝した坂本選手に「我らの女の子なしでは本当の勝利ではない」的な発言をしたことでも話題になりました。もちろんこの言葉は、とても誉められた発言ではありませんし、この発言をしたタラソワさんはあの浅田真央さんを指導した有名なコーチで、日本とも関わりの深い方。日本のスケートファンやフィギュアスケート関係者からかなりひんしゅくを買いました。

好きなアスリートが見れず、好きなスケーターが尊敬するロシアの業界人がたたかれる、とても悲しい状況。21世紀、これまでにもたくさん戦争はありましたが、正直こんなに悲しい気持ちはじめてです。

9.11のアメリカ同時多発テロやその後の米軍による侵攻、アフガニスタン紛争などなど。しかし、ニュースで大々的に取り上げられているのを見ても、正直遠い世界の国の事だと他人事のように感じてしまっていました。

でも、コロナ禍で分断が始まって、そこから少し収まって来たと思ったら別の分断が生まれる。

平和な日々のなかでは、問題なかった気がするのに、リモートのみのコミュニケーションになったとたん、うまく意志疎通が取れなくなりいさかいやトラブルが多発してしまったり。この情報化社会のなかでは分断は戦争だけではなく、日常に溢れています。

「どこにいても、自分が何者か分かっていれば不幸にはならない」

製作者はまったく意図してなかったようですし、不本意な部分もあると思いますが、私にとっては、今の情勢や自分の状況にリンクしてとてもグッと来る作品でした。

劇場版シン・エヴァの渚カヲルによるセリフ「希望は残っているよ。どんな時もね」にどこか通じるセリフ。

今ウクライナ国内や避難先で不安を抱える人、ロシア国内で様々な分断や自分の無力さに心が折れかけている人にぜひ観てほしいと思います。


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