もうひとつのレッスン
先月から、バレエを再開している。
バレエをしている時
バレエのことしか考えないのがいい。
レッスンでの動きも、その場で覚えその場で実践する。
バーレッスンは、だいたいの動きが決まっているのでなんとなくできてしまうが、ワルツやバリエーションはそうはいかない。
マーキング(フリを覚える時間)もあるが、原則ちゃんと覚えられないまま進んでいく。
順番やステップが覚えられないまま踊ることがあって、わーむりー!!と心の中で思いながら、盛大にミスる。みんなもミスる。
これがすごくいい。
失敗しても許される空間。
頭と身体を使ってPDCAを実践できる機会なのだ。
それから、バレエ=柔軟性が求められると思われがちだけど、それは解剖学的に正しい動きをしているから。
足を横に開くのが独特かもしれないけれど、股関節の可動域を広げるためには、ああする以外に方法はない。
足を耳まで高くあげるためには、足をまっすぐ揃えた状態ではだめ。
大転子という骨のでっぱりが骨盤の骨にあたってしまうから。
それを下ろすために、足を横に開くのだ。ペンギンじゃない。
誰だって柔軟とバレエを続けていれば、150°くらいの開脚はできるようになる。
股関節の柔軟性と大転子という骨のくっつき具合によるけれど。
最近、またバレエにハマり出したのにはちゃんとした理由がある。
本当はダイエットと言いたいんだけど
大好きだった先生が亡くなったことを知ったからだ。
その先生は、私にとっての3人目の先生で、とても厳しかった。
私は、ティップネスというスポーツジムのバレエクラスに通っている。
バレエというと厳格なイメージがあるかもしれないが、ジムのクラスはモチベーションもレベルもさまざま。
大人になってから始めた人もそこそこいて、結構ラフな感じなのだ。
だけど、その先生はラフを許さない先生だった。
年始のレッスンでは
今年できるレッスンは50回ほどです。
あなたたちが、1回1回どういうスタンスでレッスンに望むかが、身体に、動きに、そしてバレエにあらわれます。
よく考えながらこの60分を過ごしてください。
というような人だった。
そして、柔軟性やステップをなめらかに踏むことより、身体を正しく使うことを徹底する先生だった。
夏でもエアコンはできるだけ使わない。
筋肉を冷やしたまま動かしてしまうと、痛めてしまうことがあるから。
おかげで、先生のレッスンは汗だくになるのだけど、終わったあとの身体のダメージが比較的少なかった。
レッグウォーマーやパーカーをうまく活用するのも、先生が教えてくれた。パフォーマンスを上げるためには、いつも筋肉が温まっていないとダメ、と。
レッスン中には、必ず水分補給の時間を設けていた。
喉が渇く前に飲みなさい。
乾いてからじゃ遅いのよ。
という名言は、看護師になる前からよく聞かされていた。
それから、バレエは踊りであること、芸術であることをいつも口にしていた。
先生は劇団四季の出身で、それはそれは厳しい戦いを勝ち抜きダンサーになった人だ。
その動きは誰に対してやっているの?
それでお客様に伝わると思う?
お客様におしりを見せるなんて、無礼ですよ!
って。
本当に不思議なもので
先生が亡くなったことを知ってから
バレエのレッスンに出ると
頭の中でいつも先生の声がする。
あさみちゃん、半テンポ遅れてるわよ!
とか
床がドシンと鳴るジャンプは、バレエのジャンプじゃありません!
もっと静かに降りてちょうだい、床がかわいそう。
とか、まるで現実に居る先生のほかに、その先生のレッスンも受けているような気持ちになる。
バレエを再開したのは、レッスン中に聞こえる先生の声を聴くためだ。
先生のレッスンを受けられなくなる日がくるなんて、信じられなかった。
もっとレッスンを受けたかった。
もっと教えて欲しかった。
あんな素敵で美しい先生が、病気になってしまうなんて世の中おかしい。
先生の声が聴こえなくなるまで、しばらくバレエを続けるつもり。先生との別れを、時間をかけてバレエの中でやりたいから。きっと一種の葬いなの。
先生のレッスンを何度でも受けられると思い込んでいた自分をぐーで殴ってやりたい。明日が絶対やってくる保証なんて、誰にもどこにもないのだから。
看護の場面では慣れているはずなのに、ことプライベートになるとほんとダメ。
もっともっと
会いたい人に会いに行って
好きをめいっぱい伝えて
大事なものを大事にできるような自分になろうと
かたく誓った夏の日なのでありました。
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