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6人の工房で実現させたフリースケジュール -3-

クッキーを販売し始めたのは2010年。最初は私が作っていた。通品を始めたら忙しくなって、知人や親せきに声をかけパートとして手伝いにきてもらった。当時は全員が40代前半。けれどそこから10年以上経って今やみんな50代だ。

そうなると心配になってくるのが「この先どれくらい働けるか」と言う問題。もちろん、働けるまでは働いてもらうつもりだし、パートさん自身もそのつもりでいるんだが、いかんせん年代的に

・更年期
・自分の体力の問題
・親の介護があるかも

と言うフェーズに入ってくる。中でも親の介護というのは、いつやってくるか分からないし、いつまで続くのかもわからない。加えて、クッキーの通販が売れるようになって、作る量も増えてきた。このまま行くとなんかあったときに製造が止まってしまう可能性も出てきた。

ところで、私は年に何回も長期の旅に出る。「なぜ経営者なのにパートさんをほっといて2週間も1ヶ月も旅に出ることができるですか」と思われている。それはですね、昔からのパートさんが自分の持ち場でそれぞれ采配してくれるからなんですよ。それが曲がりなりにもできていたんですよ。

それくらい比較的のんびりした経営だった、とも言える。だがしかし、熟練パートさんが50代になり、それなりに経営が乗ってきて、遠方にいた息子が事業を手伝いに帰ってくる、なんて言う話が出はじめ、

やや!うちも世代交代を視野に入れる必要が!?

という意識になり始めた。それにわたしそのものがもう55歳なんである。

もしうちのクッキーが袋や缶に入っていたらなんて楽なんだろう。だがしかし、サトナカは紙で包んでいる。クッキーを3枚積みあげて紙に包む。簡単なようで技術がいる。何回やってもできない人もいる。円柱形のものを四角い紙で包むわけだ。しかもバターの油分が染み出さないよう紙にシリコンが引いてあって、包もうとするとクッキーがつるつる滑る。

絶妙な力加減で包む
これも紙を折って手で結んでいる
リーフレットを入れる袋も手で麻生を結んでいる

なんでそんな面倒なことをしているのか、聞いてほしい。サトナカを作り始めた時って、まだカフェをやってて、その片隅で売ってたお菓子なんですよ。当時はこんなにたくさん作ることなんてぜんぜん想定してなかったわけで…

せっかくだから手を尽くしたものを作ろう。

と、スタートしている。だからもう、隅々まで手がかかるような作り方になってる。手作業がめちゃ多い。製造業の人がみたらひっくりかえるようなことやってる。だからと言って、それをやめるつもりもない。だから次世代に来てもらい、この技術を継承してもらいたい。

世代交代と言うのは

「はい、あなたもうやめてください」
「はい、あなた今日から代わりに働いてください」

って訳にいかなくって、ベテランと若手がそれぞれゆるやかにフェードイン&アウトするために同居する時間が必要だ。とすると、今まさに次世代の人に来てもらうタイミングなのでは。

さあ、そこで私はいよいよ求人することにした。世代交代もだけど、そもそもフリースケジュールには人がいるって言うじゃないか。ちょうどいい。だがどうやって?ハローワーク?

実はハローワークには懐疑的で、カフェをやっていた時はあまりいい人と出会えず、採用してすぐ辞められたことが2回もある。だがここはしょうがない。お金もかけたくない。だったらハロワだろ!と、ハローワークで求人をすることにした。すると応募の問い合わせが2件。しかし世代交代を目的に求人をしていたのに残念ながらどちらも年齢が50代。その後は応募を待つも一向に連絡がない。

やっぱり使えんのか…ハローワーク。と心のなかで呟く。

するとハローワークから電話がかかってきた。私の心の声が聞こえたのだろうか。小さいお子さんを持つお母さんの就労支援を担当しているが、お宅のの備考欄に書かれているフリースケジュールと言うのがお母さんによいのではと思い連絡しました。というではないか。ただ、あの書き方だとフリースケジュールというのがあまり分からないので、もうちょっと説明が欲しい、とのことである。

私はフリースケジュールのことを熱弁した。多分必要以上にしゃべったと思う。担当の人はそれを上手に要約し、備考欄に記述したものをメールで送ってくれた。見栄えのする求人票になった。フリースケジュールと書いても混乱する人がいるかも知れないというので、別の言い回しになっていたけど、伝えたいことはちゃんと書かれていた。ええやん、ハロワええ仕事するやん!

その後私は東北への旅に出た。豪雪地帯で雪に埋もれていたとき、求人に対して二人の応募があったと連絡を受けた。私は二人にコンタクトを取り、伊勢に戻ったら面接をすることになった。さあこれでいよいよフリースケジュールの扉が開く…。ああ!いよいようちも…!

温泉に浸かりながらフリースケジュールの実現を夢見るゆき。だがフリースケジュールは一夜にしてならず。乗り越えなくてはならない山がまだいくつも待ち受けているのであった。



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